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いくつかの門とその先の事象について
古びた風が舞う十二番街の裏路地、枯草の絡まった鉄柵の間の階段で下層二区へと降りる。踊り場には古びた鉄扉が。扉を叩くと覗き穴が開き、銀貨一枚で買った合言葉がここで必要となった。
鉄扉の先は古い石柱と丸いテーブルが並ぶ地下空間へとなっていた。噂の秘密酒場であるが客は数えるほどしかおらず、どのテーブルに酒も料理も置かれてい無い。ランタンが置かれ静かに燃えているだけの乾いた空気とそれを誤魔化すかのよ
今日も進路に異常なし
壁に埋め込まれた時計がやかましく騒ぎ立てている。朝の7時。日付を日曜に戻したい気分を払いのけ、角のとれた安っぽい四角い窓から外を見る。途方もない真っ黒な空間で巨大な恒星が赤い有毒光を放っている。味気ない景色だ。
気分を変えるためコーヒーを淹れよう。お気に入りのマグカップ、熱い湯気と良い香り、程よい苦みを感じれば落ち込んだ気分も少しはましになる。
「おはよう! 良いお目覚めかな」
天井のハ
ロイド 霧想街の記録#1 始まりの前
ネズミが死んでたんだよ。ドブネズミってやつだな。待て!座れって、絶対関係あるから、お前に、な?
あー、で……そう、ネズミが死んでた。カラカラに乾いてミイラになってな。そいつは壁に設置された金属製の箱の中で、色はベージュで中にはケーブルだとか小さな箱とか……MDF?いや、知らないが。その……なんとかって箱の中で見つけてよ。
そいつは装置の詰まった箱の中で身を捩るような態勢でさ。線を噛んで感
【短編・習作】僕が続ける理由とその言い訳
僕は、誰かを殺すことで生きている。昨日は壮年の女性を殺し。今日は目の前を歩く男を殺す予定だ。これまでに得られた情報通りに、かつ何もアクシデントが無ければあの男はあと数十メートル先の路地で死ぬことになっている。
いつも通りの生活が続くと信じきって疑わない、それが突然終わるなんて想像外のことで、でも正義感に溢れ、それが原因で今日でそれが終わってしまう。それが今回の依頼の対象だ。何故、この男がその