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憧れのフジコ・ヘミングのこと fromチェコ

よしもとばななさんの小説『もしもし下北沢』の冒頭に、ピアニストのフジコ・ヘミングさんの言葉がある。映画監督、市川準さんの作品「ざわざわ下北沢」という映画の一場面で、フジコさんが下北沢の街について語ったことらしい。

「なにも考えないで広がるにまかせた雑然とした街のつくりが、ときにとっても美しく見えるのは、鳥が花を食べたり、猫が見事な動きで飛び降りるのと同じ、人の乱雑な汚さのようで、実は人の無意識のきれいな部分のような気がする。」以下省略。

フジコさんは私が言うまでもなく本当に多くの人達の心を掴む魔法の音色を持つ素晴らしい演奏家だ。今も彼女のチャイコフスキーのピアノ協奏曲の演奏を聴きながらこの記事を書いているが、最初の1音の響きを聴くと同時に涙が出そうになってしまった。

彼女の演奏はもちろん、そのお茶目で飾らないお人柄もたくさんの人を魅了しているはずだ。「ぶっこわれそうなカンパネラだっていいじゃない。そんな繊細な演奏家が好き」彼女を一躍有名にしたテレビのドキュメンタリーで、そんなことを言っていた。別のドキュメンタリーで、彼女のヨーロッパ・ツアーを追ったものを観たことがあるが、心配そうな面持ちで、オーケストラとのリハーサルでピアノを弾く姿を見た。この時もチャイコフスキーの協奏曲を弾いていた。「世界一のチャイコフスキーを弾きたいと思っているんです」という彼女の言葉に嘘はなく、全身全霊で最高のものを作り上げようとするフジコさんの姿は、私の目にただただ美しく映った。

そんなわけで、フジコさんはこれからも憧れの人なのです。
フジコさんは、”クラシック音楽”という言葉に漂う”硬さ”を取り払った最初の人かもしれない。その演奏の質と聴衆に伝える力量を考えたとき、少なくとも、日本においては。

最後に、アップした写真の説明を。
これは、数年前にオロモウツという素敵な街に行ったときに撮りました。チェコの有名なアーティスト、フランティシェク・スカーラの船の作品が広々とした野原に展示されていました。

今日のプラハは晴天。写真を見ると、船にでも乗ってどこか旅に出たくなります。



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