マガジンのカバー画像

全部読む

23
同じ作家さんの本をひたすら読む。
運営しているクリエイター

#太宰治

これから太宰治を読みたい人へ 〜「太宰治全部読む」を終えて〜

これから太宰治を読みたい人へ 〜「太宰治全部読む」を終えて〜

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。

太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。

前回の『地図 初期作品集』をもって、これまで約1年半にわたり続けてきた「太宰治全部読む」が、めでたく最終回を迎えた。

今回は、企画の締めくくりとして、これまでの「太宰治全部読む」の取り組みを総括してみたい。

太宰作品をひたすら読み続けた結果、私は何を思ったのか。

もっとみる
#18 太宰治全部読む |遂に最終回!作家太宰の誕生前夜

#18 太宰治全部読む |遂に最終回!作家太宰の誕生前夜

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。

太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。

前回の『ろまん燈籠』では、日中戦争・太平洋戦争が勃発した時代の短編を読み、太宰の「文学のために死ぬ覚悟」を感じ取った。

18回目の今回は、『地図 初期作品集』を読む。

これまで1年以上にわたって続けてきた「太宰治全部読む」も、遂に最終回。果たして最後に、どのような作品

もっとみる
#17 太宰治全部読む |文学のために死ぬ覚悟を決めた

#17 太宰治全部読む |文学のために死ぬ覚悟を決めた

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。

太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。

前回の『新樹の言葉』では、太宰の前期〜中期の過渡期に書かれた短編を読み、彼が自由で芸術的な作風を見出すまでの、試行錯誤の過程を追った。

17回目の今回は、『ろまん燈籠』を読む。果たしてどのような作品なのだろうか。

太宰治|ろまん燈籠

本作『ろまん燈籠』は、前回の『新

もっとみる
#16 太宰治全部読む |『晩年』から『走れメロス』へ、試行錯誤の過渡期

#16 太宰治全部読む |『晩年』から『走れメロス』へ、試行錯誤の過渡期

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。

太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。

前回の『津軽通信』では、太宰の短編の中でも戦争期に執筆された、”シリーズもの”作品たちを読んだ。「未帰還の友に」など、優れた短編も多く発見した。

16回目の今回は、『新樹の言葉』を読む。

「太宰治全部読む」も、ようやく終わりが見えてきた。果たして今回は、どのような作品

もっとみる
#15 太宰治全部読む |戦地から還らぬすべての友に

#15 太宰治全部読む |戦地から還らぬすべての友に

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。

太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。

前回の『もの思う葦』では、処女作『晩年』から『人間失格』の頃まで、太宰の作家人生を横断する随想を読み、感慨に耽った。

15回目の今回は、『津軽通信』。津軽といえば、太宰出生の地だ。一体どのような作品なのだろうか。

太宰治|津軽通信

本作『津軽通信』には、太宰の後期作

もっとみる
#14 太宰治全部読む |作家人生を横断する随想集

#14 太宰治全部読む |作家人生を横断する随想集

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。

太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。

前回の『きりぎりす』では、中期の女性告白体小説を中心に、”隠れた名盤”とも言うべき、興味深い短編を数多く読んだ。

14回目の今回は、『もの思う葦』を読む。

目次を開いて驚いたのだが、この『もの思う葦』、なんと49編もの作品が収録されている。一体どのような作品なのだろう

もっとみる
#13 太宰治全部読む |これぞ”隠れた名盤”、女性の魂を宿して書く

#13 太宰治全部読む |これぞ”隠れた名盤”、女性の魂を宿して書く

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。

太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。

前回取り上げた『新ハムレット』では、西洋の古典やフォークロアを題材に、現代人の心情や、太宰の思想をブレンドした、新趣向の小説を読んだ。

第13回目の今回は、『きりぎりす』という短編集を読む。キリギリスといえば、バッタ目の昆虫の名前だが……果たして、どのような作品なのだろ

もっとみる
#12 太宰治全部読む |太宰流ハムレットを、戯曲調で読む

#12 太宰治全部読む |太宰流ハムレットを、戯曲調で読む

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。

太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。

前回取り上げた『パンドラの匣』では、太宰が実在の日記を下敷きにして書いた作品を読んだ。日常の何気ない”細部”を文学に昇華する、太宰の技術力の高さに舌を巻いた。

12回目の今回は『新ハムレット』。『ハムレット』といえば、イギリスの劇作家、ウィリアム・シェイクスピアの戯曲で

もっとみる
#11 太宰治全部読む |匣の中に、希望は残されている

#11 太宰治全部読む |匣の中に、希望は残されている

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。

太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。

前回取り上げた『惜別』では、第二次世界大戦によって日本文壇が衰退する中、太宰が何を願いながら小説を書いていたのか、想いを馳せる読書だった。

第11回目の今回は、『パンドラの匣』を読む。

本書に収められている「正義と微笑」と「パンドラの匣」はいずれも、太宰が知人の日記を

もっとみる
#10 太宰治全部読む |大戦が生み落とした名文

#10 太宰治全部読む |大戦が生み落とした名文

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。

太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。

前回は難敵『二十世紀旗手』に挑戦し、敢えなく敗退を喫した。太宰史上最も錯乱した作品たちは、何度読んでも、解読不能だった。

今回は、記念すべき第10回目となる。第二次世界大戦期に執筆された2編を収めた、『惜別』を取り上げる。

太宰治|惜別

新潮文庫『惜別』には、戦争中

もっとみる
#9 太宰治全部読む |折り返し地点にして、最大の難敵

#9 太宰治全部読む |折り返し地点にして、最大の難敵

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。

太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。

前回読んだ『グッド・バイ』では、未完の状態でも太宰が残してくれた小説が、後の世代で面白い小説を生み出す軌跡に想いを馳せた。

9回目の今回、早くもなのかようやくなのか、「太宰治全部読む」は折り返し地点を迎える。そんな節目に、太宰最大の問題作、『二十世紀旗手』を取り上げる。

もっとみる
#8 太宰治全部読む |未完のグッド・バイ

#8 太宰治全部読む |未完のグッド・バイ

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。

太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。

前回読んだ『お伽草紙』では、既存の昔話や伝承を下敷きに、太宰のユーモアと想像力が絶妙にブレンドされた短編小説を堪能した。

第8回目の今回は、『グッド・バイ』という短編集を取り上げる。表題作の「グッド・バイ」は、未完の絶筆作品である。

太宰治|グッド・バイ

1948年

もっとみる
#7 太宰治全部読む |これはパクリではない、創作だ!

#7 太宰治全部読む |これはパクリではない、創作だ!

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。

太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。

前回読んだ『走れメロス』は、太宰の文学的才能が開花し、明るく自由な短編が印象的だった。

第7回目の今回は、『お伽草紙』という短編集だ。

実はこの『お伽草紙』、私にとって思い出深い作品である。

Twitterやinstagramで読書アカウントを開設し、おそらく最初に

もっとみる
#5 太宰治全部読む |ただ、普通でありたかった

#5 太宰治全部読む |ただ、普通でありたかった

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。

太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。

前回読んだ『津軽』は、太宰が生まれ故郷の津軽に帰郷し、産物や自然を享受し、友と語らいながら、生家との長年の断絶に区切りをつける、味わい深い紀行小説であった。

そして、太宰治全部読む、第5回にして真打登場。いよいよ『人間失格』だ。

太宰の代表作を挙げよと言われ、多くの人

もっとみる