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実証されていた!子育てが仕事力をアップする

以前より私はうすうす感じていることがありました。
「子育ての経験で仕事力がアップしているのではないか」ということ。

以前に書いたこの記事もそうですが、 

この他にも「マルチタスクができるようになった」「視野が広がった」・・などなど、周りの子連れMBAのメンバーからも同じような声を聞いていました。でもこれらは所詮、私たちの感覚でしかありませんでした。

そんな中、「子育ての経験が仕事力を向上することは、近年、経営学でも研究結果が発表され始めていますよ」と、私たちの団体の理事でもある、甲南大学経営学部の奥野教授から聞きました!

「これは詳しく聞いて、みんなに活用してもらわないと!」
そう想い、急遽、奥野教授を招いてトークイベントを実施しました。

夜中21時からというのに70人ほどが参加され大盛況だったこのトークイベント、子育て中・子育て経験者はもちろん、できればその職場の方にもぜひ知っていただきたい内容でしたので、ポイントだけギュッと凝縮してみなさんにシェアします。
(なお、今回の内容は日本での研究結果がもととなっています)

育児者の仕事=プレイングマネジャーの業務

育児と仕事の関係について、おそらく日本で初めての調査結果は、2006年に発表されたものです。
この調査では、ホワイトカラーの管理職、非管理職、育休者など各グループ3名ずつ集め、3日間、1日の行動記録を書いてもらい、その内容を分析されました。

その結果「重なり度(マルチタスク)」「予測できるか」の軸で分析したところ、育休者の業務は、マルチタスク、かつ予測できない業務に対応する=これは、まさに育児をしている人の一日は、プレイングマネージャーの仕事に近いことがわかりました。

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(資料:下記を元に甲南大学、奥野明子教授作成。石田克平(2006)「 育児と仕事の共通性について〜仕事か家庭かの二交対立を超えて〜」『キャリアデザイン研究』Vol.2pp.47-59キャリアデザイン学会)

育児休業による能力開発

先程の調査は比較的少ないサンプルによるものでしたが、2008年には大規模な調査が行われました。
これは、「育児休業の効果」として、育児休業の取得者本人と、その周囲の人、合計2,800名へのアンケート調査です。その結果は次の通り。


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(資料:下記を元に甲南大学、奥野明子教授作成。
脇坂明(2008)「育児休業は本人にとって能力開発の妨げになるか」『學習院大學經濟論集』44巻4号pp. 325 – 338)

育休者・育休者の周囲の方の双方に高く評価された効果としては
社外の価値観や考え方にふれる良い機会である 
仕事を新しい観点からみることができる
仕事を効率的に進める能力が高まる

といった効果があがりました。
特にこの「社外の価値観」「新しい観点」については、最近、「イノベーションイノベーション・・」と呪文のように唱える企業の中で必須の人材ではないかと思います。

というのも、これは感覚だけではなく、先日の「パラレルキャリアに救われた話」でも書いた通り、早稲田大学の入山章栄先生の提唱される「1人のなかで多様性を実現すること」がまさに「育児」によって実現されるので、イノベーションを起こしやすい人材になるのだと考えられます。(以下要約を再度掲載)

”多様性(多様性)は組織の「知の探索」が進み、組織のパフォーマンスを高め得る。多様性は1人でも実現できる。副業や転職などで幅広い経験をした人は「個人内多様性(イントラパーソナル・ダイバーシティ)」が高く、知の探索ができているので、イノベーションを起こしやすい。

(日経ウーマン2020年12月号電子版 107,108ページの入山章栄先生のコメントより要約)

この調査結果を見て、ひとつだけ思うのは、この結果の数値は少し物足りないかなということ。というのも、働く子育て世代のロールモデルの宝石箱子連れMBAのメンバーでの調査すると、この倍ぐらいの結果は出てくるからです。
育休中を始め、育児期間中こそ、どんな環境に身を置くか、ちょっとした工夫でグーンと能力アップができる可能性がありそうです!

リーダーシップ・マネジメント力の向上

最後は比較的新しい研究です。2017年の立教大学の中原教授と、研究者の浜屋祐子さんによって実施されたもので、『育児は仕事の役に立つ~「ワンオペ育児」から「チーム育児」へ』というタイトルでにもなっています。この要点はふたつ。

①育児は、一人ではなく、夫婦といったチームで行うことを勧める。=チーム育児
②チーム育児を実行するとリーダーシップやマネジメント経験を培うことができる

ふーん、と思われるかも知れませんが、育児経験によってこのリーダーシップやマネジメント経験を培える。
これが単なる感覚ではなく、研究結果から証明されているって、すごいことです!例えば、リーダーシップについては、400名近くの共働き家庭(育休中ではない)の男女を対象にアンケートをとるなど、感覚だけではなく、エビデンスに基づいて実証されているのです。

チーム育児を「おたがいさま」の社会のきっかけへ

ここからは私の考えですが、夫婦での育児が理想、と思っても、単身赴任やシングルマザー(ファーザー)など、夫婦でできない事情もあると思います。

そこで、子育ては夫婦だけではなく、親族を始め、ママ(パパ)友から、保育園などの先生、ベビーシッターさんからタスカジさん(家事代行さん)、そしてご近所さんまで。「子育て」がきっかけでいろんな人とチームを組む機会になると素敵だと思います。
そして、シングルマザー・ファーザーでも過度な負担なく、家族に限らず社会のいろんな人が互いに支え合って、一緒に子育てができる環境になると良いなと思います。

なぜならば、とっても可愛いけれど、とってもえやこしい(笑)乳幼児の時期、どんな大人でも一度は経験しているのですから。「おたがいさま」の気持ちで、互いが支えあえる世の中になると素敵だなと思います。

「子育てがあるから仕事も楽しい」

以上のように、日本での育児と仕事力についての調査は2000年過ぎから研究が始まったばかりですが、子育て経験から培うことのできる能力が、どんどん証明されています

奥野教授より、もうひとつ素敵な言葉を聞きました。これはまだ実証研究が始まる前の2000年頃から、経営学で言われだした言葉だそうです。

ワークライフバランスからワークライフエンリッチメント(統合)へ

例えば100の総数の中で、ワークを50にしようか、残りのライフをもう少し増やそうかなど、そんなバランスを考えるのがワークライフバランス

一方、ワークとライフが一緒になることで相乗効果(シナジー)がうまれ、総数が150、200と大きくなる。それがワークライフエンリッチメント(統合)

子育てがあるから仕事も楽しい」その逆も然り。「仕事があるから子育ても楽しい」そんなワークライフエンリッチメント(統合)ができる環境を、子連れMBAはどんどん社会に広めていきたいなと思っています。

もっと知りたい方へ

全文読みたい方、書き起こしメディア「ログミー」さんに掲載いただきました🔽


イベント当日の動画も公開いたしました🔽





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