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【インタビュー】一歩踏み出した患者同士の交流の先に|全身性エリテマトーデス(SLE)Maiさん

全身性エリテマトーデス(SLE)とは、全身に炎症が起こる膠原病(自己免疫疾患)の1つです。

SLEの症状は人により様々であり、診断がつくまでに時間がかかることは少なくありません。
ミライクの「SLEグループ」に参加しているSLE患者さんのMaiさんも、最初は関節リウマチと診断されました。

今回はMaiさんに、診断がつくまでの経緯や患者さん同士での関わり方についてお伺いしました。


全身性エリテマトーデスとは

この病気は、英語でsystemic lupus erythematosusといい、その頭文字をとってSLEと略して呼ばれます。systemicとは、全身のという意味で、この病気が全身のさまざまな場所、臓器に、多彩な症状を引き起こすということを指しています。lupus erythematosusとは、皮膚に出来る発疹が、狼に噛まれた痕のような赤い紅斑であることから、こう名付けられました。

難病情報センターホームページ(2024年4月現在)から引用

Maiさんプロフィール

患者SNSミライクのMaiさんアカウント
(※メンタルコーチング:メンタルの問題や課題に対して、対話を通じて相手の内なる考えや向き合い方に導くこと)
Maiさんが現在お住まいのイギリス。自然が綺麗!

ーー元からイギリスへの移住希望はあったのでしょうか?

小さい頃にボランティア団体の方の話を聞いて、海外でのボランティアに興味を持ちました。

国内で10年間看護師として働いて、フィリピンの孤児院で半年間ボランティアを経験しています。

「いつかは海外で暮らしてみたい」とは思っていたのですが、決断のきっかけになったのはSLEに診断されたことです。いつ何があるかわからないので、やりたいことは今やらなきゃダメだと思いました。

ーーご自宅で働けるWebライターを選んだ理由は何でしょうか?

移住のためのビザがおりるまでの間、看護師の派遣で働いたんです。でも体調不良で途中でやめることになってしまって、外で働くのは難しいと思いました。

それで自宅で働ける、Webライターの仕事に興味を持ちました。

関節が腫れたときは、指先が出る手袋を使っています。Amazonなどで買えるもので、圧力がかかります。その手袋をしていると浮腫みと痛みが軽減されて、作業しやすくなります。

ーー読んでいる方がMaiさんのことをもっと知れるように、趣味もお聞かせいただけますか。

夫が買ってきたウクレレに、ちょっとハマりました(笑)
絵を描くこともあります。

最近は日本語が恋しくなって、日本のアニメを見ることが増えました。
お気に入りは「宇宙兄弟」です。

先日ミライクのSLEグループの人と話して思ったのが、皆さんすごい多趣味ということ。
それに刺激されて、色々なことに挑戦してみようと思っています。

母と自身の闘病。SLEの診断とイギリスでの治療

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ーーSLE診断までの経緯を教えてください。

2017年の春に、母に膵臓がんが見つかりました。

母は宮城に住んでいたんですが、治療のことを考えて私が働いていた神奈川に呼び寄せました。

そんな中で、母と2人でヨガに行くことになったんですが、次の日関節痛が酷くて。筋肉痛かと思ったのですが全然治らず、関節の腫れや浮腫みなど自己免疫系かなと思う症状が増えて行きました。

それに伴い状態が悪くなった母を宮城に帰し、亡くなるまでの2ヵ月間くらい休日の度に宮城まで通っていました。
夜は2時間おきに体位変換したりと大変でしたが、自分のことよりも母のことを考えていて、症状は気になりませんでした。

母は私のことをすごく心配していたので、弱っているところを見せたくないと思っていたのもあります。

ーーお母様のサポートをしている間は、病院には行かれなかったのでしょうか?

病院には行っていましたが、大学病院で関節リウマチと診断されていました。SLEかなとは思いましたが、診断基準に当てはまらなかったようです。

リウマチの治療で自己注射をしていたのですが、10月ごろから症状が重症化してきました。40度近い熱が出たり、疲れているのに眠れなかったり。上半身が痛すぎて横になれなかったり。

そんな中でも仕事を休める状況ではなくて出勤していたんですが、1月の終わりごろに動けなくなって救急を受診して、そのまま緊急入院に。

2ヵ月くらい入院して色々な検査をして、SLEと診断されました。

ーーSLEと診断されたときの、お気持ちをお聞かせください。

やっと診断がついて、治療に入れるなと思いました。

予想はしていましたし、「もう自分で頑張らなくていいんだ」という気持ち。
仕事にも行かなくていいんだなと。

あとは病院が助けてくれると思ったので、入院した夜は安心しました。

ーーSLEと診断されてからの治療は順調でしたか?

ステロイドのパルス療法中に副作用で精神障害が出て、一時的に精神病棟に移りました。
点滴や尿管を自分で抜去してしまう状況で、エンドキサンの点滴を抜去すると危険なので拘束されていました。

自分が怖くなって、自宅でも尖ったものなど危険なものは周りに置かないようにしていました。

精神状態は1週間くらいで安定しましたが、3週間くらい精神病棟にいて膠原病科に戻りました。その後もステロイドの副作用で胃潰瘍になりましたが、なんとか安定して行きました。

ーーイギリスでも同じ治療を続けたのでしょうか?

ステロイドの副作用が大きかったので、ステロイドを止めたいと思っていたんです。

日本で担当の先生が、「イギリスの方が自己免疫疾患の人が多いから、治療に慣れていると思うよ」と言ってくれて。ステロイドの件も含めて、紹介状に書いてくれました。

実際にイギリスはステロイドの減量に関してあまり慎重ではなく、全部なくす方向で考えてもらえました。

ーーSLEと付き合う上での、悩みや工夫はありますか?

今は安定しているのでそれほど困ったことはないですが、長い旅行に行くときは身構えてしまいます。
行き先で悪化しないか心配で、たくさん薬を持って行ってしまったり。

SLEの患者さんは心配性なところがあるので、準備しすぎてしまうんです。

でも何か失敗しても次に繋がると考えて、ある程度準備したら「これで大丈夫」と思うようにしています。

「余談」イギリスの医療事情

ーーイギリスでの医療の受け方を教えてもらえますか?

イギリスの医療費は全て税金で賄われるので、お金がかからないんです。
病院は国が運営していて、地元のかかりつけ医に登録して受診します。

SLEは小さい病院だと対応できないので、かかりつけ医から大きな病院に紹介してもらう流れです。

担当医という制度がなくて、毎回医師が変わります。

ーーイギリスで治療を受ける上で、困ったことはありましたか?

再燃したときの対応です。

まず救急に行くんですが、コデイン(強い痛み止め)をいっぱい出されて帰されました。その後、受診できたのが1ヵ月後くらい。痛すぎて眠れなかったんですが、痛みだけ対処すれば良いという判断で。

緊急性がないと自宅療法が基本で、普段の診察も半年に1回くらいです。安定していれば楽ですが、日本人的には驚くことも多いですね。

薬が変わったときは自分で採血の予約をして、その結果のデータが医師に伝わるようになっています。

ーー薬は1年分処方されるのですか?

薬局で処方せんをもらって、自分が欲しい薬にチェックをつけて受け取ります。
薬をもらう度に新しい処方せんが出るので、自分が薬を欲しいタイミングでもらえます。

最悪、処方された薬を飲まないこともできるので、自己判断に任されている部分があります。

日本人としては怖いと感じる方もいるかもしれませんが、精神病棟での入院経験もあって入院が苦痛になってしまったので、なるべく入院させないイギリスのスタンスは自分に合っていると感じます。

ただ簡単に受診や入院ができないので、セルフケアには気を付けています。
無理をしないように仕事を調整したりなどですね。

患者同士の交流によるメリットとデメリット。ミライクとSNSの違い

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ーー元々は、患者さん同士の交流を避けていたと聞いています。理由をお聞かせいただけますか?

入院中に、2人の患者さんと仲良くなりました。同じ病気ではなかったんですが。

退院後も連絡を取り合っていたんですが、私が元看護師ということで色々聞かれたり相談されていたんで。私もその時働いていなかったし、力になれるのが嬉しいと感じていました。

ただお2人とも私より重症で、お話する中でエネルギーを持って行かれちゃったんです。

私も体力が十分ではない上に、ステロイドで感情のアップダウンが激しい中、気持ちが入りすぎちゃって。このまま関係を続けていたら、自分が良くない気持ちに引きずられると思って連絡を断ちました。

その経験があって、自分が元気になるまでは患者さん同士の交流はしないと決めていました。

ーー体調が回復して、病気を通じた交流を始めようと思ったのでしょうか?

やっぱり、お2人の力になれなかったことを後悔しているんです。

それで精神的に安定してきた頃に、できる範囲で病気の方と関わって、自分の経験などを共有できたらと思いました。経験談は私自身も参考になりましたし。

少しずつ自分のペースで、関わる人を増やしているところです。

自分の状態が悪いときに同じような病状の人と関わるのはお互いに良くなかったので、気持ちが引きずられちゃうときは距離を取るなど工夫しています。

ーーミライクの「SLEグループ」での交流はいかがですか?

メンバー同士で交流して感じているのは、ミライクのSLEの患者さんがみんなポジティブということです。

同じ病気の方とのSNSでの交流は、暗い話が中心になりがちだと思っていました。
話しやすいからそうなるのでしょうが、私が求めている発信や交流とは違うなと感じていて、なかなか前に踏み出せずにいました。

もっと「病気でもこういうことができます!」というポジティブな発信を見れたら、私も頑張ろうと思えるかなと。

ミライクのグループの皆さんはすごく明るくて。病気がありながら、生活を楽しんでいると思えました。関節が痛くてもライブ行くとか、推しがいるとか(笑)

明るい話題が中心で、とても楽しいです。

ーーミライク主催のオンラインイベント後、参加者との交流はされていますか?

ヘルスコーチとしてのInstagramアカウントのフォロワーさんが、SLEグループの中にいたんです。

ミライクのオンラインイベントの後に、2人でZOOMでお話しました。
仕事のことでの相談も受けて、すごく参考になりましたと言っていただけて良かったです。

Instagram上ではそこまで深く繋がれなかったので、ミライクでお話したことをきっかけに良い繋がりができたと思います。

Instagramでは、固くてマジメそうな人だと思ってたと言われました。話してみたら、ほんわかしてて優しくて話しやすいと。文字だけじゃわからないことって、やっぱりありますね。

ーーこれから挑戦したいことや、頑張りたいことなどはありますか?

療養中に、体のことをサポートしてくれる人はいても、メンタルのサポートをしてくれる人がいないと感じていました。

それで個人的に、待ち時間に他の患者さんのお話を聞いたりしていました。話を聞いて欲しいって方は、すごく多いんです。難病の治療は終わりが見えないので。

今後への不安が大きい患者さんの話を聞くことでサポートができればと思って、コーチングに興味を持ちました。ヘルスコーチの資格を活かして、少しずつ手助けをして行きたいです。

あとは海外にいるのもあり色々なことに挑戦する機会が多いので、自分の経験を発信して「病気があっても、できることはあるよ」と伝えていければと考えています。

ーー最後に、記事を読んでくださっている方やSLEの患者さんにお伝えしたいことはありますか?

病気があると、外出や新しいことへの挑戦が難しく感じて、引きこもりがちになると思います。
交流を持つことに抵抗を持ったり。

でも自分の気持ちが少し前向きになれるタイミングで誰かと交流を持つと、すごく良い影響やエネルギーをもらえると感じています。

私もミライクのグループに参加して、とても良い経験ができました。ぜひ、多くの方とお話できればと思っています。

おわりに(ミライクSLEグループの参加方法)

▼アプリでの参加方法

①ミライクアプリをダウンロードし、会員登録

iPhoneをお使いの方
Androidをお使いの方

②ミライクアプリ「グループ」を押す
③カテゴリ一覧「病気・症状」を押す

ミライクアプリの操作画面

④全身性エリテマトーデスグループの「詳細」ボタンを押し、「グループに参加する」ボタンをクリックすると、グループ参加完了です!

※Webブラウザ版をご利用の方はこちらから参加できます。

ミライクのSLEグループには、病気がありながらも前向きに生活されているユーザーさんが多いです。気になった方はぜひ参加してみてくださいね。

【記事作成・監修】三上小夜香(薬剤師)
大手調剤薬局で勤務後、ドラッグストアのパート、派遣薬剤師を経験。
患者SNS「ミライク」note作成や日本初の臨床試験マッチングサイト「SearchMyTrial」投稿を担当しています。
【企画・編集】藤澤春菜
看護師として病院に勤務後、自治体の地域包括支援センターで保健師として地域住民・家族の医療や介護の総合相談・支援業務を経験。患者SNS「ミライク」コンシューマー・マーケティングを担当。 


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