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ツートンカラーはモールス信号

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短歌を詠む 冬編

日が落ちてさめた地面をすすむ犬やさしい飼い主真夏は遠い 部室にて幽霊部員のロッカーに住み着いているほんとのゆうれい ひょいひょいとすたすたとことこずんずんと歩い…

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5か月前
4

誰も知らないアーティスト展 覚え書き

※すべて敬称略です ※作家の方・関係者の方で掲載不可の写真があれば対応します 01 ■レイモンド・ホラチェック 建物の2階部分に当たる廊下に抽象的な絵が描かれている …

るるルル
6か月前
5

短歌をよむ

できるだけしょぼい装備でキャンプする 性善説をしんじてるきみ 上階に住む4歳のゴジラ日々すくすく育ちひびく足音 夏の夜の東京音頭の天皇を称えるとこだけ踊りをサボ…

るるルル
8か月前
4

ヴィーガンと1パック500円の卵

つい先日、1パック500円の卵を買った。高い、高すぎる。卵が今ほど値上がりする前は、近所のスーパーで1パック168円くらいの卵を買っていた。値上がりしてからも、なんとか…

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8か月前
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詩/ 過ぎてゆく

夏の払い戻しをしそこねた中年が 東京で生まれ東京で死ぬ蝉はかわいそうだと言う 私だったら田舎で鳴きたいわあと大泉学園駅のホームでうちわを扇いで そらよっと あらよ…

るるルル
9か月前
4

詩/ 夏

チビッコ太陽が あの街のどぶ川までやってきて(およいどる) 首都高速池袋線の高架の裏側で なまあたたかい風にくすぐられて 笑い ジャンプして 飛び込んで 川底のぼこ…

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9か月前
3

東京都北区

夜明けの澄んだ光があちらから押し寄せて、あたりを漂っている。住宅街の音のない八月のまだあたらしい熱気のなかを、サラリーマンがひとり歩く。でこぼことした継ぎ足しの…

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3年前
16

ぜんぶシールにしたい

ぜんぶシールにしたい。持ってるものぜんぶ。あらゆる薄いもの。葉っぱとかそういうのも、今書いてる文字も。 小さい頃はぜんぶシールにしていた。 スーパーのチラシの果…

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3年前
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短歌を詠む 冬編

短歌を詠む 冬編

日が落ちてさめた地面をすすむ犬やさしい飼い主真夏は遠い

部室にて幽霊部員のロッカーに住み着いているほんとのゆうれい

ひょいひょいとすたすたとことこずんずんと歩いて歩いて歩いて進む

利き手ではないほうで書く字のような性行為でもぬぐえぬ孤独

ひらがなのふにおちてゆく気持ちよさ肉体のないおれの脳みそ

絵文字にてしりとりをするにんげんがハートの次にキウイを打ち込む

ぎんいろの人からもらった数字

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誰も知らないアーティスト展 覚え書き

誰も知らないアーティスト展 覚え書き

※すべて敬称略です
※作家の方・関係者の方で掲載不可の写真があれば対応します

01
■レイモンド・ホラチェック
建物の2階部分に当たる廊下に抽象的な絵が描かれている 何なのかはわからない

ところどころに小さな矢印が書いてあって、それになんか心臓がぎゅーってなった
向かい合った矢印がひとつの部分を指しているのがよかった でも意味とかはまったくわからない

02
■ジョール・ソンクヤ
すごくよかっ

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短歌をよむ

短歌をよむ

できるだけしょぼい装備でキャンプする 性善説をしんじてるきみ

上階に住む4歳のゴジラ日々すくすく育ちひびく足音

夏の夜の東京音頭の天皇を称えるとこだけ踊りをサボる

龍のいない器で食べる辛ラーメン 口から炎を出すおれがいる

にんげんがえさを置かなくなった世でどこにもあつまれないねこがゆく

もっとでかい生き物がいる世界線そこでおれがちいかわになる

新米のシールがひかる米袋 研修中の店員のレ

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ヴィーガンと1パック500円の卵

ヴィーガンと1パック500円の卵

つい先日、1パック500円の卵を買った。高い、高すぎる。卵が今ほど値上がりする前は、近所のスーパーで1パック168円くらいの卵を買っていた。値上がりしてからも、なんとか安い店を探して、248円とか、258円とか。

それが、500円。

プラスチックではない、なんだか高級そうな紙製のパックに入っていて、パッケージにはこう書かれている。

放し飼いたまご
平飼い(エイビアリー)

…エイビアリーって

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詩/ 過ぎてゆく

詩/ 過ぎてゆく

夏の払い戻しをしそこねた中年が
東京で生まれ東京で死ぬ蝉はかわいそうだと言う
私だったら田舎で鳴きたいわあと大泉学園駅のホームでうちわを扇いで
そらよっと あらよっと(みんみんみんみん)

詩/ 夏

詩/ 夏

チビッコ太陽が あの街のどぶ川までやってきて(およいどる)
首都高速池袋線の高架の裏側で
なまあたたかい風にくすぐられて 笑い
ジャンプして 飛び込んで
川底のぼこでこをけのびですすむ(あそんどる)

東京都北区

東京都北区

夜明けの澄んだ光があちらから押し寄せて、あたりを漂っている。住宅街の音のない八月のまだあたらしい熱気のなかを、サラリーマンがひとり歩く。でこぼことした継ぎ足しの塗装、コンクリートの細い道を頼りない足取りでタクシーが通り抜けて、力尽きたように止まり、朝帰りの若い女が降りて、細い道へ入っていった。古ぼけた造りのアパートのベランダに行儀よく並んだ室外機がぶうんと音を立ててて、それ以外は散らかった街並みの

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ぜんぶシールにしたい

ぜんぶシールにしたい

ぜんぶシールにしたい。持ってるものぜんぶ。あらゆる薄いもの。葉っぱとかそういうのも、今書いてる文字も。

小さい頃はぜんぶシールにしていた。
スーパーのチラシの果物やお菓子のパッケージなんかはぜんぶ「シール以前」だった。子どもの時分の私には、両面テープという魔法みたいなテープがあって、裏側を覆ってはさみで輪郭を器用に切り取ったら、ぜんぶシールだった。価格の文字がときどき邪魔であった。クリスマスの時

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