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matan eh
2020年7月13日 06:55
8 主題はカニの兄弟と父親から見える これまで、「やまなし」にまつわる数々の謎を自分なりに解明しましたが、「この作品の主題は?」と聞かれると、回答に困ります。ただ、主題なので、あまりごちゃごちゃ考えず、基本的には主観的なものでよいのではないかと思います。 数々の宮沢賢治作品を通してこの「やまなし」に凝縮された思想を読み解くと、様々な主題が浮かんで来るのは当然であります。でも、そこはやはり登場人
2020年7月18日 13:17
9 幼き頃の安堵感 母にこの作品を読み聞かせしてもらっていた時のことを常に思い出すようにしながら感覚を働かせて論考を進めてきました。 私の父は、子供たちのために世界の名作という15冊程度の絵本シリーズを買い揃えてました。それには、誰もが知る世界の珠玉の童話が掲載されており、どれも特異な輝きを放つ作品ばかりでした。 ただ、宮沢賢治の放つ独特な感覚は、他のどれとも全くちがっており、心に直接働き
2020年7月11日 09:23
⑦金剛石 この言葉は、最後にのみ用いられています。しかし、非常に重要かつ彼の思想の真理にもっとも近いものの象徴でもあると考えられます。本文では、 波はいよいよ青白い焔をあげ、 それはまるで金剛石の粉を はいているようでした。 と、ここでまたもや青白い焔の波です。その直前にも「いよいよ青い焔をあげ」と言っているので、波というものが、全ての力動に共通する性質であることを理解していれば
2020年7月5日 06:15
⑥やまなし やまなしは、宮沢賢治の「木の実」に対する思い入れの強さから、登場することになったと考えられます。他の作品において、「木の実」がかなり肯定的な意味をもって登場してきます。特に、「木の実」が「落ちてくる」ことにこだわっています。自ら他の生物のために命を与える存在の崇高さを必死に表現しているのです。そして、たいていは「木の実」には、金のイメージが施されます。 中でも「いちょうの実」が最も木
2020年7月4日 01:00
7 他の賢治作品との関連 いよいよ今回の解明の核心部分に入って行きます。「やまなし」という作品ですが、作品だけを追ったり、他人の解釈を参考にしたりするだけでは理解できない面が多くあります。 宮沢賢治他の様々な作品に触れることで、「ああ、「やまなし」のこの言葉にはそういう意味があったのか。」と気づかされるのです。宮沢賢治は、童話群の中に様々にキーワードを組み込みながら、1つのイーハトーヴという世界
2020年6月29日 06:09
そして、主題にかなり迫ることになりますが、お父さんのカニと「イーハトーヴの夢」の関連です。 「イーハトーヴの夢」では、宮沢賢治の理想について述べられています。一つは教師としての理想で、もう一つが作家としての理想です。著者の畑山氏が「やまなし」と「イーハトーヴの夢」をどの程度結びつけようとしているのかは分かりませんが、私ご研究を続ける中で、見事な「やまなし」との結びつきを見出すことができました。
2020年6月28日 08:20
次に、妹トシさんの死です。「イーハトーヴの夢」を読んですぐにこのことと結びつくのが「クラムボンの死」です。私の考察では、「クラムボン」をカニの兄弟にとって最も身近で重要な存在であるとしました。宮沢賢治にとってそれは妹のトシさんであったようです。 宮沢賢治と似た部分が多く、勉学が好きで、兄弟たちの中でも最も何でも話し合うことができたそうです。家族の中で最も重要な存在は妹トシさんであることはよく知
2020年6月27日 22:56
5 「イーハトーヴの夢」との関連 ここから先は、主題の探求となります。光村図書出版の小学6年生の国語科教科書には「やまなし」と合わせて、宮沢賢治の人物像を知ることができる「イーハトーヴの夢」という畑山博さんによる宮沢賢治の紹介文が掲載されています。 その意図は、「やまなし」を読解するために、本作に通ずる宮沢賢治の考え方や心情などを探ることができるようにするためです。それでは、早速どのような関連を
2020年6月25日 06:27
5 父親の存在とその価値 「やまなし」の「五月」の暗さと、クラムボンやお魚、カニの兄弟などの謎について考えてきましたが、私はこの作品で最も重要な人物は、お父さんのカニであると思います。お父さんのカニに着目して「やまなし」全体を捉えれば、比較的容易に主題に迫ることもできるでしょう。そして、この父親像には、宮沢賢治の人柄と理想がにじみ出ているようで、私自身とても好感をもっています。ここでは、そんなお
2020年6月20日 23:15
やまなしは幼い頃に何度も母親に読み聞かせてもらった作品です。今回、そのやまなしを独自に考察しました。内容は以下の通りです。1 あくまで子どもに向けた童話であること2 前半部分「五月」の暗さ3 「クラムボン」カニの兄弟との関係性4 「お魚」の謎5 父親の存在とその価値6 「イーハトーヴの夢」との関連7 他の賢治作品との関連8 主題はカニの兄弟と父親から見える9
2020年6月24日 06:08
ここで、私が着目した箇所は、「にわかにぱっと明るくなり、日光の黄金は夢のように水の中に降ってきました。波からくる光の網が、底の白い岩の上で美しくゆらゆらのびたり縮んだりしました。泡や小さなごみからはまっすぐな影の棒が、斜めに水の中に並んで立ちました。」の部分です。初め、谷川は、「上の方や横の方は青く暗く鋼のように見えます。そのなめらかな天井を…」と描かれています。この描写を二つの描写を比較すると
2020年6月23日 07:06
4 「お魚」の謎 「五月」において、「クラムボン」「カワセミ」と同じくらいに存在感をもつ「お魚」。これについて宮沢賢治は一体何を表そうとしたのでしょうか。やまなしを読解する際に、比較的さらっと解釈されてしまいがちな「お魚」ですが、ただカワセミに食べられるためだけに登場させるのだとしたら、こんなに何度もその行動に言及することもないでしょう。そこにはきっと、「クラムボン」のような深い事情が隠されている
2020年6月21日 23:04
3 「クラムボン」カニの兄弟との関係性 「クラムボン」については、実に様々な考察がされ、読者を大いに楽しませております。もちろん答えはありませんが、私が幼き頃に受けた印象は「深い悲しみ」でした。 「クラムボン」という響きだけを取り上げるならば、確かに可愛らしくなんだか面白い表現で、子どもを楽しませてくれるような印象がありますので、自由に想像を膨らませて楽しむことも許されることでしょう。 しかし