霧夢繕楽《きりゆめぜんら》

詩人。 ほぼ毎日、pm6くらいに更新

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最近の記事

詩『翼がつくる秒速』

唐突を 武器にして 鳥たちと 飛んでみたい。 穴の開いたボートから 水を掻き出すように 絶えず 生まれてくる恐怖心を 体から 掻き出しながら。 老いては 生まれてくる季節を 全身をアンテナにして 感じてみたい。 干上がって 喉が声を失わないように 次の水の辺まで 質問に溢れても 口には 居留守を使わせるから。 体温をもってしても 温かいと感じる気温に 急かされながら 青く塗られた海にも 触れてみたい。 鳥たちと 飛んでみたい

    • 詩『先頭を走る直感』

      知識も 経験も 今より 透明に近かった 自分。 鼓動に揺れる 体の中。 無意識から 生まれてきた 「なんとなく」。 目や耳が 捕食。 経験は 足跡。 「すべて 体の中に 降り積もり 恐る恐る 芽を出した答え」 なんて 推測の域。 海なら くるぶしまで濡れる くらいの 関係性。 信じてみても いいのかもの 言わば 本人。 なにか 言いたげな 直感。 大きく 吸い込んだ 不安と 期待。 振り絞った  社交性

      • 詩『炎の揺らめきを残像に変える罰則』

        他人の火を 吹き消すなんて 立ち入りを 禁じられた領域。 他人の火を 煙へと 追い込めば 稀に その傲慢ごと 煙へと 誘い込む 気紛れな 法律。 憎しみや 悲しみを 羽織った 穴の開いた 背中。 人に 死を手渡すことを 禁じながら 人から 生を奪うことを 同意なく許す バイブス。 流れた血を 集めて また 人の形に 整えようなんて 色合いに 釣られ 海と空を 入れ替えるくらいの 沸騰。 純白の魂も 漆黒に

        • 詩『机上《きじょう》の友情』

          ともだちはいますか 何人いますか それは誰ですか。 純粋な目で 取り囲む 繊細な 質問たち。 些細な 不安へと 導かれた 小さな気持ち。 自分だけが 相手の名を 紙へと落とす 躊躇い。 書ける名を 探して 人知れず 迷走。 2人組も グループも 余計な自主性を 漂わせ アンチ。 聞かれても消えない いじめとの 関係性は 遠縁。 紙に落とした ともだちとは ここまでのどこかで 解けたまま。 「ともだちたくさんできる

          詩『個性没収』

          ひとと まるっきり 同じがいい。 違うと なおされ 同じなら 称賛。 平らに ならされた心から 発芽した 青い疑問。 「違う」ことを 持ち込んでくる才能に 掴まれる 心臓。 滴るほど 光を浴びた 弾かれ者が 神。 型に はめたがる 工場が 抱えきれなかった 個性。 同じことを 求められ 同じことを 繰り返し 安心を コンプリート。 たくさんの個性を 手札に持っていた方が 最強に 近づくはず。

          詩『目覚めの良い朝』

          聖なる地に 向かって 矢印を向ける 体より大きな声。 多色な覚悟を 装填させる 前進しか知らない 歯車。 すべての感情から 遠退いた体が 空のまま 受け取る この上ない名誉。 向かわせた人間 向かった人間 向かってきた人間 止められなかった人間 人間全員。 答えを 考えられるのは まだ 全身を 血が 眠らずに 走っているから。 そのうち 赤い警報くらいでは 働かないままの 瞼。

          詩『目覚めの良い朝』

          詩『アルコール推し』

          夜な夜な 注ぐ ガラスの からだ。 乾杯の 相手が 人間でも 透明でも。 記憶が 虚ろに 変わるまで。 行く当てのない 希望の地に 向かって 飛び立つ。 腹の右下が 軋んでも 身体の中を 伝う 雫。 このままの先が 白い灰でも。 破滅への 接近は 安心材料。 口から 遠ざけて 丸3年。 脳から 溢れるほど 注ぎたい。

          詩『アルコール推し』

          詩『寝起きの憂《う》さを糖衣する2次元』

          反射を 部外者にして 自分の目で 自分の背中を 見ようとするくらい 信じ続けることは 困難。 流れる時間を 味方につけ 腐食を 頬張る 怠け者。 笑い過ぎた空が 涙を流している日に 手も使わず 服に ドットを 描くくらい あきらめることは 簡単。 朝 開いた 2次元の中で 出くわした、 まさに 戦闘中の 3次元。 持ちながら走っていた 赤い灯を トーチから 私の心へと 飛び火させる、 直接 体温も 感じたこと

          詩『寝起きの憂《う》さを糖衣する2次元』

          詩『使用上の注意をよく読んで正しくお使いください』

          薬を 飲んだ。 私を 生かした。 薬を 飲んだ。 私を 死なせた。 言葉を もらった。 私を 生かした。 言葉を もらった。 私を 死なせた。 薬と 言葉は 少し 似ている。 10年前 見上げた空と 今 浮かんでいる空くらい だろうか。 用法と 用量を 敵に 回せば 暗闇に紛れて 命を 狙われる。 でも 両方とも 暗闇から 引っ張り出す 救いの手も 持ち合わせている。

          詩『使用上の注意をよく読んで正しくお使いください』

          詩『火が消えると 会えなくなる問題』

          あの日 現実に屈した哀しみが 目指した空。 いつまでも 泥濘の中にいることを 望まれていないから。 脳のメモリーから 一度も 画像を 開かない日が来るほど 混線した毎日。 ゴミ箱に 入れたわけでも 心を ーに 浸したわけでもなく 心にひとつ 区切りが 付いただけ。 蝋燭の先端で 酸欠気味の炎が 揺らめいていた頃には 戻れない。 悔いの欠片が 残ったのなら 生き物には 限りがあることを 甘く見ていた 私への 罰。

          詩『火が消えると 会えなくなる問題』

          詩『黙読する 場の空気』

          Bの 身体的特徴を 風に乗せ 無邪気と まだ遊んでいる A。 地域最安値の 微笑みへの 軽率な 招待状。 上流が 下流に 憧れるように 場の空気は 滑らかに 流れるのか。 別れの挨拶も そこそこに BAN されるのか。 漂うのは 声でも ヒビが入りそうな 空気。 体温に 薪をくべることもなく 一瞥して 静かに せせらぐことを 望んだ B。 Bの 心の水面が 一瞬 揺れたことに 気付くこともなく 別の話へと

          詩『黙読する 場の空気』

          詩『前職 こども』

          子供は 覚えている。 親が なにを してくれたのか。 棘のある口調で 刃にした言葉を 親の胸に 突き刺しても。 滴る血を 眺めたあと 水面を 揺らすことなく 季節を感じない部屋の中で 口ずさむのか。 平然とした仮面を付け 動揺した心を 悟られる前に 犯行現場から 自分の影を 持ち去るのか。 人生も 責任も 子供のは 子供のもの。 エモい昔話を 読み返し、 手渡すのは 恩か 怨か。 子供は いないけど なんとなく

          詩『褒め合うフォント』

          褒められれば 口許から 溶け出してくる 緊張。 さながら 春に 抱き締められた 雪山のよう。 返却不可の ストレスに 愛想よく 満たされた 日常。 顔の表情を 笑顔に 明け渡せば 退却も 覚悟する 病原体。 仮面を付けた名前や 一糸纏わぬ本名で 平穏を 戦場に 変えるか。 癒しを 探しに 指先と 彷徨うか。 仮想空間ごと 捨てられないほどの 圧倒的 マジョリティ。 褒め合えば 広がる晴れ間に 堪え兼ね、 互

          詩『褒め合うフォント』

          詩『染色に沼る染色体』

          広げられた今日は まだ 真っ白。 同じパターンを 塗りたくり その上から また 同じパターンを 塗り重ねる 明日。 白い部分が 無くなっても 繰り返す 生き写しの 毎日。 いつか 慣れという 簡単に 手が届きそうで 届かない色に 変わっても 絵の具に 限界までの 絞りを 見せつけ 切っては 筆を 突っ込む。 誰からも 手渡されない 花の群生。 自分が なりたいのは 何色。 筋肉質な 日常を 掻き分け 待

          詩『染色に沼る染色体』

          詩『旅を終えたあとの旅行先』

          石の中で 熟睡する 親愛なる 回想。 香り立つ煙が 蘇らせる 鮮やかな 体温。 私まで 血を繋いでくれた 無口な人たちと、 正装した 石の前での 再会。 疑問は 突然 沸点を 迎える。 三代前の 名前にさえ 弔いに 捧げたことがない 合掌。 いつかは 風にしか 踏まれなくなる 石畳。 広がり続ける姿は さながら 宇宙の果てのよう。 私を終えたあとの 旅の行き先で 奔走する まだ息のある 私の魂。

          詩『旅を終えたあとの旅行先』

          詩『非凡な二択』

          些細な風に 負けないように 揺らめく炎を 大切そうに 抱えた 音楽家。 今に籍を置く私と 過去に住む彼を 蝶々結びする 液体の 結晶。 現実なら 叶わぬ 問いかけを 包装する 優しい口調。 進行性の 病との 共生を 始めたとき 手に取るのは 抵抗か 無抵抗か。 空想上の生き物のように ぼんやり 眺めていた終焉を 温もりのある 体の一部として 手渡されたとき どの今に 体を 預けるだろう。 自然と 風に吹かれたま