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ライブハウスで会おうぜ、ハンブレッダーズ


「え?これボーカル?寝不足なん?大丈夫?」

 クリープハイプのときもそうだが、どうやら私は否定から入るきらいがあるらしい。一番嫌われるやつやそれ。「いや、」から始まるディスコミュニケーション。やめような。


 いや、何回見てもロックバンドのビジュアルではないだろ。「いもい」って言葉が最も当てはまる。ギターの服洗濯で縮んだんか?ベースの顔はかっこいいが、陽キャグループにはなぜか居ないだろう雰囲気を纏っている。ドラムは髭を剃れ。


以前友人にこう言われた。

「ハンブレッダーズのボーカルに似てるよね」

マジかよ。毎日8時間は寝てるぞ。昨日はなんなら12時間寝た。こやまたくやくらいは寝てる。

 そんなやりとりがあって、なんとなくこのバンドは印象に残っていた。


 ダンスナンバー「常識の範疇」や「睡眠至上主義」という曲は好きだったが、
″話題に出たら一応知ってるとは言うしフェスでも見たことあるけど全然詳しくないし好きかと言われると微妙″なバンドの一つだった。

銀河高速

 そんな好感度だったハンブレッダーズの株が一気に高騰する曲が、2019年の春にYouTubeに投稿された。


時代の波ならばHIP HOP
イマドキ女子はみなtik tok
未だに僕らはロックンロールと
フォークソングをシンガロング
-「銀河高速」


 流行ってるよなあ、ラップ。昔は日本語ラップダサいダサいって言われてたよな(私は好き派だった)。
 一見流行りに乗った韻を踏んだリリックだが、それは流行りに乗り切れない気持ちを歌っている。
 そうだよな、ロックってそういうもんだよな。キラキラした奴らを見た時の嫌悪感と内に秘めた羨望、それについていけず取り残されている感覚。そういう劣等感の塊を、ロックのファンもみんな持ってるもんだよな。


 この曲以降、ギターの吉野エクスプロージョンが脱退し、サポートギターになった。

どこまでも行けると思う夜だった
血と涙と汗が混じり合っていた
続けてみることにしたよ
銀河高速

 メンバーの脱退に伴う悲しみは、バンドを追っかけていると感じたことあるだろう。未だない人はこれからいつか直面するだろう。この決意に満ちた歌詞にグッと感じずにはいられなかった。

[3:37]
ここで曲が終わるのかな、そう思った。平凡な曲ならきっとそうだろう。しかしこの曲はここからコーラスが始まる。このバンドは歩みを止めないんだ。
度肝を抜かれた。最高かて。

ユースレスマシン

2020年2月、TOY′S FACTRYからメジャデビューをした。ミスチルとかゆずの事務所やん。すっご。でも正直、まだ早いんじゃないの?と心配した。​


時代遅れのガラクタで 静寂をシャットアウト
たった一枚のディスクで 真夜中をフライト
小切手もノウハウもない魔法
世界を変える娯楽を
-「ユースレスマシン」


 杞憂だった。これはメジャーでもやっていけるわ。

表紙で買ったレコードが 素晴らしかったんだ
ベスト盤には入ってない あの曲が好きなんだ

 ハンブレッダーズの歌詞は、音楽を好きな気持ちを鮮明に映し出してくれる。
 新しく買ったCDが嬉しくて嬉しくて、家に帰ってウキウキしながらラッピングを解き、パソコンにインストールして聴きながら歌詞カードを確認する、あの時の気持ちを思い出させてくれる。


[0:57]
 螺旋階段を駆け上がるような、サビ前のギターが気分を高揚させる。
 音楽理論などは一切わからないが、ここはわざと不自然な転調を用いてるのではないだろうか?
 一時話題となった、SHISHAMOの「明日も」のサビと似たような感覚があった。アッと驚くような工夫が施してある。


 このユースレスマシンが入ったアルバムは、文句なしで名盤だと思う。複数のサポートギターを迎え入れており、各曲違う音色で面白い。どの曲も秀逸だ。
 漫画の単行本のようなジャケットや歌詞カードも面白く、ボーカル ムツムロアキラのエッセイ「ムツとムロ」も文才しか感じなかった。ツイッターおもしろいもんな。昔のツイート消しちゃったの悲しいよ。

 そんな感じで、私はすっかりハンブレッダーズのファンになっていた。


ライブハウスで会おうぜ

2020年3月ごろから、コロナウイルスの影響により、殆どのライブが中止となっていった。ハンブレッダーズのワンマンのチケットも取っていたが、例外ではなかった。

そんな中、この曲が4月1日に投稿された。


 仕事早すぎだろ。MVってそんなサッと作れるものなんか?
 ライブ自粛の流れを受けたバンドの曲の中でも、かなり早い時期に投稿されたのではないだろうか。

 映し出されている関西のライブハウスはどれも見覚えのある場所ばかりで、走馬灯のように様々な思い出が蘇った。そろそろ死ぬのか…?と思ったほどだった。

暗くて狭くて怖くなったけど
音がデカすぎて不安になったけど
ひとりぼっちの帰り道
耳鳴りが愛おしかった
-「ライブハウスで会おうぜ」

 初めて1人でライブに行った時のことを想起する。2018年1月の夜の本気ダンスのツアーだったかな。ライブはもちろん最高だったんだけど、待ってる間1人がすごく寂しく、めちゃくちゃツイートしてた記憶がある。
 帰り道、いつもならば1人になると真っ先にイヤホンで耳を塞いでしまうのだが、その日はなぜかそうしなかった。頭の中でライブの曲が鳴り続けている。その感覚が幸せだった。

ヘイ ロンリーベイビーズ
ライブハウスで会おうぜ
僕ら孤独になって 見えない手を繋ぐのさ

″ロンリー″なのに″ベイビーズ″と複数形になっているのが肝だと思う。

 ライブハウスのあの空間は唯一無二だ。全く人生で接点のないような人間が体がぶつかるほど身を寄せ合い、音を浴び、手を上げ、レスポンスをする。配信ライブじゃとても取って変われない。
 ライブに友達を誘って行っても、演奏中はは1人だ。そんな一人一人に、ハンブレッダーズは歌ってくれている。

ヘッドフォンの外にも 宇宙があったんだ
ひとり 登下校中 ヘッドフォンの中は宇宙
-「DAY DREAM BEAT」

以前はこう歌っていたんだった。天才か?初めは気がつかなかったが、コメントで気づき、良い方の鳥肌が立った。

 今後また、狭っ苦しい不要不急で三密のライブハウスで、彼らをみることは叶うんだろうか。

 次にこの曲をライブハウスで聴けたら、きっと泣いてしまうだろう。

涙を流したって ここじゃきっとバレないさ
僕たちの音楽よ このまま鳴り止まないで




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