瞑想亀

20代のんびり長期投資家。港区陰キャ。現在人生の目的を思索中。

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最近の記事

『福井にて』

旅行で得られる感動は、訪れたときの印象におおむね予想がつく有名な観光地を巡るときよりも、偶然訪れたマイナーな箇所で得られるときが多いように感じる。それは期待値を上回るから、そして多くの人々が気づいていない価値を自らが発見できたことに満足感を得られるからだと思う。 延伸したばかりの北陸新幹線を降りて福井市街地を散策していた私は、ハイキングがてら市街地に近接したなだらかな山に足を向けたところ、その途中で発見した瓦屋根の屋敷が立ち並ぶ石畳の坂道に心を奪われた。地元の中学生と思われ

    • 『Buttery』

      2024年4月16日火曜日。広尾駅近くのスターバックスで仕事をしていた私は、12時過ぎに建物を出て近くの定食屋に向かった。Googleマップでたまたま見つけたその定食屋は、小洒落た多国籍なカフェや雑貨店が立ち並ぶ商店街からは少し離れた、薄暗い路地に面したところにあった。お店の外に立てかけられたホワイトボードの内容を確認した私は、このあたりでは貴重な1,000円以内のランチメニューがあることに安堵し、少し低い暖簾をくぐって建物の中に足を踏み入れた。 10席ほどのカウンター席が

      • 『Berry』

        2024年4月15日、月曜日。「春眠暁を覚えず」の言葉が頭に浮かぶ、爽やかな眠気を誘う春の陽気。 縦長の1Kに住む私の部屋には、私のこだわりが詰まっている。南向きの掃き出し窓を覆うのは、光をあえて通す質感が好きなリネンのレースカーテン。そんな窓に対して垂直に置かれたのは、無垢材のすのこにスチールの脚が特徴的なベッドフレームと白のリヨセルで覆われたマットレスにシーツと枕。ベッドのヘッド側の壁に架けられているのは、優しげで眠そうな目をしたゴールドの毛並みをした雄のライオンを捉え

        • 『HORAI』

          2024年4月14日、日曜日。週末を関西で過ごした私は、午後3時過ぎに現地に住む友人にお別れをし、心斎橋駅から御堂筋線に乗って新大阪駅へ移動した。日曜日の夕方における新大阪駅の雑踏にやや辟易しつつ新幹線の入口へ向かっていた私は、蓬莱の売店から伸びた長蛇の列を目で確認し、かつて東京駅で駅員をしていた際に多くの乗客が「551 HORAI」と書かれた赤色の紙袋を提げていたことを思い出し、当時のやや苦い思い出が脳裏をよぎった。 券売機で自由席特急券と乗車券を購入した私は、改札機を通

        『福井にて』

          『サワークリーム』

          2024年4月13日土曜日。大阪市内に住む友人のマンションで前泊をしていた私は、午前7時前に自然と目覚め、身支度を済ませて友人と共に地下鉄と京阪電車を乗り継ぎ、京都市内にあるレバノン料理屋の前に辿り着いた。その場で当日朝に都内からやってきた別の友人と合流し、3人で水色の民家風である建築物に揃って足を踏み入れた。 ひんやりとした石の質感と温もりのある木々の質感が共存した清潔感のある空間に思わずため息が出そうになった私は、黒のエプロンを着こなした30代前半と思われる男性の店員が

          『サワークリーム』

          『写し鏡』

          4月11日木曜日。快晴。やや涼しげな朝。広尾のジムで大臀筋とハムストリングスのトレーニングを実施した私は、悲鳴を上げる下半身に最後の追い込みをかけるように天現寺交差点に架かる歩道橋の上り階段を一段飛ばしで駆け上がり、前方に広がる明治通りの渋谷方面の景色を眺めた。やや旬が過ぎて葉桜が始まった桜並木の様子を確認した私は、時の経過の速さにやや焦りを感じつつ、桜がその時々に見せる表情の豊かさについてふと考えた。 新生活を始める人に対して見せる桜の表情は、今後の新たな出会いに対する期

          『写し鏡』

          『パラレルワールド』

          2024年4月8日月曜日午前8時過ぎ。仕事がさほど忙しくない中でふと有給を取得した私は、今日は何をしようかと考えながら身支度を済ませ、ロードバイクに跨り明治通りを古川橋方面へ進んだ。右側前方の視界に入る白金ザ・スカイにチラリと目を配らせ、昨年に竣工したばかりである白とガラスの巨塔は、この1年間でどれくらいの含み益を生み出したのだろうかとか想像しつつ、明治通りの起点である古川橋交差点を左折し、麻布通りを飯倉片町方面へ北進した。 月曜日の出勤時間帯における麻布通りを行き交う人々

          『パラレルワールド』

          『サイレントカスタマー』

          2024年4月7日日曜日午前6時過ぎ。3度目のスヌーズで寝床から重い腰を上げた私は、42℃付近のやや熱めのシャワーに頭皮を打たれながら 、ふと先日に会社のミーティングで共有されていた話題を思い出し、そこから連想されるイメージを頭の中で膨らませていた。 サイレントカスタマーとは、商品やサービスに対して不満を持ちながらそれらを提供する会社にその態度を表明しないまま契約をやめてしまう顧客のことで、その割合は顧客全体のうち7割以上を占めるという。逆説的に言えば、何かしらのチャネルで

          『サイレントカスタマー』

          『ナショナル麻布』

          2024年4月6日土曜日のやや涼しげな朝。芳醇なバターの香りに空腹を刺激された私は、広尾駅前の行列ができるベーカリーであるTRUFFLEへ足を運び、焼きたての塩トリュフパンといくつかの惣菜パンを手に提げて、近くのブルーボトルコーヒーへ身を委ねた。白を基調とした清潔感のある店内は、土地柄もあってかこの地を一時的な拠点とする西洋人たちがそれぞれ爽やかな土曜の朝を満喫しているようだった。オリジナルブレンドのホットラテを注文した私は、順番待ちをするためにふと近くにあった無垢材の椅子に

          『ナショナル麻布』

          『LAYBACK』

          4月5日金曜日昼過ぎ、とある重要プロジェクトの受注が暗礁に乗り上げつつあることを危惧したグローバルからの呼びかけで設定された日本時間夕方の会議に向け、日本支社で働く我々のチームは彼らに対してどのように報告すべきか対策を練っていた。そのプロジェクトがグローバル全体で今年の重要案件として組織のトップが説明する資料に登場した直近における予想外の出来事によって、日本発の案件である本件の趨勢を世界各地の関係者が見守るようになったが、正直なところ極東の支社で働く末端の我々としては万事を尽

          『LAYBACK』

          『Poker』

          前日に40000の大台を回復した日経先物。広尾のジムで朝のワークアウトを終え、明治通り沿いにあるシティーベーカリーの窓側にある席に腰掛けた私は、みずからの構築しているポジションに対してマーケットのポジティブな反応を予想しつつ、ポートフォリオ管理アプリにログインした。東証に上場している個別株とETFをある程度保有している私は、前日による終値からの変動額を見て、ふと労働の対価としてお金を得る意味について考える。 経済的自由を得るには、いかにして人生の早い時期に資本家サイドに自ら

          『Poker』

          『Colors』

          趣味はなんですかと尋ねられたときに、さしてそう継続して取り組んでいる具体的な活動がない私にとって、つまらない人間だと思われないために用意している回答が写真だ。SONYのミラーレス一眼を勢いで購入した3年前の私は、スマホのカメラ特有のわざとらしい画像処理にうんざりし、本物の世界を高い解像度で捉えてみて得られる満足感を知ってみたいと考えていた。これまで私がシャッターを押してきた数多くの瞬間たちは、18mmのGマスターレンズと55mmのツァイスのレンズを通じ、イメージセンサー到達し

          『Colors』

          『Inspiration of…』

          広尾駅から2kmの同心円状で生活すると飛行機の存在を身近に感じるようになる。羽田空港の都心上空ルートが真上に設定されていることで、日中は轟音とともに機場へと舞い戻る銀翼を容易に観察できるのは、実はあまり知られていない事実かもしれない。2024年4月2日午後4時すぎ、渋谷橋の歩道橋から羽田へ降下する全日空の中型機を仰ぎ見ていた私は、ほっと溜め息をつくと気づけば前方を通過するデルタ航空を見送っていた。いつからだろう。遮るもの、翼をへし折る障害物などないはずの大空を、いつも決まった

          『Inspiration of…』

          『エスカレーター』

          2024年3月31日。8時過ぎに目が覚めた私は、本日に控えた資格試験の勉強のためにラップトップと参考書をバックパックに詰めていた。湯沢でスノボに興じた昨日の余韻のまま雪の湿気が残るダウンを羽織り玄関を出て、さんさんと陽を照り返す明治通りのアスファルトを踏んだ私は、その場違いな装いに気づくまでそれほど時間を必要としなかった。 慌てて部屋に戻りダウンを脱ぎ捨ててロードバイクに跨った私は、明治通りと外苑西通りの右側の歩道を申し訳なさげに徐行し、広尾駅前の三菱UFJ銀行前に駐輪した

          『エスカレーター』