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医療的ケア児の娘とのくらし

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医療的ケアと共に生きる娘とのはなしをあれこれ書きます。
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#エッセイ

インクルーシブだのバリアフリーだの飛び越えたところで

インクルーシブだのバリアフリーだの飛び越えたところで

少し前にようやく、全部大人の歯になった娘。

5歳からお世話になっている歯科医院で懐かし話に花が咲いた。
「はじめて来た頃とは車椅子のサイズ感がまるで違うなぁ…来ましたよーって声かけられてふと振り返ったらびっくりする。」
としみじみ話す先生。
そうなんです先生。もう中3になるんですよ、この子。

この歯医者さん、歯科医院によくある感じの狭いスペースにそれぞれ固定式の治療椅子と治療椅子までしか動かす

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いってらっしゃい

いってらっしゃい

先日、14歳中学2年生の娘が初めて私の手を離れて学校へ行った。
なに言ってんだ。そりゃいくだろうよ、歩いて、一人で、友達とでも、学校ぐらい。
当たり前のことじゃないか、そう思う方もいらっしゃることだろうけれど、私にとっては、私たちにとっては特別で、とても大きな一歩になった。

娘は医療的ケアを必要とする重症心身障害児だ。所謂寝たきりと呼ばれる状態で、歩くことも話すこともできないし、自力で座ることも

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土砂降りと晴れ女

土砂降りと晴れ女

夕方、激しい雷とともに雨が降り始めた。デイサービスから帰宅した娘が送迎車から降りて家に入った途端に。ギリギリセーフ。

不思議と娘を連れていて大雨でどうにもならなかった経験はあまりない。

私が思うに、娘は晴れ女なんじゃないか。

いや、雨は降るんやけど。今日なんか、土砂降りやったけども。

☔️

車椅子に乗りお供に医療機器も一緒に荷台に乗せている娘の雨の日のおでかけはなかなかに大変だ。

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ゴミ袋が重すぎる

ゴミ袋が重すぎる

週に2回の燃えるゴミの日、片手に娘の車椅子、片手にゴミ袋を掴み家を出る。

養護学校に通っている娘は、心身に重い障害を抱え医療的ケアも必要な為スクールバスに乗ることが出来ず、車で送迎している。毎日ドライブ。

登校時、ゴミを先に捨てておけば身軽なのだけど一回で済ませようというのが隠しきれない、大荷物を抱え重い障害の子を乗せたでかい車椅子を片手に、更にもう片手にごみ袋をつかんでいる私の姿ははたから見

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この体と心で生きていく

この体と心で生きていく

「見た目は子供!頭脳は大人!」

娘は中学2年生、小学校卒業当時学校で受けた発達検査の結果は8ヶ月相当。国民的アニメの超有名な台詞のその真逆を地でいく娘は医療的ケアの必要な重症心身障害児だ。赤ちゃんの頃に持病の悪化急変で心肺停止に陥り後遺症で脳に大きなダメージを負い、障害と生きていくことになった。

理不尽にも限度というものがあるだろう?

難しい病気を抱えて生まれてすぐにNICUに入院し外の世界

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眠っているはずの我が子を覗く時眠っているはずの我が子もまたこちらを覗いているのだ

眠っているはずの我が子を覗く時眠っているはずの我が子もまたこちらを覗いているのだ

娘が常時つけているサチュレーションモニター、これは娘のSpo2つまり血中の酸素濃度と心拍数を示しているのだけど、その心拍数を見ると娘が眠っているかは私には大体部屋を覗かなくてもわかる。

娘が眠る時に必要な呼吸器、これは眠ると止めてしまう娘の呼吸を助けてくれる機械で、肺へ送り込む空気の漏れ出るシューシューという音がするのだけど、この音の具合で娘が眠っているか、私には大体部屋を覗かなくてもわかる。

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ややこしい父親の話

ややこしい父親の話

我が家からそう遠くない場所に住んでいて容易に会うことのできる私の両親とは、距離の近さの割に、最近はなかなか会わない。私は両親のことは好きだし、両親と私の仲は良いと思うのだけど。

近いからいつでも会えるという油断からか、はたまた双方ドライな性格ゆえか。

あと、思い当たる要因が一つある。

私の父が、ややこしい。

私の姉が一人暮らししていた時、姉を心配していたらしく

「おい、金はあるんか、元気

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13回目のクリスマス

13回目のクリスマス

13年前、娘との初めてのクリスマスは病院で迎えた。

死ぬかもしれないと言われていた大きな手術を無事に終えた後で、少し先の未来にようやく目を向け始めた頃だった。

外はもう寒くなり始めていて、娘が退院する頃には雪も降るかもしれない。外の寒さを知らない娘の、手術のために丸刈りにされてしまった頭が寒くないように、クリスマスプレゼントは温かそうな赤い毛糸の帽子を選んだ。

旦那とふたり店を回り、ああでも

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