「良い販売員」とはなんなのか
あなたは買い物をしたあとに思い出す販売員はいるだろうか。
ここでいう販売員とはものだけでなくサービスを売る人も含めるのだが、後々思い出してもらえるような販売員にはどういった共通点があるのだろうか。
そもそも私たち販売員は、お客様からお金をもらって物やサービスを売っている。
お客様からすれば払った対価に見合っている物やサービスなら普通、それより低ければ不満が出るし、それ以上のものを受けられた時に初めて喜びを感じる。
それでは対価以上とは何なのか。
対価の基準はその人が今まで受けてきたサービスによって多少左右される(国民性や地域性も関係するだろう)とは思うが、一般的にはその業界で普通とされている接客応対で決まる。
外国人が日本に来てサービスに驚くことがあるのはよく聞く話だが、私は小さい頃それが不思議だった。しかし海外旅行に行って理解した。店内に入っても店員が挨拶しないこともよくあったし、レジの最中も店員同士で私語をしながら片手間で会計をしていたのだ。
確かにそれが普通になっている人であれば、日本人の接客は想定外で感激することだろう。
では私たちが住む日本で感激するような接客とはどのようなものであろうか。
ここで私が体験したこと出来事を2つ紹介したい。
2年前、私は2人目の子を産んでまだ1年しか経ってない頃に家族でホテルに泊まった。
ネットで口コミを見て子供を連れても行きやすそうだなと思ったのがきっかけだった。
子供を連れての外出は(産むまで知らなかったが)大人だけの旅と違い色々下調べや準備も要るし、予定通りにいかないことだらけだ。
ご飯一つをとっても、子供の食べられるメニューはあるのか、カトラリーは用意されているか、椅子に赤ちゃん用はあるのか、、あげ出したらキリがない。そして小さい子連れのご飯で難しいのは食べてる間にグズらないか、ということ。これはかなり難題だ。そもそもいつもと違う環境でのご飯、旅行で疲れているとなれば高確率でぐずるし、なかなかのハードルだ。
我が家も外食ではいつもご飯途中でぐずって親のどちらかが離脱してあやしに入りご飯を諦めることになるのが常だ。しかし、ここでは違った。
どこからともなくホテルの従業員が通りがかりに子供たちに声をかけてくれずっと子供は楽しそうだった。うっかり水筒を下に落としてしまった時、素早くスタッフの方が駆けつけて「洗って消毒してきますね!」と笑顔で対応してくれた。
そしてそれでもやはりぐずるのが子供。だんだん食事に飽きてきた頃にはなんとバルーンでつくられ作られた犬が2匹用意されて子供達に渡された。
私は子供を産んでからというもの、食事中に席を立って子供の対応をするのが当たり前になっていた。だがここでは一度も席を立つことなく、温かい料理は温かいまま、食べたいものを全てお腹いっぱい食べられ、最後まで夕飯を楽しめたのだ。
それは私にとって衝撃的な出来事だった。
子供連れでホテルには何度か行った。どこも「子ども大歓迎!」の評価のところばかりだったが、行ってみれば灰皿が子供の手の届くところにおいてあったり(禁煙の部屋を希望していた)、子供の手の届くところに湯沸かし器やコンセントやがあったり、子供用の食事が1種類しか用意されてなかったりと全く気を休めて泊まれるところではなかった。
こんなにも安心して過ごせるところがあったのか。周りにすみません、すみませんと謝ってばかりじゃなく泊まれるところなんてあったのかと心底驚き、嬉しかった。
止まるまで少し宿泊料高めかなと思っていたところが、このサービスにこの値段なら安いぐらいだと思えるほどになっていたのだ。
もう一つの体験は真逆の出来事である。
私は子供の友達親子と出かけていた。
子供5人(小学生1人、幼稚園児4人)と大人2人という人数で、遅めのお昼ご飯の時間になった。
ランチが終わっていることもあるからと、事前にお店に電話し、大人と子供の人数分の席が空いているか、ランチの注文は何時まで行けるか、などを確認し、席が十分に空いていることと、ランチは15時まで注文できる事を確認し、その10分後に来店した。
案内された席は6人の椅子席、まだ他に空席は十分にあったので、隣にあった2人席をくっつけていいかきくと「混んだ時に困るから」と断られてしまった。
椅子席なのに人数分がないまま、仕方ないのでとりあえずメニューを決め呼び鈴を鳴らした。5分経っても誰も来ない。そこでもう一度鳴らした。2,3分した頃であろうか、ようやくきた店員は私たちの注文を途中まで聞いて「そのメニューはできません。ランチは14:00までなんですよ。(携帯を取り出して)14:03なんで。」と言う。電話でランチが15時までと言っていたのにダメなのである。
さすがに呼び鈴2度も鳴らしてなかなか来ずに時間が過ぎたからというのは腑に落ちなかったので店の人に確認してもらったら注文できると言われ注文した。
5ミリ近くある長い爪の店員が料理を運んできて、衛生面に疑問を持った。ご飯の間はお水を一度も入れられることなく空のグラスのままで、呼ぼうにもどこにも店員が見当たらない。そして最後はご飯の後にお願いしていたジュースが注文と違うものがきた。
私は食事において無意識に受けるはずのサービスを頭の中で描いていた。
・人数分の席数で案内される
・呼び鈴を鳴らせば店員がきてくれる
・電話で確認した通り15時までランチが頼める
・衛生面に配慮された店員が運ぶ
・グラスの水は減れば注がれる(もしくは呼べばすぐきて注いでくれる)
これらの基準は私が今まで食事をしてきた経験から当たり前になっている事だ。私は販売員を指導する職で接客に対しては厳しい目を持っているせいで余計感じたのかもしれないが、予想を大幅に下回る対応をされ、私は2度と行きたくないと思った。
日本の接客サービスは確立されていて、それを日常で受けている私たちは想定外に良い接客を受ける機会はあまり多くないだろう。
しかしそれだから故に、想定外のサービスを受けた時、グッとお客様の心に刺さるものがある。一段上の接客サービスをする為には常に他店との差別化を図り進化していなければならない。
例えばディズニーキャストはわかりやすい。
私は一度雨の日に、お店でオラフの人形を買った男の子が袋に入れたくない、お母さんは雨だから濡れるし入れて欲しい、と困っているところに遭遇した。普通の店ならお母さんに決めるのを委ねるか、業務通り気にせず袋に入れるだろう。だがそこにいたキャストは男の子の横にさっと目線を合わせ「オラフね、雨だと濡れて溶けちゃうかもしれないから袋に入れてもいい?」と訊いたのである。
男の子は、 はっ!とした様子で「入れる!」とすぐに返事をした。
みんなが笑顔になって買い物を終えたのを見て心の中で拍手を送った。
良い販売員とは、その業界において必要とされるサービスを安定して提供をした上で、お客様をよく観察し何が求められているのか考えオリジナリティのあるバリエーション豊かなサービスを提供できる人ではないかと私は思う。
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