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『Colors』

趣味はなんですかと尋ねられたときに、さしてそう継続して取り組んでいる具体的な活動がない私にとって、つまらない人間だと思われないために用意している回答が写真だ。SONYのミラーレス一眼を勢いで購入した3年前の私は、スマホのカメラ特有のわざとらしい画像処理にうんざりし、本物の世界を高い解像度で捉えてみて得られる満足感を知ってみたいと考えていた。これまで私がシャッターを押してきた数多くの瞬間たちは、18mmのGマスターレンズと55mmのツァイスのレンズを通じ、イメージセンサー到達したのちに0と1の集合体として翻訳され、最終的にはLightroomでJPEGとして出力されてきた。しかしながら私が写真を始めてみて気付いたことは、私が最も心を躍らせている瞬間はファインダー越しに空間を切り取るときではなく、Lightroomでレタッチをしているときであった。

レタッチとは基本的に引き算だ。伝えたくない色は積極的に彩度を落としていくことで、RAWデータでは気づかなかった瞬間の感動に気づくことができる。色はそれがどの文脈で配置されているかによって主題を引き立てる魔法にもノイズにも変化したりするし、同時に色がないことが積極的な意味をもつこともある。まるでモノトーンな冬を経験するからこそ、人々が春の彩りをありがたく感じるように。

2024年4月3日。パワーポイントの資料が見やすいとシニアメンバーから言われた私は、レタッチを通じて自然と引き算の思考を学んでいたのかもしれないと気づき、あとはその思考をどう人生に取り入れるか感慨に浸りながら、眠りにつく。

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