みけ

全身がん闘病中の祖母が20年前に趣味で始めたはがき随筆を孫娘が投稿しています。

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全身がん闘病中の祖母が20年前に趣味で始めたはがき随筆を孫娘が投稿しています。

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はじめてのnote|祖母について

祖母は30代の頃に子宮がんになり、そのときに子宮を全摘出した。 さらに20年後、今度は乳がんを患い片方の乳房を全摘出。 「この歳になって誰に見られるわけでもないし、乳房が片方なくなるくらい命に比べたらなんてことない。そう思ってたけど、鏡を見るとやっぱり悲しいもんだね。」 悲しそうにぽつりと呟いた祖母の姿を今でも鮮明に覚えている。 幸い他に転移はなく術後の経過も良好で、忙しくも楽しい毎日を過ごしていた。しかし、それもあまり長くは続かなかった。 乳がんが再発したのである

    • 【随筆】 宝くじ

      義父が年末ジャンボ宝くじを買って来てくれと言う。 千円札1枚出して言うには 「組番号は40、50、60の中から、バラでも続き番号でもよか」 「エッ?1枚300円のくじ3枚買うのに 組番号とかバラ、続き番号とか、そんなこと言いきらん」と言うと すました顔で「当たるとばくれんの、と言って買って来い」と言う。 嫁に「あんたは言える?」と聞くと「私も言いきらん」と笑う。 「当たったら小遣い銭をやるぞ」 と孫たちに話す義父の顔は”夢見る夢子さん”の笑顔そのものだ。 家

      • 【随筆】 姉はスゴイ!

        電話で話をする時の姉は、いつも体の不調を訴える。 ついこの前までは目まいがすると言っていたのに 先日行ってみると布団を縫い直したと言う。 布団をほどき、新しい布地を買って来て 「8枚手縫いで仕上げた」と自慢げに話す。 掛け布団、敷布団、小布団と1枚ずつがすべて手縫いである。 それも「病院へ行ったり家事をしながら」と言うから もうあきれてしまった。 「どんな様子かと心配して来たのに」と言うと 「具合の悪い時はおはんがそばに居たらと思うとよ」と言う。 姉の布団

        • 【随筆】 ドレス

          休日にスカートを着ようかなと思い、久しぶりにスリップを着たら そばにいた孫が「よっ、ばあちゃん。ドレスじゃん」と言う。 「ドレス?」と言うと 「よく似合うよ。でもちょっとスケスケだけど」と言う。 「似合ってる?」と笑いながら 「本物のドレス、それもウエディングドレスを着てみたいな」 とつぶやいていた。 私にとってウエディングドレスは夢であり、あこがれ。 一度でいいから来てみたいと願いながら、もう無理とあきらめている。 それでも時折テレビや広告でウエディングド

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        はじめてのnote|祖母について

          【随筆】 生きる

          ヤッター! 5年間服用した薬からやっと解放された。 素直にうれしい。 突然のがん宣告にうろたえ 小さな胸でも切除される悲しみに涙した。 苦い経験だったが、家族や共に支えられ、生きている。 今日も大粒の汗をふきながら、 孫たちの「おいしい」の声が聞きたくて、食事を作っている。 並んだベッドで、共に抗がん剤の注射をした同病の友の初盆が過ぎた。 周りの人に感謝しながら、これからの人生をゆっくり歩いて行こう。 この随筆はがん闘病中の祖母が趣味で始めたもの。 決め

          【随筆】 生きる

          【随筆】 ヒマワリの種

          小学1年の孫がヒマワリの種をまき 朝夕水をかけて育てました。 風に倒れそうになったりしましたが 大きな花を咲かせ、孫も笑顔で喜びました。 夏休みに家庭訪問があり 先生にヒマワリの話をして花を見せると 「スゴイ。大きいネ」と褒められてゴキゲンのところに 「その中の1番大きな花の種を数えてごらん」と言われて 「エッー」と驚いた孫とババ。 後日、孫と「数えてみようかね」と バラバラにした種を数えました。 「500かな?1000かな?」と話しながら数えた種は

          【随筆】 ヒマワリの種

          【随筆】 運動会

          運動会の朝、いつもは起こされても目覚めぬ孫たちが 早く起きドタバタと階段を下りてくる。 パンだ牛乳だと今日のエネルギーをつめ込む。 嫁は昔ながらの重箱に 好物のおかずとかわいくにぎったおにぎりを並べている。 仕事で運動会の応援には毎年行けないので、 「行ってきます。頑張るよ」と出かける孫たちを見送る。 夕暮れ時、嫁が撮ってきたビデオで孫たちの活躍を 感動の涙をふきふき見ているババである。 ゴール手前で息切れする兄。 追い越せそうなのに笑顔で2番を走る1年生

          【随筆】 運動会

          【随筆】 義父と暮らせば

          義父は92歳 肺に持病があり、「きつかー」を連発しながらも 花の手入れや草取りに精を出しています。 このごろめっきり耳が聞こえにくくなり つい大声で話をしたり返事をしたりすると「そげん怒らんで」と言います。 「怒ってないよ、聞こえないと思ってつい大声出してしもうたネ」と言うと 聞こえているのかいないのか、優しく笑っています。 こんな時の義父はなぜか優しく可愛く映ります。 いつもは昔かたぎの頑固な人なのです。 義父のおかげで今の私がいる。 「大声出し合ってい

          【随筆】 義父と暮らせば

          【随筆】 新1年生

          いつもジーパン姿の孫娘はセーラー服に身を包み、 ぎこちなくリボンを結ぶ。 恥ずかしげに照れながら 「行って来ます」と登校する姿が初々しく可愛い。 末孫も小学1年生だ。 登校初日、目が覚めず家族を慌てさせた。 目を閉じたまま歯みがきをして朝食もとらぬまま学校へ。 でも翌日からはちゃんと起きて服を着替え 笑顔で朝食をとり元気な声で「行って来ます」と飛び出していく。 5年生の孫が兄ちゃんぶって 何かと世話をやいて連れていくのがまた頼もしく、うれしい。 帰宅して

          【随筆】 新1年生

          【随筆】 孫の運動会

          孫の運動会応援に出かけた。 保育園年長組の孫は出番も多く、組体操では土まみれだ。 障害物競走では 「ボク1番になれないもん」と話していたのに堂々のトップだ。 孫の名前を連呼し、手がはれるほどたたく。 鼓笛隊では大太鼓を胸に行進してきた。 真っ赤なベレー帽とベスト、白のズボン姿も格好いい。 手に豆が出来るほど練習したんだよね。 孫の姿だけを目で追ってみていると、感動して涙があふれてくる。 クラス対抗リレーでも1番になり、 園長先生に金メダルをかけてもらいゴキ

          【随筆】 孫の運動会

          【随筆】 洗濯機

          洗濯機が故障したわが家は7人家族。 山と積まれた洗い物を見て「どうしよう」と言うと、 孫娘は「コインランドリー」と答える。 それも面倒と手で洗うことにした。 嫁いだ時は手で洗っていた。 洗濯機を購入した時は姑と 「楽になるし、他のことが出来てうれしいネ」と 喜んだことを思い出した。 手と足で、もんで踏んづけて1時間近くかかった洗濯を 亡き姑がどこかで見て笑っているような気がした。 嫁の「大変だったでしょう、すごかあ」の言葉で疲れは吹っ飛んだが、 毎日は無

          【随筆】 洗濯機

          【随筆】 賞状

          小学4年生の孫が、 満面に笑みをたたえ「賞状をもらったよ」と帰宅した。 いつも姉がもらって褒められるのをながめていたので、 今日はボクが褒められる、ボクが主役と喜んだのだ。 皆から「良かったネ。頑張ったネ」と褒められているところに 帰宅した姉が「賞状もらったよ、2枚」と言ってきた。 主役だった孫は 「エッー、お姉ちゃんももらってきたのー」とガックリ。 主役は一瞬にして消え去ってしまった。 「2人ともよく頑張ったネ。おめでとう」 と皆から拍手をもらい、ガック

          【随筆】 賞状

          【随筆】 秋の夜長に

          1日の仕事を終え自室に入ると、 たいして動いてもいないのにドッと疲れが出る。 こんな時夫がいたら、 私が「疲れたネ」と言うと 「うん、疲れたネ」と返してくれるだろうか。 夫とは、子どもが幼いころから別居。 その夫も黄泉の世界へ旅立って20年近くたつ。 若い時は、子育てに仕事に、と夢中だったが、 今ではその子どもの手伝いをしているようなものだ。 この年になると、1人の寂しさや切なさが身にしみる。 秋の夜長に独り言をつぶやけば、写真の夫は微笑んで見ているだけ。

          【随筆】 秋の夜長に

          【随筆】 ホタル

          故郷の友からホタルが届いた。 包みを開けるとシダの葉の上に身動きもせずにいる。 「生きているの」と声をかけ、 箱の中ではかわいそうだから外へ放そうと言うと、 息子が「どこへ。川が汚れているよ」と言う。 山里の清い水の所から、ここへ嫁いで来たホタル。 仕方ないよ、と庭へ放すと、 おぼろげに光り飛ぶ姿に孫と拍手をしながら窓越しに見つめていた。 どんな時も生きようとする小さな命に感動した。 がん患者の私に生きろと言ってるみたいだ。 ありがとうホタル。 私頑張る

          【随筆】 ホタル