読めない司書と名無しの少年(6)橙色の光
【前回】
薄く絞られた灯り。小刻みに震える短剣。少年は暗闇の中でまた一人きりだった。エリエスと別れてからまださほどに時間は立っていなはずであるのに、孤独感に焦燥感、不安はあふれるほどに肥大していた。暗闇が触手のように体中を這いまわり、心に絡みついてくる。閉ざされた視界の中で逆に聴覚は研ぎ澄まされ、時間の感覚を狂わせる。人は暗闇では生きていけない生き物なのだと静寂が言っているかのようだった。目を開けているか、それとも閉じているのか。腕の先、足の先はどこにあるのかもわからない