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読書日記㊴きみ去りしのち/重松清

こんにちは。
1年ぶりくらいの歯科検診に行ってきました。歯医者さんは痛い・怖いイメージが強かったけど、歯を掃除してもらうの気持ちいいですね。心なしかいつもよりつるつるしています。
歯の資産価値は1個90万円(金額は定かではない)、という話を聞いて歯に対する意識が変わりました。最近はフロスとマウスウォッシュも導入しています。うちの母親は早くから銀歯を入れていて、小さい頃から「歯は本当に大切」と言われていたのが、やっと分かりました。

私はちょっと前歯出気味なので(恥ずかしい・・)、歯科矯正もやりたいな。でも高いよなーーー。

きみ去りしのち/文春文庫/重松清

1歳の幼い息子を亡くした「私」と前妻の元に行ってしまった娘の「明日香」。私が巡礼の旅をし始めたとき、明日香は旅についてくると言った。私の前妻であり明日香の母である美恵子も、命のともしびがわずかになっていたから。北の果てオホーツクから南の与那国島まで、私と明日香、そして時には前妻の美恵子と妻の洋子も加わり、命をめぐる旅は続く。

よくnoteを拝見するもちもち桜餅さんが読まれていたので、私も読んでみました。以前「カレーライス」を紹介した時に書きましたが、中学~大学くらいは重松清さん読み漁っていました。というか、私の中で一番初めにちゃんと読んだ小説が「エイジ」で小説家=重松清さん、みたいな感じだったんですよね。最近はしばらくご無沙汰していたので懐かしいです。重松先生の本は、テーマがいじめとか命とか死とかが多くて、気合入れて読まないといけないんですよね。

この本は、全ての章「旅をしている。」という文章で始まります。まずこのはじまり方が好き。この一文で、ぐっと旅に引き込まれ主人公と一体となる気がします。どの章も好きだけど・・・一番心に残ったのは第六章かな。奈良の田舎、花に囲まれた家の中で里親をしているおばあちゃんと女の子の話。次の日、本当のお父さんが迎えに来るから、その日が最後に夜。おばあちゃんは何人もの里子を見送っているから淡々としているけど、最後泣き出した女の子をおばあちゃんがつつむ。女の子がおばあちゃんのぬくもりを目一杯感じていること、これからの日々が幸せであることを願ってやみません。

この物語のポイントとなるのは、私と明日香の関係だと思います。明日香は確かに私の娘ですが、明日香は幼い頃に離れてからほとんど記憶はないし、「お父さん」という意識も薄く、めちゃめちゃ態度が悪い。私の方も、離れている時間が長すぎて、明日香に対してどういう態度を取って良いか分からない感じも見受けます。ありがちな物語だと、旅を通して父と娘の距離が縮まってハッピーエンド、なるのでしょうが、重松先生の本はそうはいかない。明日香も次第に弱さだったり心の内を見せるようになりますが、あくまで私との関係性は人と人。それでいいのだと思います。角田光代先生の小説「さがしもの」の中で「人が死ぬからと言って、喧嘩していた人が仲直りしたり優しくなったりするのは変だ」という言葉があります。これは死を迎えるおばあちゃんの言葉だけど、周りの人間にも当てはまるのでは。誰かの死によって無理に関係性を変える必要はないと思うのです。

メインでは描かれていないけど、この本の中でずっと出てくるのが妻の洋子と私の姿です。一緒にいる時に幼い子どもを亡くしたがために、二人でいることを無意識のうちに避けているのかもしれません。私が旅に出ているのも、そのことが影響しています。子どもを亡くしたことで、危うくなっていく妻と私の関係。この物語の中でも、めでたしめでたしとはならないですが、その様子が「家族を亡くす」傷の深さを物語っている気がします。

色々偉そうに書きましたが、大切な人を突然失うという経験をしたことはなく、この本の意味をちゃんとくみ取れるには至っていないと思います。そういう日が来ないことが一番幸せだけど。でも、やっぱり、大切な人を大切にして、伝えたいことは伝えなくちゃ。改めてそう気づかせてくれる小説でした。


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