松井
約200字程度のショートショート。ホラー要素多め
詩です。
一行詩です。
エッセイです
詩、絵本
私を食べ尽くした彼は満足そうに眠る。彼の腹の中は温かで、恋する彼に抱かれる幸福の中、私は卵を産む。彼の腹の中でびっしりと。 子どもたちは元気が過ぎるようで、…
お隣さんは幼稚園に通う女の子がいるご家族だ。女の子は毎朝ゴミ出しをする。 雨の日でも風が強い日でも、女の子は毎日大きなゴミ袋を二つ出す。こんな小さいのにお手…
鳥の羽が落ちていると思い拾ってみると、それは天使の羽だった。白くてふわふわとしたそれはとても軽く、僕の手のひらの上で少し浮いている。 最近の僕は、仕事をクビ…
弟のブタの貯金箱を割った。漫画を買う金が足りなかったから。そして悪事はすぐにばれた。 「元に戻せ」 盗んだ六百円を差し出す。 「違う! ブタの方!」 しかし、…
私のママは綺麗。みんなもそう言ってくれる。 最近のママは鏡を見ることが増えた。そろそろ交換する時期だ。 「少しお留守番しててね」 きっちり一時間でママは帰っ…
ばあちゃんちの居間の鴨居には、先祖の遺影がずらりと並ぶ。昨年そこにじいちゃんも仲間入りし、とうとうばあちゃんも。 読経と線香の中、ばあちゃんの遺影を見る。い…
本日発売の「ココア共和国」4月号の、今月の一行と傑作集Ⅱに掲載されました。 「匿名希望」という詩です。 主催者である秋亜綺羅(あき・あきら)さんが、この詩について…
少しだけ開けたカーテンの隙間から外を見る。かれこれ八時間。電柱に身を隠すようにしてあの男はずっといる。 今日に限ったことではない。二年ほどあの男はこの家を見…
相談に乗って欲しいと頼まれたので、耳を取り外し、貸した時の相手のポカン顔
腹は満タンなのに口は食う 頭は不在なのに足は走る 心は真っ当になりたいのに体は蓮池に落ちていく
「I Love Meat」と書かれたTシャツで刺身を食うが、これもまた肉
発熱、頭痛、喉の痛み、鼻水、倦怠感。まぎれもなく俺は病人だ。 スマホを掴むが、両親は遠方だし、頼れる友人もいないし、恋人には俺の浮気が原因で振られたばかり。 …
みんな考えすぎよ。彼に裏なんてない。彼は私のことを深く愛してくれるとってもいい人なの。 彼は私のピンチには必ず駆けつけてくれる。毎回たまたま近くを通りかかっ…
ビルとビルの間を垣間見し、吸い込まれて行くは修羅の街
怖いものから逃げるために罪を犯し 罪から逃げるために嘘をつき 嘘をつく自分から逃げるために私を消そう
私は死に、ただのゴミとなるだろう 悲しくもあり寂しくもあり嬉しくもあり 何も残せなかったことを悔やみながら 何も残さなかったことに安堵するだろう とにもかくにも ゴ…
2024年4月30日 08:52
私を食べ尽くした彼は満足そうに眠る。彼の腹の中は温かで、恋する彼に抱かれる幸福の中、私は卵を産む。彼の腹の中でびっしりと。 子どもたちは元気が過ぎるようで、つい彼の腹を食い破り外に出てしまう。毎回注意しても言うことを聞かない。親って大変。 それにしても、また「彼」を失ってしまった。 スマホの電源を入れ、画面をタップする。マッチングアプリ。これってすごく良い。 この中にはたくさんの「彼」が
2024年4月16日 07:36
お隣さんは幼稚園に通う女の子がいるご家族だ。女の子は毎朝ゴミ出しをする。 雨の日でも風が強い日でも、女の子は毎日大きなゴミ袋を二つ出す。こんな小さいのにお手伝いをして、とても偉い。「毎日ゴミ出し大変だね」「大変だけどゴミはたくさんいるから」「ゴミはいるんじゃなくて、ある、だよ」「いる、だよ」 女の子が指差したのは、通勤途中の大人たち。「お前もだよ」 女の子の小さく可愛い指が、私に
2024年4月10日 22:12
鳥の羽が落ちていると思い拾ってみると、それは天使の羽だった。白くてふわふわとしたそれはとても軽く、僕の手のひらの上で少し浮いている。 最近の僕は、仕事をクビになり、恋人には振られ、友人には壺を買わされ、犬の糞も踏んだ。 この羽の軽さが羨ましくなり、試しに背中に刺してみた。気持ちが軽くなる。羽を探し見つけては、背中に刺していく。 気づけば僕は空の上。見下ろせば浮かない顔の人々。 僕は背中の
2024年4月7日 08:25
弟のブタの貯金箱を割った。漫画を買う金が足りなかったから。そして悪事はすぐにばれた。「元に戻せ」 盗んだ六百円を差し出す。「違う! ブタの方!」 しかし、ブタは粉々。「ブタの弁償代五百円を払え!」 手の中にあった五百円玉を渡す。弟は満足気に頷く。「許す」 弟はまだ四歳。金の価値をわかっていない。弟はブタの貯金箱の方を気に入っており、中身の金はおまけなのだ。 とにかく僕の手の中に
2024年4月4日 18:24
私のママは綺麗。みんなもそう言ってくれる。 最近のママは鏡を見ることが増えた。そろそろ交換する時期だ。「少しお留守番しててね」 きっちり一時間でママは帰ってくる。新しい皮と一緒に。 お風呂で皮をじゃぶじゃぶ洗い、ドライヤーで乾かす。 ママは自分の胸に両手を突き立て、ビリビリと左右に引き裂き、古い皮を脱ぎ捨てる。真っ赤な筋肉がもそもそ動き、新しい皮を着る。「どうかな?」 ママがくる
2024年4月3日 08:17
ばあちゃんちの居間の鴨居には、先祖の遺影がずらりと並ぶ。昨年そこにじいちゃんも仲間入りし、とうとうばあちゃんも。 読経と線香の中、ばあちゃんの遺影を見る。いつもと同じ優しい笑顔。込み上げる涙を誤魔化そうと顔を上げると、ふと思った。「じいちゃんってあんな顔だっけ」 そして気づく。先祖たちが全て同じ顔なのだ。 ばあちゃんの遺影に目をやる。いつもと同じ優しい笑顔が歪み、次第に鴨居の遺影と同じ顔
2024年4月1日 18:23
本日発売の「ココア共和国」4月号の、今月の一行と傑作集Ⅱに掲載されました。「匿名希望」という詩です。主催者である秋亜綺羅(あき・あきら)さんが、この詩について触れてくれています。嬉しい。以前「ココア共和国」に掲載された(2022年9月号)「鬼の肉じゃが」という詩について、ツイキャスで取り上げてもらったことがある。普段感想などをほとんどもらえないので、とても嬉しかった。そして、私と他者の
2024年4月1日 09:41
少しだけ開けたカーテンの隙間から外を見る。かれこれ八時間。電柱に身を隠すようにしてあの男はずっといる。 今日に限ったことではない。二年ほどあの男はこの家を見てるだけ。「モテるのも考えものだな」 家主である女に声をかけるが、返事はない。愛しの女はただの肉塊となり、床に転がるだけ。もちろん、そうしたのは僕。 もう一度隙間からあの男を見る。お前がそこから見るしかできなかったこの場所に、僕はいる
2024年3月25日 10:46
2024年3月6日 08:14
腹は満タンなのに口は食う頭は不在なのに足は走る心は真っ当になりたいのに体は蓮池に落ちていく
2024年3月4日 19:06
2024年3月1日 08:45
発熱、頭痛、喉の痛み、鼻水、倦怠感。まぎれもなく俺は病人だ。 スマホを掴むが、両親は遠方だし、頼れる友人もいないし、恋人には俺の浮気が原因で振られたばかり。 その時インターホンが鳴る。画面に笑顔の男が映る。「今、あなたは幸せですか?」 宗教の勧誘か。正に神の救いだ。「初対面の人に頼むのもなんですが、実は熱が出ていて全身もだるくて。それでーー」「1日も早い快復をお祈りします」 祈りよ
2024年2月23日 16:41
みんな考えすぎよ。彼に裏なんてない。彼は私のことを深く愛してくれるとってもいい人なの。 彼は私のピンチには必ず駆けつけてくれる。毎回たまたま近くを通りかかったなんて運命ね。 それに私の健康まで気遣ってくれる。教えてもない毎日の食事がわかるなんて、愛の成せる技ね。 あとLINEのやりとりや電話の内容も全て知ってる。先に目を通してるなんて、まるで売れっ子アイドルね。 え? 「怖いぃー」ってど
2024年2月20日 07:56
2024年2月18日 07:45
怖いものから逃げるために罪を犯し罪から逃げるために嘘をつき嘘をつく自分から逃げるために私を消そう
2024年2月12日 08:36
私は死に、ただのゴミとなるだろう悲しくもあり寂しくもあり嬉しくもあり何も残せなかったことを悔やみながら何も残さなかったことに安堵するだろうとにもかくにもゴミなのだからもう何も感じなくていいしもう何もしなくていいし私は死に、ただのゴミとなるだろう永遠に安らかなただのゴミとなるだろう