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「フェアウェル」アメリカに住む中国からの移民家族の映画を、中国語話者と観た時のこと。

日本で、10月2日に公開されるようで、是非みなさまに観て頂きたいのでここに宣伝する事にする。原題はThe Farewell(2019)

とても興味深いストーリーである。

実は、私、この映画を二回、映画館で観た。

思えば3月以前は、日常的に映画館に足を運んでいた。ある日、この映画のポスターを観て「ふーん、アジアのどこかの作品かな」と通り過ぎたのだが、その後、映画館で貰えるフリー雑誌を読んでいて、この映画が特集されていたのでじっくり読み込んだ。すると、

アジアからの輸入作品ではない、ポスター写真にはよく見たらAwkwafina(オークワフィナ)、大好きな映画製作・配給会社のA24の作品、実話、アメリカで暮らす移民家族を中心にした作品だという事が記載されており、「あぁ、これは観なきゃいけないやつ!!!」と心躍る中、パートナーに話すと、彼も「うん、面白そうだね、次観よう」とすぐに決まった。

ところがその後、彼の学校の試験期間が重なり、私はモヤモヤしていた。というのもトロントの映画館で、当時たった一館しか上映していなかったし、当地の映画館の上映スケジュールはあってないようなもの。ある日、突然「この映画は今日の16時の上映で最後です」と告げられるイメージなので、気が抜けないのだ。上演期間、終わっちゃうかも!という訳で、

「ごめん、すごい観たいから、一人で観ちゃっていいかな」と断りを入れ、映画館に向かった。

映画は、最高だった。

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移民、と言ってみたものの、主人公は私とちょっと境遇は異なる。だが、彼女が祖母の住む中国で、ホテル従業員に「アメリカと中国、どっちがいい?」と聞かれる所なんかが、そしてそれに対する彼女のアンサーがもう、あるあるの大アルだ。

実は物語には、日本に移民したおじ家族と、日本人の嫁も出演していて「これも分かる」という近さもある。

移民として、言語で葛藤する姿もよく捉えられている。
例えば、英語を主に話す主人公が「ちゃんと喋れなくてすいません」と中国語で断りを入れてから、スピーチする場面など、「僕のスペイン語は幼稚園児レベルだよ、難しい言葉は何も知らない、日常会話しか話せないよ」と、残念そうに私に話した友人(子ども時代にカナダに移民)を思い出す。

それから、アメリカと中国、という物理的に遠い国に住む祖母と孫という所も私の涙腺を刺激し、辛い。私の祖母はもう亡くなってしまったのだが、そっと彼女を思い出す。そして、もう、上映中、実の両親の顔も浮かんで離れない。

そして、西洋と東洋の文化の違い。

同じ、移民家族が主人公の大ヒット作品「Crazy Rich Asians」(邦題はクレイジー・リッチ!)もあるが(最近NETFLIXで観た)私は断然こちらの方が好み。比較の対象が違いすぎるか。

一回目の映画鑑賞は「大好きな映画がまた一つ、増えたな」という最高な感想を持った。

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それから1カ月くらい経ったある日、台湾からパートナーの従姉妹が遊びにやって来た。彼女とは一度会った事があり、私は再会を喜んだ。「観たい映画があるんだけど、今度3人で行かない?」と聞かれて、タイトルを尋ねると、なんと「フェアウェル」だった。良い。良い映画だったから、もう一回観たい。二つ返事で応じた。

そして、ふと、私は思い出した。私が一人で映画館に行った当時、既に1カ月ほど上映していた。そして、+1カ月。ほう。人気だ、ロングラン!

初回の時も感じたが、観客は特にアジア系がすごく多いという訳でもなかった。人気の作品は、人種を選ばないんだな、と思った。(以前「Sorry to Bother You」(邦題はホワイト・ボイス)を観た時もそんな事を思った。映画「Parasite」(邦題はパラサイト 半地下の家族)も私は観ていないが、そんなイメージだ。)

この映画、音声言語は英語と中国語(マンダリン)のバイリンガルである。トロントでの上映時、マンダリン音声には英語字幕が付いた。台湾出身の2人は、マンダリンを話すので「この話をもっと深く理解出来て、いいなぁ」と思ったりした。

上映中、彼らは、私が何とも無いところで、ウケたりしていた。そういう事だ。やっぱり英語字幕で訳し切れていない面白さがあったのだ。

更に、数々の中華的文化を映し出す場面で、隣で頭を抱えるパートナー。え?何がそんなに?よく分からん。

そして、上映終了後、彼らが真っ先に伝えて来たのは「ナイナイがgrandmaと字幕翻訳されていたけど、ちょっと違うの、ニュアンスは、grannyみたいな感じ」という事。なるほど。それは、ちょっと違うな。日本語ではどう訳されるんだろう。

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映画って、文化を知る人、その言語を話す人の解説付きで観ると、こんなにも違うものなんだな、と初めて知った良い経験となった。

確かに、自分も10年前に観たアメリカン映画を今見返し、「あぁ、ここ見逃してたな」「こんな話だったけか」みたいな事あったりする。北米文化を少し知った今、理解を深める、というか。映画って異文化理解の教科書でもある。

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これは、私の趣味?みたいな所もあるが、欧米作品を日本で上映する時の、本国での予告映像と日本の予告映像の編集の違いも、面白かったりする。

この作品は、日本版ポスターも予告も、監督ら制作チームにリスペクトが感じられ、素敵。こういうやり方が一般的になるといい。嬉しい。

とにかく、理屈抜きにして、とても良い映画なので機会があったら是非。こんな時期なので、声を大にして「映画館で是非!」と言いづらい。どうぞ、お出掛けの際はお気を付けて。

以下、公式サイトです。

基本的に好きになった映画はとことん復習する派でして(予習はしない。観る前は、ネタバレが怖くてはイントロダクション等は読まないようにしている。予告も途中までで止めたりする)

好きな映像がこちら。主演俳優のインタビュー。3:52

監督の脚本についてのインタビュー(公式の日本語訳はありませんが、YouTubeに付いている日本語の翻訳機能で比較的理解可能です。)7:22

これも面白かった。Lulu Wang Says Her Father Originally Thought 'The Farewell' Script Was 'Too Authentic' 7:13(この中で紹介されている映画「The Big Sick」(邦題はビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ もおすすめです)

彼女の次回作も、とても楽しみ。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

トップ画像拝借;https://cinerack.jp/farewell/

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