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●怪談詩(2)

割れた手鏡を覗き込むと 破片の数だけ私がいる 数人を除いては

    • ●怪談詩(1)

      その犬はみんなを守っているの、と その背に人々を乗せ その人々を片っ端から丸呑みするよう その指示をする可憐な少女

      • ●一行詩(39)

        死んでるのか生きてるのかわからない虎の剥製が、ただただこちらを見遣る

        • ●一行詩(38)

          増え続けるほくろを辿っていくと、そこにはケタケタとルドンの笑う蜘蛛

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          ●一行詩(37)

          電車の座席の下に落ちていた毛抜きに、お前はどれだけ抜いてきたのかと語りかけてみる

          ●一行詩(37)

          ●詩「虚像」

          私の家の鏡の中には いつも知らない誰かがいる 昨日は老婆 一昨日は少年 先週は誰だっけ 今朝は若い男がいた たくさんの欲望を溜め込み 目をギラギラと光らせ 腕の筋肉はモコモコと動いている 鏡の端には美しい女がいた こんなことは初めて だから若い男と美しい女は結婚した 何度目かの朝には二人の子どもがいるのだろう

          ●詩「虚像」

          ●200字小説「恋」

           私を食べ尽くした彼は満足そうに眠る。彼の腹の中は温かで、恋する彼に抱かれる幸福の中、私は卵を産む。彼の腹の中でびっしりと。  子どもたちは元気が過ぎるようで、つい彼の腹を食い破り外に出てしまう。毎回注意しても言うことを聞かない。親って大変。  それにしても、また「彼」を失ってしまった。  スマホの電源を入れ、画面をタップする。マッチングアプリ。これってすごく良い。  この中にはたくさんの「彼」がいて、その数だけ私は恋をする。

          ●200字小説「恋」

          ●200字小説「ゴミ出し」

           お隣さんは幼稚園に通う女の子がいるご家族だ。女の子は毎朝ゴミ出しをする。  雨の日でも風が強い日でも、女の子は毎日大きなゴミ袋を二つ出す。こんな小さいのにお手伝いをして、とても偉い。 「毎日ゴミ出し大変だね」 「大変だけどゴミはたくさんいるから」 「ゴミはいるんじゃなくて、ある、だよ」 「いる、だよ」  女の子が指差したのは、通勤途中の大人たち。 「お前もだよ」  女の子の小さく可愛い指が、私にもまっすぐ向けられていた。

          ●200字小説「ゴミ出し」

          ●200字小説「天使」

           鳥の羽が落ちていると思い拾ってみると、それは天使の羽だった。白くてふわふわとしたそれはとても軽く、僕の手のひらの上で少し浮いている。  最近の僕は、仕事をクビになり、恋人には振られ、友人には壺を買わされ、犬の糞も踏んだ。  この羽の軽さが羨ましくなり、試しに背中に刺してみた。気持ちが軽くなる。羽を探し見つけては、背中に刺していく。  気づけば僕は空の上。見下ろせば浮かない顔の人々。  僕は背中の羽を一枚、また一枚と落としていく。 

          ●200字小説「天使」

          ●200字小説「弁償」

           弟のブタの貯金箱を割った。漫画を買う金が足りなかったから。そして悪事はすぐにばれた。 「元に戻せ」  盗んだ六百円を差し出す。 「違う! ブタの方!」  しかし、ブタは粉々。 「ブタの弁償代五百円を払え!」  手の中にあった五百円玉を渡す。弟は満足気に頷く。 「許す」  弟はまだ四歳。金の価値をわかっていない。弟はブタの貯金箱の方を気に入っており、中身の金はおまけなのだ。  とにかく僕の手の中には百円玉。これで漫画が買える。

          ●200字小説「弁償」

          ●200字小説「ママは綺麗」

           私のママは綺麗。みんなもそう言ってくれる。  最近のママは鏡を見ることが増えた。そろそろ交換する時期だ。 「少しお留守番しててね」  きっちり一時間でママは帰ってくる。新しい皮と一緒に。  お風呂で皮をじゃぶじゃぶ洗い、ドライヤーで乾かす。  ママは自分の胸に両手を突き立て、ビリビリと左右に引き裂き、古い皮を脱ぎ捨てる。真っ赤な筋肉がもそもそ動き、新しい皮を着る。 「どうかな?」  ママがくるりと回る。ママはやっぱり綺麗。

          ●200字小説「ママは綺麗」

          ●200字小説「鴨居の遺影」

           ばあちゃんちの居間の鴨居には、先祖の遺影がずらりと並ぶ。昨年そこにじいちゃんも仲間入りし、とうとうばあちゃんも。  読経と線香の中、ばあちゃんの遺影を見る。いつもと同じ優しい笑顔。込み上げる涙を誤魔化そうと顔を上げると、ふと思った。 「じいちゃんってあんな顔だっけ」  そして気づく。先祖たちが全て同じ顔なのだ。  ばあちゃんの遺影に目をやる。いつもと同じ優しい笑顔が歪み、次第に鴨居の遺影と同じ顔になっていった。

          ●200字小説「鴨居の遺影」

          【「ココア共和国」4月号掲載とちょっとした決意】

          本日発売の「ココア共和国」4月号の、今月の一行と傑作集Ⅱに掲載されました。 「匿名希望」という詩です。 主催者である秋亜綺羅(あき・あきら)さんが、この詩について触れてくれています。嬉しい。 以前「ココア共和国」に掲載された(2022年9月号)「鬼の肉じゃが」という詩について、ツイキャスで取り上げてもらったことがある。 普段感想などをほとんどもらえないので、とても嬉しかった。 そして、私と他者の見えているものや感じたものが違うことが面白かった。 そんな体験のきっかけになっ

          【「ココア共和国」4月号掲載とちょっとした決意】

          ●200字小説「僕はいるよ」

           少しだけ開けたカーテンの隙間から外を見る。かれこれ八時間。電柱に身を隠すようにしてあの男はずっといる。  今日に限ったことではない。二年ほどあの男はこの家を見てるだけ。 「モテるのも考えものだな」  家主である女に声をかけるが、返事はない。愛しの女はただの肉塊となり、床に転がるだけ。もちろん、そうしたのは僕。  もう一度隙間からあの男を見る。お前がそこから見るしかできなかったこの場所に、僕はいるよ。

          ●200字小説「僕はいるよ」

          ●一行詩(36)

          相談に乗って欲しいと頼まれたので、耳を取り外し、貸した時の相手のポカン顔

          ●一行詩(36)

          ●詩「ちぐはぐ」

          腹は満タンなのに口は食う 頭は不在なのに足は走る 心は真っ当になりたいのに体は蓮池に落ちていく

          ●詩「ちぐはぐ」