マガジンのカバー画像

蝦夷錦

4
戦国時代の北海道を舞台にした歴史小説を書いています。25,000人のアイヌと5,000人の日本人が暮らしていた15世紀から16世紀にかけての北海道。当時は渡島と呼ばれた北海道で暮… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

蝦夷錦  一.  戦国期の北海道 小説

蝦夷錦  一.  戦国期の北海道 小説

小説『蝦夷錦』15世紀から16世紀の渡島(北海道)を舞台に生きる人々の物語。和人の視点で物語が進みます。気になったときに改訂しています。

序章 一.

はるか昔に海が割れ、大陸と土続きだった時代に西から渡ってきた者たち。
いつの頃からか

”和人”

そう呼ばれた者たちは、東へ、さらに東へと進んでいった。

都の大将軍・阿倍比羅夫が海を越え”渡島”の地に、足を踏み入れてから八百年。渡島に

もっとみる
蝦夷錦  二.  戦国期の北海道 小説

蝦夷錦  二.  戦国期の北海道 小説

前回の話。マキリを巡る諍いで一人の蝦夷が和人に殺された。怒りに燃える蝦夷の大軍が和人地を襲撃。渡島南岸に連なる十二の和人館のうち、十が陥落した。追い詰められた和人は館に籠り、そこへ蝦夷の大軍が迫っていた。

序章 二. 花沢館

「伝令!比石館、落ちまして御座いまする!館主の厚谷右近将様は討ち死!残りも皆討ち取られた様子!蝦夷共の数、さらに増え、およそ二五〇〇!」

雪が解けてすぐに、蝦夷

もっとみる
蝦夷錦  三.  戦国期の北海道 小説

蝦夷錦  三.  戦国期の北海道 小説

前回の話。追い詰められた和人。その中から一人の若武者が立ち上がった。義父は策を張り巡らせ、敵の大将コシャマインの首を狙う。蠢き出た男たちの野望。若き大将、武田信広は蝦夷との戦に疑問を持ちつつ、馬を駆けた。

序章 三. 渡党

俺は、蝦夷になっちまったんだ。

俺の親父は商人でさ、陸奥と渡島を行ったり来たりしてたからよ、兄貴が親代わりのようなものだったんだ。

渡党に生まれたはやつは、みん

もっとみる
蝦夷錦  四.  七重浜の戦い 戦国期の北海道

蝦夷錦  四.  七重浜の戦い 戦国期の北海道

前回の話 蝦夷方には多くの渡党がいた。敵味方に別れた渡党を巻き込んで果てしない殺し合いは続く。勝利を目前にした蝦夷達の背後に、決死の突撃を掛ける和人の兵。因縁の土地、七重浜で蝦夷と和人の大将が邂逅する。

序章 四. 七重浜の戦い

「遠からん者は音にも聞けっ! 近くば寄って目にも見よっ!」

絶叫が海に響き、打ち寄せる波が大きくうねった。

花沢館は陥落せず、蝦夷は初めての敗北を喫した。

もっとみる