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あなたの権限委譲がうまく行かない理由(前編)

【部下が勝手に成果を出す仕組み作りのテクニック】

 私が実践を通じて「権限委譲したつもり病」から抜け出せたからこそ分かる、チームが成果を出すための具体的な権限委譲のコツについてまとめました。

この記事を通じて皆さんには、明日から実践できる権限委譲のテクニックを身に着けていただき、労力をかけずに成果が出せる体質になっていただけると考えています。


あなたの権限委譲は「ただの業務委託」

 まずは成果がなかなか出なかった時代に私が実際に行っていた権限委譲についてですが、会議の資料作成を例に挙げてみます。

私:「Aさん、お願いがあります。現在のプロジェクトの進捗を再来週に開催される経営会議で報告することになったので、これまでの実績をまとめておいてほしいです。」
Aさん:「分かりました。作成にあたって前回の資料を拝見したいので共有してもらってもいいですか?また、こういう風に作成してほしいというのがあれば指示してください。」
私:「前回の資料は今メールしました。枠組みは前回の資料を反映すればいいです。それに加えて今回は、実績が出始めたことを強調してください。それと来週に一度MTGをセットして資料の仕上がりを確認しましょう。そこでまた修正があれば相談しましょう。基本的に作成の仕方は全て任せますので、自分なりの考えでまとめてもらって構いません。」
A:「分かりました。ではさっそく。」

 このような形で「権限委譲した」と思っていました。
 しかし、実際進めてみると想像していた成果物とはかけ離れ、何度もコミュニケーションをしながら、気付けば、グラフや表の立て付け、文言の修正までガッツリとサポートする形となってしまいました。


そもそも上司は権限委譲を誤解している

 私がやっていたのは「権限の委譲」ではなく「業務の委託」に他なりません。だからこそ部下は「上司が求めるものを如何に上出来に仕上げるか?」が目的となってしまっています。
これこそが大きな過ちです。正しい権限委譲とは、部下がチームの目的達成に向かって主体的に考え判断し行動している状態でなければなりません。
今回の例で言えば、経営会議でプロジェクトの進捗報告をなぜするのか?すらも部下には伝えきれておらず、部下の行動を「資料作成」という限定された範囲に留めてしまっています。上司が持つ視点や視野を部下が持てる状態には程遠いマネジメントでしょう。


なぜ権限委譲を誤認識してしまうのか?

 昨今、権限委譲が注目されてきました。「権限委譲こそ組織を強くする。」「管理職の仕事は部下に権限委譲をすることだ。」と管理職自らが声を高々に叫んでいます。
では、なぜ自覚があるにも関わらず、いざ実践となると手出し口出しになってしまうのでしょうか。

結論から言います。ボトルネックは3つある考えています。

①知らないことは悪の文化
②失敗できない風土
③情報を持ちたがる体質

①知らないことは悪の文化

 デジタル以前のビジネス環境においては、役員や部長こそが事業を一番理解していた存在でした。市場環境の変化がそれほどなかったため、事業構造は変わらず、その中で結果を出し続けてきたからこそ出世したわけですから、事業のことを誰よりも熟知していたわけです。
そうなると、知らないことが無い状態でいることが優秀だったということです。組織で起こっていることはすべて上司の意思決定と指示が発信源となって動き出すというサイクルです。
となると、一度動かした業務はすべて上司である自分が目を光らせてきちんと前に進むように細かなチューニングをしていく必要がありました。
だからこそ部下の役割は、上司に対していかに正解な情報をインプットするか、上司からの指示をどれほど忠実に実行するか、でした。
役員からの質問にはすべて答えられるように準備しておく。部長からの質問にはすべて答えられるように準備しておく。課長からの、、。と、こういう連鎖が起きるわけです。


②失敗できない風土

 市場環境の変化が緩やかだと業務内容と量はそれほど変わらずに推移します。
上司や先輩から引き継いだ業務を今まで以上に上手く熟すことがイコール成果となるわけです。
つまり、手段は変わらないわけですから、そもそも失敗することが想定されていません。「なぜ前任者ができていたのに?」となるわけですから、失敗は許されないのは納得がいきます。
となれば、上司は部下が失敗しないようなマネジメント手法を導入するでしょう。(マイクロマネジメントが代表例だと思いますが)、自分の成功体験に重ね合わせて部下の行動を細かく修正します。
これによって失敗の可能性を事前に潰しておくわけです。


③情報を持ちたがる体質

 ここまで説明すれば、情報が価値になることはお分かりいただけるかと思います。
成功体験というのは、どうすると成功するのか?何をすると失敗するのか?を知っている状態のことですから、情報自体に価値があり、情報を保有することで人材価値の優位性を高まるという仕組みが機能するのは必然でしょう。
すると、組織の下に行くほど、情報を元に自ら考え行動することは難しく、言われたアクションを正確に熟すことしかできない環境が作られてしまうということです。

 現在の役員や部長職ポジションを担う方々は、こうした環境で育ってきたわけで、部下として権限委譲を受けた経験もなければ、上司として権限委譲をする経験も不足している状態です。
権限委譲もテクニックですから、実践すればするほどに上手くなります。大企業の役員や部長は権限委譲スキルにおいては言わば新入社員といったところだと思います。

 では、ここからは、実際に権限委譲をどのように実施すると成果が出るサイクルを生み出せるのか?を説明していきたいと思います。

あなたの権限委譲がうまく行かない理由(後編) https://note.com/mem_yu/n/n3002f345c3b9

vol.11

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