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2024年5月の記事一覧
幻想小説 幻視世界の天使たち 第15話
日本の大学生二人がユースフの研究室を訪問した頃、大学の辺りでは異変が起きていた。その日は朝から一点の曇りもない晴天であったが、数カ所で専門家がスーパーセルと呼ぶ異常な気象現象が起きた。それはこの地方では、昔からしばしば発生し住民たちを脅かした巨大竜巻だった。
竜巻は大学の周りの田園や街中で発生し、すさまじい雷鳴と上昇気流を伴いいくつもの建物を破壊した。大学においては、キャンパス内の数か所で突風が起
幻想小説 幻視世界の天使たち 第14話
命の恩人?そうかあのスーパーセルが起こった時、父が身を挺して助けたイギリス人の子供はボイドだったのだ。きっとボイドはスーパーセルのことを知っていたのだ。父がユースフに話しかけた。
「本当にあのスーパーセルは大変なものだった。ユースフ、お前は今それを研究しているのだってな」
父がスーパーセルという言葉など知っている訳がないが、まだ自分が若いころ亡くなった父が、ユースフの仕事について話しかけてくるのは
幻想小説 幻視世界の天使たち 第7話
厳しいスケジュールで準備を進めながらもユースフが毎日訪れる場所があった。それは彼の息子ジンが入院している大学付属病院で、研究室から歩いて十分程の距離にあった。ジンは体が麻痺しベッドに寝たきりとなってはいるが、幸いにも意識はしっかりしていて、会話はできる状態であった。ユースフは九歳の息子に、その年齢の子供に必要な知識をつけさせようとジンが入院して以来、どんなに忙しくても毎日病院に通い、ベッドサイドで
もっとみる幻想小説 幻視世界の天使たち 第6話
ユースフはボイドの提案を受けてから四週間というもの、大学で講義がある時以外、研究室に来なくなった。その間、彼はウリグシクの地方都市に僅かに残るモンゴル帝国時代の遺跡や資料館を訪れ、ある現象のことが書かれた古文書などが現存していないか捜し歩いた。
ユースフは一つの仮説を持っていた。元寇に於けるモンゴル帝国軍の敗走は何か異次元のものと言っても良いような圧倒的な力を伴った自然現象が起こったためではないか
幻想小説 幻視世界の天使たち 第5話
コンバイの設立は今から十年ほど遡る。ロンドン在住のインド系イギリス人ミック・マースによって、オンラインのコンピュータゲームの運用を行う会社としてスタートした。当初は参加者になぞなぞのような簡単なクイズを出していたが、やがて世界の歴史、文化、科学などに関する詳細な質問や暗号解読など、回答に深い知識と鋭い推理力が求められる出題に変化して行き、同時に国際的な大手企業がスポンサーとなる多額な賞金を伴ったチ
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