●200字小説「ママは綺麗」

 私のママは綺麗。みんなもそう言ってくれる。
 最近のママは鏡を見ることが増えた。そろそろ交換する時期だ。
「少しお留守番しててね」
 きっちり一時間でママは帰ってくる。新しい皮と一緒に。

 お風呂で皮をじゃぶじゃぶ洗い、ドライヤーで乾かす。
 ママは自分の胸に両手を突き立て、ビリビリと左右に引き裂き、古い皮を脱ぎ捨てる。真っ赤な筋肉がもそもそ動き、新しい皮を着る。
「どうかな?」
 ママがくるりと回る。ママはやっぱり綺麗。

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