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『闇の底にて与えられん〜発達障害の陰陽』第1話「発端」(note創作大賞ミステリー部門)
第1話【発端】「…差別的に感じますので止めて頂きたかったです」
は…?
ここまで読んだ瞬間、ドクンと脈打つ心臓が痛む。
強い近眼の眼鏡が邪魔だ。老眼が進んだ目をSNSメッセージの画面に寄せる。
読み間違いだったらいいのに、という儚い願いは一瞬にして散った。
おい…恩人に対するメッセージとして、非常識じゃないか?
空腹の肉食獣のように息が荒くなる。
妻に対する怒りで苦しい。
千佳の行動は
『闇の底にて与えられん〜発達障害の陰陽』第8話「コンサルティングの結果」(note創作大賞ミステリー部門)
コンサルティングの結果車で20分ほどのデパ地下で、菓子折りを選ぶ。
コスパを考え、リーズナブルで、その割に高く見えるもの。
小夏ちゃん家は3人家族だから、個包装の6個入りにしよう。
ちょうど秋の味覚、栗の期間限定商品も出ているが、割高なので避ける。
こういうことは、妻の千佳には任せたら、予算オーバーしてしまう。
主婦なんだから、これぐらい自分でやって欲しいんだけどな。
帰宅して、千佳に聞く
『闇の底にて与えられん〜発達障害の陰陽』第2話「メンタルの限界」(note創作大賞ミステリー部門)
メンタルの限界昼間に妻がメッセージ送信してから、夜のコンサル開始時刻まで。
その間、
妻から俺に対する説明、釈明、弁解、言い訳、、、そのたぐいは一切無し。
つまりは夫婦の会話はゼロのまま、コンサルが始まった。
「あの話には、明確な意図があったんです。」
赤賀さんからの説明は、こうだ。
昨晩の通話メンバーの中に、ご家族の中に発達障害の疑いのある方がいらして、接し方にご苦労なさっている方がい
『闇の底にて与えられん〜発達障害の陰陽』第3話「妻に病む」(note創作大賞ミステリー部門)
第3話【妻に病む】この日のコンサルの場に真未さんの姿は無い。
今回ばかりは、千佳の希望を通す形にしてやろうと、赤賀さんご夫妻と俺とで話し合ったからだ。
コンサルティングフィーを支払っている俺に何の相談も無く、真未さんの席外しを要求するとは、いい度胸じゃねぇか。
なぁ、真未さんに対する千佳の失礼な態度を詫びたりさぁ、俺の仕事ばかりが増えていないか?
俺は言いたいことをグッとこらえながら、黙って千
『闇の底にて与えられん〜発達障害の陰陽』第4話「発達障害のクライアント」(note創作大賞ミステリー部門)
発達障害のクライアント克己さんが席を外したことで、ビデオ通話は千佳さんとのマンツーマン形式となった。
赤賀は、伝えようと思っていたことを一気に説明した。
彼女に合わせて、ゆっくり話すよう心がける。
「先日のメッセージは、まぁまぁ認知のズレを感じましたよ。
あんな風に書くと、ビジネスライクでいいってことになりますよ。
コンサルも2時間契約で、延長は追加料金とか。
そういう感じじゃなくて、こ
『闇の底にて与えられん〜発達障害の陰陽』第5話「防衛」(note創作大賞ミステリー部門)
防衛千佳さんは、私の妻、真未との関わりについても困っていたと話し始めた。
「豊美母さんの形見の桐箪笥について、ビデオ通話で相談したことがありました。」
豊美さん…克己さんのお母様は、10年前に亡くなっている。
お葬式にも参列させて頂いた。
「義理のお母様の遺品の、和ダンスですね。」
「はい。私の部屋は、元はお義母さんのお部屋だったところを使うように、真未さんに指示されました。
その時に、和
『闇の底にて与えられん〜発達障害の陰陽』第6話「妻の問題行動」(note創作大賞ミステリー部門)
妻の問題行動千佳が真未さんに対し、謝罪を求めたそうだ。
ああそうか、あくまでビジネスライクに行く気か。
克己はSNSメッセージ画面を見つめた。
窓の外は気持ちの良い春の日差しだったが、目に入ることはない。
真未さんからのメッセージを読んで、妻への怒りが湧いてくる。
千佳の希望により、口頭ではなくSNSに投稿する形になったそうだ。
自分の価値観を押し付けてくるところが、彼女らしい。
いつもの
『闇の底にて与えられん〜発達障害の陰陽』第7話「次男の問題」(note創作大賞ミステリー部門)
【次男の問題】
「………それは、どういうこと?」
馬鹿なのか?…そう、馬鹿なのだ。
俺は千佳を傷つける覚悟で、コンサルを続けさせるために、
「コンサルを止めるなら、結婚生活の維持は難しい」と伝えたんだ。
具体的な考えなどない。
「ええと………、自分がしんどくなるから、私にコンサルを続けろって言うの……?」
「そうだ!
お前はな、自分の意見だけにこだわって、押し付けてきて、俺の意見を無視