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『Buttery』

2024年4月16日火曜日。広尾駅近くのスターバックスで仕事をしていた私は、12時過ぎに建物を出て近くの定食屋に向かった。Googleマップでたまたま見つけたその定食屋は、小洒落た多国籍なカフェや雑貨店が立ち並ぶ商店街からは少し離れた、薄暗い路地に面したところにあった。お店の外に立てかけられたホワイトボードの内容を確認した私は、このあたりでは貴重な1,000円以内のランチメニューがあることに安堵し、少し低い暖簾をくぐって建物の中に足を踏み入れた。

10席ほどのカウンター席が用意された狭い店内には、厨房でお店を切り盛りする老夫婦がお店の料理と出前向けの弁当をせわしなく準備し、客席には6名ほどの男性会社員がつかの間のランチを楽しんでいた。カレイの焼き魚定食を注文した私は、ポッドキャストを聴きながら料理を待つこと約5分で料理を受け取った。カラメル色に光沢を見せたカレイとすまし汁にご飯、漬物にこんにゃく、切り干し大根。カレイに箸を入れたときに皿へ溢れ出た脂の量に驚いた私は、柔らかな白身が崩れないように箸で丁寧に取り出し、白米と共に白身を口に運んだ。醤油味で漬けたカレイの白身と白米の味は、まるでバター醤油ご飯のように香ばしくてコクのあるマリアージュだった。


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