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贈り物と記憶


あれは何年前だろうか。

ずいぶん大人のフリが上手くなったなあと我ながら感心するくらいには歳を重ねた。

ちょうど同じくらいの時期に贈り物をした。

忘れたくない思いが強い分、

忘れられたくないという思いも強い。

建前では、喜んで欲しいという想いも

その喜びさえ忘れないで欲しいというワガママだったりする。

そんな思いで贈った、革の小物を今でも使っているよと教えてくれた。

嬉しいと思った。

もうどこで何をしているかよくは知らないし、

どんな話をしてきて、どんな顔をしていたかもあまり覚えていない。

その時の空の色なんてこれっぽっちも。

それでも、その人といた時間は嘘じゃなかったらしい。

嬉しい。

忘れないで欲しいという思いは強ち無駄では無かったみたいだ。

そうやって、私が世界からいなくなったあとも、

私という人間がいた事実、私という人間といた時間、傲慢だけどつないで欲しい。

生きていたという証になって、受け継がれれば、

それはもうこの上ない幸せなのだろう。


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