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パリのマミコさんとわたし

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【短編小説】 パリに住む私マリと、マミコさんの物語
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記事一覧

パリのマミコさんとわたし【11】

パリのマミコさんとわたし【11】

※過去記事パリのマミコさんとわたし【1】〜【10】の続きです!

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しばらく3人でぼうっとモンマルトルを照らす西日を眺めていた

アニスが喋り始めた

「だけど

確かに人は孤独がデフォルトなのかもしれないけど

それが真実だったとしても

僕は誰かと繋がって愛し合って

それを忘れていたいんだ

理想論だってわかってるよ

だけど

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パリのマミコさんとわたし【10】

パリのマミコさんとわたし【10】

※過去記事パリのマミコさんとわたし【1】〜【9】の続きです!

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早速、アニスは今日振られたことを話し始めた

彼はチュニジア出身で土地柄からか他の友人や親戚たちと同様に

29歳になる今年、30歳になる前に

どうしても奥さんを見つけたいとのことだった

婚期をとうに逃しているのであろうアラサーの私は

結婚て、そんな欲したり、探

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パリのマミコさんとわたし【9】

パリのマミコさんとわたし【9】

※過去記事パリのマミコさんとわたし【1】〜【8】の続きです!

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「こんにちは、僕、アニスって言います」

数時間前に振られたとは思えないような笑顔でアニスが

おじ様に自己紹介している

おじ様はもしかするとアニスが好みのタイプなのか

すかさず

「私マミコって言うのよ!」といいつつ

アニスの肩をバシッと叩いた

と同時に

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パリのマミコさんとわたし【5】

パリのマミコさんとわたし【5】

※パリのマミコさんとわたし【1】〜【4】の続きです

「あのっ、Kマート開いてましたか?」

「今日土曜日じゃない!これ見たらわかんない?」

『彼女』はキレ気味でカツカツと地下鉄の地下に続く階段を降りていく

あぁ、怖かった

しばらくそれだけしか考えられなかった

ただ、彼女に喋りかけることができただけでも御の字だ

そう思ったら、なんでキレられなきゃいけないんだ

と軽く腹が立ってきた

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パリのマミコさんとわたし【8】

パリのマミコさんとわたし【8】

※過去記事パリのマミコさんとわたし【1】〜【7】の続きです!

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「あんた、ここで何してんのよ」

パリの北、サクレクールで野太い日本語が聞こえてびっくりした

振り返ると肌のつるんとした初老の日本人らしきおじ様がこちらに睨みを聞かせている

一瞬で頭をフル回転させたが

日本人の初老のおじ様の知り合いはパリにいない

はて、誰だろ

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パリのマミコさんとわたし【7】

パリのマミコさんとわたし【7】

※過去記事パリのマミコさんとわたし【1】〜【6】の続きです!

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家に着くとアニスがソファで塞ぎ込んでいた

アニスはチュニジア出身で高校卒業とともにパリにやってきて、金融系の大学・大学院と進み、今ではコンサルで働いているいわゆるエリートだ

お金はあるだろうに、彼がシェアルームに住んでいる理由はズバリ極度の寂しがり屋だからである

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パリのマミコさんとわたし【6】

パリのマミコさんとわたし【6】

※過去記事パリのマミコさんとわたし【1】〜【5】の続きです!

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2月の寒空に豪奢に輝くオペラ座を見たら全部どうでもよくなった

いつも通りブックオフで1€のお気に入りを見つけ

Kマートで食材を買って最寄りのピラミッド駅から7番線に乗って

自宅のあるMairie d'Ivry駅に向かう

自宅のあるMairie d'Ivry駅は

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パリのマミコさんとわたし【4】

パリのマミコさんとわたし【4】

※パリのマミコさんとわたし【1】〜【3】の続きです。

土曜の朝、少し二日酔い気味で起きたが、まだルームメイトのみんなが起きないうちに、バスルームを独り占めして、一本映画を見ながら湯船に浸かったら、すっかり治ってしまった。映画が4姉妹の物語で、日本に住んでいる姉や妹を思い出して、日本が恋しくなった。お金もないし最近、日本に帰っていない。

とりあえず、日本が恋しい。日本食が食べたい。だが、日本食レ

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パリのマミコさんとわたし【1】

パリのマミコさんとわたし【1】

「1週間終わったぁ。疲れたぁ。」

金曜の夜、地下鉄のMairie d'Ivry駅の地上に繋がる階段を重い足取りで登っていると、前から強い香水の匂いがした。

「あ、この匂い。」

前を見ると男性のように体格の良いヒョウ柄のファーコートを着たアジア人とおぼしきマダムが階下に向けて急いで階段を降りようとしているところだった。周りの人が暗い足元に注意しながら前かがみで階段を降りる中、そのマダムだけは、

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パリのマミコさんと私【3】

パリのマミコさんと私【3】

「マリー」酔っ払ったアニスが窓辺に寄りかかって私を呼んでいる。

まだ帰ってから30分しか経っていないのに既にほろ酔いのようだ。彼はチュニジア出身で、お酒はダメなだったはずだ。なんてことを少し考える。

まぁそんなことは個人の自由であって、わたしジャッジすることでもなく、どうでも良いのだが、アニスの隣にすらりと長身の聡明そうな素敵な男性がこちらを見て微笑んでいた。

ワインを注いで窓辺にいる2人に

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パリのマミコさんとわたし【2】

パリのマミコさんとわたし【2】

扉を開けるとパーティーが始まっていた。

EDMがずんちゃか部屋に響きわたっている。そうだ今日は金曜の夜だった。

現在私は私含め3名のルームメイトとMairie d'Ivry駅近くでルームシェアをしている。大きな部屋も3名で住めば安くて広くて快適だ。

だが、しかし、金曜の夜ともなるととても騒がしいパーティールームに早変わり。

ルームメイトの1人、南フランス出身のラファエルがとてもパーティー好

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