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『HORAI』

2024年4月14日、日曜日。週末を関西で過ごした私は、午後3時過ぎに現地に住む友人にお別れをし、心斎橋駅から御堂筋線に乗って新大阪駅へ移動した。日曜日の夕方における新大阪駅の雑踏にやや辟易しつつ新幹線の入口へ向かっていた私は、蓬莱の売店から伸びた長蛇の列を目で確認し、かつて東京駅で駅員をしていた際に多くの乗客が「551 HORAI」と書かれた赤色の紙袋を提げていたことを思い出し、当時のやや苦い思い出が脳裏をよぎった。

券売機で自由席特急券と乗車券を購入した私は、改札機を通過して27番ホームへ移動し、のぞみ号の3号車中央部における2名がけシートの通路側に腰掛けた。右側の肘掛けにコンセントが設置されていることを確認した私は乗車した車両がN700Sであることを確認し、新卒で入社した際に研修で受けたN700S車両に関する説明をぼんやりと思い出しつつ、もしあのとき私が入社後10ヶ月であの会社を退職せずにいたら今はどんな人生になっていただろうかと考えていた。

友人に薦められて購入した自己啓発本を手元に広げていた私は、列車が米原を過ぎたあたりで睡魔に負け、首を右に倒しつつ眠りに落ちた。列車が三島を過ぎたあたりで目が覚めた私は、再び本を開きやや気だるそうに残りの章を読み進めていたところ、小田原駅を定刻通りに通過したことを知らせるアナウンスが車内に響き渡るのを耳にした。関西にエスケープしていた私の週末がもうすぐ終わり、これから始まる関東で始まる日常にややどんよりとした気持ちの訪れを感じた私は、それを振り切るようにして自己啓発本に集中し、何かの学びを得ようと本から得られた情報をやや働きの鈍い頭に入れようと努力するのであった。

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