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ミスチルが聴こえる(短編小説)

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Mr.Childrenの曲を聴いて浮かんだ小説を創作します。 ※歌詞の世界観をそのまま小説にするわけではありません。
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2022年3月の記事一覧

マイライフ (短編小説『ミスチルが聴こえる』)

マイライフ (短編小説『ミスチルが聴こえる』)

 好きな人にラブレターを送ったけど、返事は来なかった。八十四円の価値しかない僕のラブレターは、多分ゴミ箱に捨てられただろう。
 令和にラブレターなんて、古い。それにダサい。だけど僕が選んだ道は間違っていないと思う。
 寂れた商店街。破られたポスター。汚い象の置物。僕の日常は、僕に似ている。どこか淋しくて、華がない。
 錆びたポールを飛び越える子供。ふらつく老人。暇そうに伸びをする床屋の店主。お前は

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逃亡者 (短編小説『ミスチルが聴こえる』)

逃亡者 (短編小説『ミスチルが聴こえる』)

 数えきれないほどの、見たくない過去。触れたくない時間。関わりたくない人。僕はそれらから背を向けて、ポケットに手を突っ込んで歩き続けている。苺味の飴玉は、もう残っていない。
 喧嘩。それも、些細なやつ。でも僕はカッとなって、相手に汚い言葉を吐いた。その度相手は泣いて、怒って、僕を嫌った。僕は自分が正しいと言い続けた。傷つくことが怖いから、正論を言われたら、自壊してしまいそうだから。
 馬鹿な男だと

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アナザーマインド (短編小説『ミスチルが聴こえる』)

アナザーマインド (短編小説『ミスチルが聴こえる』)

「いらっしゃいませ」
 笑顔の店員。サービス業は大変だろう。きっと、あの人の心の中は、黒い。
 僕はスッと彼女の心に侵入して、覗く。罪深き行為とは思うが、生まれつき持っている奇妙かつ貴重な特殊能力を使わない理由もない。
『あーあ。しんどい』
 それはそうだ。仕事はしんどい。
『なんか、鬱憤ばらしにハワイ行きたいなあ』
 今はクリスマスが近づいている繁忙期。わかる気もする。
『駿くん。どうして私を振

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星になれたら (短編小説『ミスチルが聴こえる』)

星になれたら (短編小説『ミスチルが聴こえる』)

 星になれたらいいなって、ばあちゃんは言った。十二歳の僕には、その意味がいまいち理解できなかった。
 ばあちゃんはいつも白いベッドの上にいた。僕は学校が無い日に、ばあちゃんに会って学校であったことを話した。ばあちゃんは決まって笑い、「エンジョイしてるんだね」なんて似合わない言葉を言って、僕まで笑った。
 中学生になった僕は、休日も部活動に励んでいたから、ばあちゃんの顔を見る機会が減った。それでも時

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車の中でかくれてキスをしよう (短編小説『ミスチルが聴こえる』)

車の中でかくれてキスをしよう (短編小説『ミスチルが聴こえる』)

「同性愛ってさ。認められているようで、認められてないじゃん。何というか、世間は温かい目で見てくるんだよ。悪く言えば腫れ物扱い。別に男同士が外で手を繋いだっていいじゃんって僕は思うけど」
「まあ、お前がブーブー文句を言ったところで、状況は変わらないんだ。俺たちは俺たちの世界で、ひっそり愛し合えばいい」
「でも、それって寂しくない?」
「寂しい? 俺はそう思わないな。だって、お前がいるんだろう? それ

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抱きしめたい (短編小説『ミスチルが聴こえる』)

抱きしめたい (短編小説『ミスチルが聴こえる』)

「じゃあね、哲也くん」
 白石さんは、僕に手を振って駅へと向かっていく。追いかけたい。追いかけて、白石さんを止めて、思い切り抱きしめたい。僕の甘い幻想が脳内を覆い被さって、狂わせる。
 恋って、厄介だ。
 僕は今まで一度として恋をしたことがなかった。だからラブストーリーを見ても聞いても、何も思わなかった。
「それってフィクションでしょう?」
 そんなふうに突き放すこともしばしばだった。
 だけど二

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虹の彼方へ (短編小説『ミスチルが聴こえる』)

虹の彼方へ (短編小説『ミスチルが聴こえる』)

 健くんは雨上がりの空を見上げて、「虹だ!」と叫んだ。私はあまりにも遠い存在に、あまり関心を持つことができなくて、「そうだね」と素っ気ない返事をしてしまった。
「風花、虹嫌い?」
「嫌いじゃないけど、遠いなって思って」
「遠い? 僕には近くに見えるよ」
「どうして?」
「僕、虹を渡ることができるんだ!」
 私には、意味不明な言葉。健くんって、変な人。
「風花は虹を渡ることができないの?」
「できな

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ためいきの日曜日(短編小説『ミスチルが聴こえる』)

ためいきの日曜日(短編小説『ミスチルが聴こえる』)

「出かけてくる」
 美月はソファから立ち上がって、支度をして家を出る。最近、日曜日になると決まって家を出ていく。僕は気になって、バレないように美月を尾行する。
「お待たせ」
 美月は僕に見せない笑顔で、見知らぬ男と腕を組む。
「どこ行く?」
 美月の声が弾む。そっか、美月には好きな人がいたんだ。悔しいけど、幾分か清々しい気持ちになった僕は、本気で彼女のことが好きではないのだろうかと、自分の気持ちを

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君のこと以外は何も考えられない (短編小説『ミスチルが聴こえる』)

君のこと以外は何も考えられない (短編小説『ミスチルが聴こえる』)

 かき氷を食べて頭にキンとくる感覚。僕はあれが好きだった。変わり者。変だね。でも好き。君はいつだって僕を肯定してくれた。特に深い関係じゃない。おそらく幼なじみ以上の関係にはなれない。それでも僕は、君のこと以外何も考えられなかった。
「幹雄、わたし彼氏できたんだ」
 四月の風は卑怯で、生暖かくて心を和やかにさせようとする。
「へえ、そうなんだ」
 桜は、まだ散っていない。時間が経てば少しずつピンク色

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