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パリのマミコさんと私【3】

「マリー」酔っ払ったアニスが窓辺に寄りかかって私を呼んでいる。

まだ帰ってから30分しか経っていないのに既にほろ酔いのようだ。彼はチュニジア出身で、お酒はダメなだったはずだ。なんてことを少し考える。

まぁそんなことは個人の自由であって、わたしジャッジすることでもなく、どうでも良いのだが、アニスの隣にすらりと長身の聡明そうな素敵な男性がこちらを見て微笑んでいた。

ワインを注いで窓辺にいる2人に近づきながら、帰宅する前に化粧を直す時間がなかったことが悔やまれた。

「紹介するね。こちらニコ。」

「初めまして。こんばんは。マリ。元気?」

「初めまして、ニコ。元気よ。あなたは?」

とお決まりの挨拶を言い終わらないうちにアニスが

「アレックスがさっきマリが言ってたアジア人マダム?のこと知ってるかもしれないってさ。」

「ほんと?」

「あぁ、僕も近くに住んでいて、たまに見るんだ。アジア人のマダム、というか、こないだ電話で日本語みたいな言葉を話していたから、多分日本人じゃないかな。それともともと男の人だったような感じもあるよね。」

「そう、そうなの。毅然としていて綺麗だけれど、骨格が少し大柄だから。あーあなたもわかるの!彼女のこと!嬉しい!」

「Mairie d'Ivryの駅周辺で、強い香水の匂いがすると彼女なんだ。今日もヒョウ柄のファーコートで闊歩する姿を見たよ。」

「そう!私も今日見たの!それじゃきっと同じ人ね。彼女いつも毅然としててカッコ良いと思わない?」

「確かに毅然としているよね。毅然を通り越して、僕からしたら、怒ってるのかなとさえ思うよ。」

「確かに。日本語みたいな言葉を話していたって言っていたけど、どこで見たの?」

「それこそMairie d'Ivryの駅前で、携帯電話で大声で話しているのをみたのさ。その時は本当に怒っていたと思うよ。」

「そうなのね。彼女のこと他にも何か知ってる?」

「んー帰宅する時に駅に向かうお洒落した彼女とすれ違うことが多いかな。」

「私も。何か夜の仕事をしているのかな。あなたも知っていると思ったら、余計に彼女に興味が出てきたわ。カッコ良いし、仲良くなりたいし、今度彼女に話しかけてみようと思う。」

目の前にいるニコがカッコ良いのと、少し酔った勢いでそんなことを口走ってしまった。

「面白いね。彼女に話しかけることができたら、また話を聞かせて。」

「もちろん!」

その日はいつものパーティーのようにみんなで持ち寄った料理を食べて音楽に合わせて踊って、疲れた人から自由に帰ったり、泊まったり、バーに行ったりして、金曜の夜が更けていった。

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パリに住んだ作者がパリの日常と生活を書いていく短編小説です。場所などは実在の場所です。
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