フォローしませんか?
シェア
名取 道治 Michihari NATORI
2022年9月11日 15:07
ふたつの紙コップがたおれた。片方は右の机で、もう片方は左の机である。ふたつの水は、ふたつの机のあいだで波を合わせる。机の側面はなだらかな山であり、ふたつの机を合わせると砂時計のかたちである。だから、ふたつの水は砂時計のような溝に交じり合って吸い込まれていく。吸い込まれた水は机のうらに水の膜を拡げていき、あふれかえった水から糸が垂れていき、先端の水滴を切り離していく。水滴がゴムタイルの床に次々と落
2022年5月28日 23:58
なやましい一瞬の肉感的な惨虐な感覚が 私のからだに沁み亙った 室生犀星かつて愛した女の元に来ておのれの犯した罪の在り処を知ることだずっとかすかにつらい世で愛しさだけが澄み切っているロマンスは平等なのだ天も地もない、共鳴の地平線であるくつくつと笑いが漏れるのは若さの浪費を已めることのない私自身の弱さゆえか 否か ?天は采配を振るう
2021年12月5日 18:26
私の今日の仕事は、官房長官会見を聴くことである。官房長官が何を言ったのか、記者からどんな質問があったのか、記録するのである。「各位 本日午後の官房長官会見の概要は以下のとおり……」とEメールで関係者に記録をまくのである。 私は真剣な顔つきである。暖房の効かない肌寒い職場で、ささくれた指さきを揉んでいる。私は両耳にイヤホンをしている。スマホで官房長官会見のライブ配信をみつめているのだ。うなだれ