ロイド 霧想街の記録＃1 始まりの前

　ネズミが死んでたんだよ。ドブネズミってやつだな。待て！座れって、絶対関係あるから、お前に、な？
　あー、で……そう、ネズミが死んでた。カラカラに乾いてミイラになってな。そいつは壁に設置された金属製の箱の中で、色はベージュで中にはケーブルだとか小さな箱とか……ＭＤＦ？いや、知らないが。その……なんとかって箱の中で見つけてよ。
　
　そいつは装置の詰まった箱の中で身を捩るような態勢でさ。線を噛んで感電死したのかって思ったがどの線も齧られちゃいなかった。それになんかあったら電気がつかないとか、ネットが繋がらないとかあるはずだよな。そういうのは無かった。
　気にならないか。どうして死んでたのかって？　あ！待て！待て！座れって。忙しいのは俺も同じさ。こうして時間を作ったんだから、な！

　箱の構造はなんとなくわかるだろ。ネズミが入れるような造りじゃない事も。鍵？かかってなかったぜ。かかってたら俺が気づくもんかよ。とうぜん壁に穴も無けりゃ隙間も無し。満足に動くスペースも無い。

　写真？ああ、ある！そうだな！その方が早い。これがその……っと、待ってくれ。これじゃなくて、えーこれだ！気づかないか？そう！そうだよ。まるで何かに無理やり押し込まれたような、超自然的な力っていうやつに。ここなんか見てみろ。アバラの辺り。中の装置と一体になっちまってる。尻尾もだ。プラスチックがもとから体の一部だったみたいだろ。

　さらにだ、いいか？このネズミは生きてる。いや、酔ってなんかいねぇよ！八時間前に酒は止めたんだ。いいか、これは干からびた死体だが。待て動画がある。そうだ。ここ、動いてるだろ。目がピクピクって。まるで？そう！夢を見てるみたいだろ！どうだ興味でただろ！お前にぴった……おい！待て！苦しい、離しッ、言う、言うよ！……クソ！これだからせっかち野郎は。ここだよ。代金は、おい！おい！クソが、行っちまいやがって。

【続く】