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【📰文系×医療🩺】脂肪の消化に大活躍!「胆のう」ってなんだっけ?

「胆のう」って聞いたことあるようで、どこにあるのかも、何をしているかもよくわからない臓器ですよね。

今回は肝臓の下に位置する胆嚢(たんのう)の働きと、胆嚢癌について学んでいきます!

今回の医師国家試験の問題はこちら👇

疾患と治療の組合せで正しいのはどれか。

a. 多発肝細胞癌 ー 経カテーテル的動脈化学塞栓術〈TACE〉
b. 胆石合併胆嚢癌 ー 腹腔鏡下胆嚢摘出術
c. 特発性門脈圧亢進症 ー 門脈内ステント留置
d. 膵管内乳頭粘液性腫瘍 ー 膵管ステント留置
e. 急性化膿性閉塞性胆管炎 ー 胆管切除術

胆嚢(たんのう)とは?

胆嚢(たんのう)とは、肝臓で作られた胆汁(たんじゅう)を溜める場所です。

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肝臓と十二指腸をつなぐ管の途中にあり、西洋梨のような形をしています。
(肝臓の働きについてはこちら👇)

胆汁とは
脂肪を消化するために必要な液体で、肝臓で1日に1リットルほど作られています。胆汁の成分は、ビリルビンという黄色っぽい色素、コレステロール胆汁酸塩などです。胆のうに溜められている間に水分が吸いとられ、5〜10倍に濃縮されます。食べ物が来ると、筋肉収縮によって十二指腸へ流れていきます。

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ビリルビンは古くなった赤血球にあるヘモグロビンが壊れてできる黄色い色素です。コレステロールは細胞膜・ホルモン・胆汁酸を作る材料となる脂質で、取り過ぎにより血中濃度が高くなると悪玉(LDL)の場合動脈硬化の危険性が高まります。胆汁塩酸は、脂質を乳化(本来混ざり合わないものが均一に混ざり合う状態)する役割があります。

(胆汁酸の流れ👇)

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胆石とは?

胆石とは、胆汁に含まれる成分が凝縮されて結晶化し、固まったものです。胆汁の成分が偏った場合に結晶化し、コレステロール濃度が高い時は「コレステロール石」、その他色素の濃度が高い時は「色素石」に大別され、色素石は「ビリルビンカルシウム石」と「黒色石」があります。

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また、結石ができる部位によって、「胆のう結石」、「胆管結石」(肝外胆管にできた結石)、「肝内結石」に分けられます。8割の人が胆のう結石です。
日本では食の欧米化により、10人に1人が胆石を持っているとされます。

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症状
2~3割の人はほとんど症状がみられません(無症状胆石)。しかし、半数以上の人には「胆道痛」といわれる特徴的な右の肋骨の下の部分やみぞおちの痛み、右肩に放散する痛みがみられます。

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また、ビリルビンが排出されないことによる黄疸(おうだん)や、ビリルビン尿という褐色〜黒色の尿が出ることもあります。
(黄疸については👇)


結石が胆汁をせき止めることにより胆のうの粘膜を傷つけたり、結石に細菌が感染することにより炎症を起こすと、胆嚢炎や胆管炎を引き起こすこともあります。

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胆嚢癌(たんのうがん)とは?

胆嚢癌とは胆嚢にできる癌であり、年齢は60歳台が最も多く、やや女性に多い癌です。全体のがんの中では1.6%とそこまで高くはありません。胆嚢癌に胆石の合併する頻度は50-60%と言われています。逆は2-3%です。

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症状
初期は無症状です。進行してはじめて腹痛、発熱、黄疸などが生じます。胆石の合併が多いため、胆石症の症状が出ている際に同時に見つかることもあります。

治療
外科的手術による切除が最も有効です。ステージによって切除範囲が異なり、ごく初期は単純胆嚢摘出術、また、リンパ管にも及ぶ場合はリンパ節郭清(かくせい)を行います。その他の臓器へ浸潤、転移している場合は、肝臓や胆管なども部分的に切除します。

手術適応のないステージIVの場合は、化学療法を行いますが、標準的治療法はありません。

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ここで問題の選択肢を見ていきます。

疾患と治療の組合せで正しいのはどれか。

b. 胆石合併胆嚢癌 ー 腹腔鏡下胆嚢摘出術

腹腔鏡(ふくくうきょう)手術は、臍部(おへそ)の周囲から直径2~10 mmの内視鏡を腹腔内に挿入し、テレビモニター上に映し出された映像を見ながら手術を行う術式です。

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傷が早期回復し、患者の負担が少ない反面、直接臓器に触れず、開腹手術に比べて技術が必要になります。

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胆嚢癌の場合、播種(はしゅ:癌細胞がこぼれ、種をまいたようにバラバラと広がること)のリスクが高まるため、開腹手術を行います。


したがって選択肢bは誤りとなります。


おわりに

前回の肝臓に引き続き、胆嚢にまつわる病気を見ていきました。臓器の働きがちょっとずつわかってくる感覚は楽しいですね!

また、腹腔鏡手術や開腹手術など、術式の違いを学べたのはとても良い機会となりました!

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