リーフの記 3枚目

次の日、私は近所の図書館へ出かけた。

「原爆について調べたいんですが」  

70代くらいの男性の司書に声をかけると、1冊の本を渡された。

「教科書と同じことが書かれとる」

「今まで知らなかったことを、知りたいの。他に本は?」

ぐるりと辺りを見渡すと、頑丈な板で覆われた中くらいの本棚が目に留まった。

「この箱の中には、何の本が入ってるの?」  

「わ、わしゃあ知らん。ほいじゃ、忙しいけえ、さいなら」

気になった私は、男性の姿が消えたのを確認して、箱の中を開けた。

「あら、漫画だわ」

箱の中にある漫画を読んで、あることを思った。
天皇を特別扱いして、崇めたのが戦争の原因なのに、
それに主人公の言う通り、戦争を起こしたのは天皇よね。
どうして日本は、今でも天皇を崇拝しているの?
これでは、全く同じことが起きるじゃない。

「今まで知らなかったことを知りたい?
知ったところで、国の都合の悪いことを書くと、
その漫画のように箱に閉じ込められるのがオチじゃ」

フッと横に目をやると、おじさんがいつの間にか
そばにいた。
悲しい言葉につられまいと、明るい笑顔で答える。

「Yes We Can.私ならできるって、信じてる」

「・・・わしの名前は、畑中 日麦(はたなか ひむぎ)。
他にも知りたいことがあるなら、わしに聞きにきんさい」

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