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【最近は、こんな感じ】 自分も、まわりも楽しくなる服。

上海で生活する女の子たちの日常って?
ファッション、メイク、食べもの、よく行くお店。あと、普段考えていること。悩んでいること。そして目標。
そんなあれこれを、同じ目線で聞いてみた。
@mie_shanghai

14 いなり

<Profile>
いなり
生まれ年:1992年
出身:内モンゴル自治区シリンゴル盟
職業:フリーランス
小紅書 @punipuni

自己顕示欲が意外や”無”。
SNSもあまりやってない。
穏やかで静かな話し方。
そのギャップがすごく魅力的。
でもいなりさんは最近、
インフルエンサーになる決心を
したらしいよ。


――実家が内モンゴルで、ご両親が遊牧民と聞きました。
いなり はい。家畜が草を食べ終わったら5kmずつくらい移動する生活をしています。馬は50頭、牛は200頭、羊は600頭飼っています。少ない方ですよ。夏は涼しくて風景もすごくきれい。星もきれいです。でも、帰りたくはないですね。旅行?  行かないほうがいいと思う。街に上海のような包容力がないし。あと、実家の家畜や財産などは全部妹にあげたので、帰っても何もないです(笑)。両親も、帰省した私の服装などを見て「いっしょに買い物に行くのは恥ずかしい」とか言うし……。タトゥーとかも嫌がられます。

――妹さんがいるんですね。
いなり 妹は正常な人です。地元の小学校で教師をしています。

実家周辺の様子(写真はいなりさん提供)。

――今のファッションスタイルになったきっかけは何ですか?
いなり 子供の頃、地元のギフトショップでハローキティに出会ったのがきっかけです。その後、ハローキティの研究のために日本留学しました。そこできゃりーぱみゅぱみゅに出会い、こんなにかわいいファッションがあるんだ、と。フォルムがまるくてかわいいので、着るだけで自分もまわりも楽しくなれるような気がして。その前は普通の、ストリートカジュアル系の服を着ていました。

――普段、洋服はどこで買っているのでしょう。
いなり 高円寺のハンドメイドのお店です。お店探しはインスタで。かわいい服を見つけたら、DMでサイズなどを送ってオーダーして配送してもらっています。上海では買っていません。持っているのは常時20着くらいですね。帽子はヴィンテージ。これは『閑魚』(フリマアプリ)で買っています。

――メイクもこだわってますよね。
いなり 好きなブランドは『Gucci』。ヴィンテージのパッケージのものをずっと使っています。あとは、もうなくなってしまいましたが『ラデュレ』も好きでした。

“いるだけで、友達が増える”

――日本のネットニュースでは、定期的に「中国でロリータファッションがブーム」というワードを見かけます。
いなり 今は流行ってないですよ。もうブームは去ったと思います。

――いなりさんはロリータというか、いなりさん独自の手作りのファッションですよね。このスタイルの魅力は何だと思いますか?
いなり 自分も楽しいし、人を元気に、ハッピーにできることだと思います。

――さっきも、知らない人から「いっしょに写真撮って」と言われてましたね。
いなり よくあります……。隠し撮りは嫌だけど、声をかけられた場合は撮影OK。このファッションでいるだけで声をかけられるし、何もしなくても友達が増えます(笑)。彼女(この日の取材に同席したお友達)みたいに、道で声をかけてくれてそのまま仲良くなることもあって。

――ケーキを差し入れされたこともあるとか。
いなり はい。食事していたら、お店にいた日本人の知らないおじさんたちにケーキとお花をもらったことがありました。

――今は休職中とのことですが、もともとどんな仕事をしていたのでしょう。
いなり 最初は広告会社で働いていました。その後、エンタメ系の会社でコンサートの運営やタレントのサイト運営などの仕事をしていました。が、怪我をしてしまって退職。残業が多くて、働いていたときからストレスなどが原因で50kgも太ってしまって。なので、今はちょっと休んで、自分探し中。友達とカフェに行ったりしている毎日です。

“大人になってもかわいい服で”

――今後、やりたいことや準備していることはありますか?
いなり KOL、インフルエンサーです。動画を撮ってくれるという友達がいるので、チームをつくって何かやってみたい。大人になってもかわいい服を着ていいということを伝えたくて。あと、中国ではぽっちゃりした女子はゆったりしたスポーツカジュアル、しかも黒など地味な色の服に逃げがちなんですけど、でもその体型を隠さずにおしゃれする方法を紹介できたらと思っています。

――(同席したお友達によると)いなりさんはギャップがあるところがいい、と。
いなり 実は甘いものが苦手。スイーツ好きに見えますよね?  でも、飲み物もいつもブラックのコーヒーです。

――内モンゴルの話に戻りますが、食事も上海とはまったく違いますよね。
いなり 肉と、ミルクティーです。基本的に野菜は食べない。海鮮類も、冷蔵庫がないので。実家の食卓に出てくるのは肉だけです。野菜は食べなくていい。栄養バランス?  考えなくていいんです。

――なるほど。で、家族との会話はモンゴル語ですよね。
いなり はい。中国語は週3で習っていました。あと、馬を飼っていたので騎馬も得意でした。今乗ったら重くて馬がかわいそうですけど(笑)。

――最後に、留学についてご両親は反対しましたか?
いなり 祖父が80年前に日本へ留学しているんです。会えていないので、何を勉強しに行っていたのかはわかりません。父も留学したかったらしいのですが、情勢的にできなかったとのこと。なので、留学に関しては応援してくれました。祖父が生きていたら、日本語でおしゃべりできていたかもしれないですよね。
(取材日:2023年3月8日 撮影地:小芳廷)


<彼女のお勧め>

『小芳廷』(上海市普陀区長寿路652号上海国際時尚教育中心K棟)
☆今日の取材で使ったお店。雰囲気がいい。心地よく過ごせる。大好きなヴィンテージの調度品がいっぱい。

『秘密花園』(上海市長寧区法華鎮路525号創意樹林入口)
☆友達とよく行く店は、ほとんどこのお店か『小芳廷』。ここのほうが家が近い。

『萬蔵』(上海市長寧区長寧路890号玫瑰坊B1-28)
☆手打ちそばがメインの日本料理店。いつの間にかたくさん友達ができていた店。みんなが挨拶してくれる。


text
萩原晶子
フリーライター。上海にて2007年頃よりガイドブック、ファッション誌、機内誌、ウェブなどの記事を手がけている。
カルチャー誌『Ketchup.』(上海と東京で販売)など。
ins:@hagiwara_akiko_
微博:Akiko06

photo
阿部ちづる
2006年にフォトグラファーとして独立。ファッション誌、ビューティー誌、週刊誌、写真誌等のグラビア、ポートレート写真を撮影。アイドルグループやグラビアモデルからのアーティスト写真撮影で指名されることも多く、女の子の新鮮な表情を切り取る。
佐々木希『ささきき』(集英社)、武田玲奈『Rena』(集英社)ほか多数。
ins:@chizuru0821
https://lov-able.com/photographer/chizuru-abe

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