●200字小説「鴨居の遺影」

 ばあちゃんちの居間の鴨居には、先祖の遺影がずらりと並ぶ。昨年そこにじいちゃんも仲間入りし、とうとうばあちゃんも。
 読経と線香の中、ばあちゃんの遺影を見る。いつもと同じ優しい笑顔。込み上げる涙を誤魔化そうと顔を上げると、ふと思った。
「じいちゃんってあんな顔だっけ」
 そして気づく。先祖たちが全て同じ顔なのだ。
 ばあちゃんの遺影に目をやる。いつもと同じ優しい笑顔が歪み、次第に鴨居の遺影と同じ顔になっていった。

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