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ものづくりのサンタ

その町のサンタはプレゼントを全て手作りしていた。
それがサンタのプライドだった。
子供が何を欲しがろうと、その年一番熱意を込めたテーマのプレゼントを全員に配った。
それは、その町の風習として根付いた。
サンタはそれを数百年続けた。
サンタが作れるものはかなりの数になった。
ただ、サンタは新しいものに挑戦することをやめなかった。
ある年、サンタは錬金術をテーマとした。
それはある意味、サンタの今までの集大成のようなテーマだった。
サンタの人生自体が、ものづくりであったからだ。
サンタはこのテーマに魂を込めた。
今までの自分ではできなかったことをやろう。
サンタは究極的なテーマに挑戦した。
サンタは子供たちに、自分をプレゼントした。
サンタは子供たちに好かれているものだから、彼らが独り占めできたらいいだろうと思ったのだ。
つまり、サンタは人体錬成に成功した。
ものづくりの究極系である人間作り。
しかし、子供たちのところに届けられたサンタは、さらに各々が自分をプレゼントし始めた。
この町のサンタは途方もない数になってしまった。
原点であるサンタは、自分が間違っていたことに気がついた。
サンタとは概念であり、その概念を継承していくものだと。
たくさんのサンタはそれぞれのサンタであり、サンタが自分でなければならないことはない。
だからこそ自らの行いは傲慢であり、サンタたる資格のない行為であると。
その町のサンタは、子供たちに最後のプレゼントをした。
サンタを七体集めると、願いが叶う。
集まったサンタは消えてなくなったしまう。
サンタはそうして概念となった。


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