蒼乃真澄

26歳。三郷の執筆屋。小説、詩、エッセイ、随筆、ブログ、散歩録、語り、駄弁り、寸劇など…

蒼乃真澄

26歳。三郷の執筆屋。小説、詩、エッセイ、随筆、ブログ、散歩録、語り、駄弁り、寸劇などなど。  だいたい月〜金曜日の20時に更新します。

マガジン

  • アオマスの小説

    どんな一面にも些細な物語が存在する。それを上手に掬って、鮮明に描いていく。文士を目指す蒼日向真澄によって紡がれる短編集です。

  • アオマスの独り言

    蒼日向真澄の個人的な想いを連ねていきます。読んでいただけると幸いです。

  • アオマスの日常

    蒼日向真澄の日常をお届けします。駄弁り中心。写真多めです。緩く更新します。

  • アオマスの詩集

    フワフワと頭に浮かんでいる言葉たちを一本の糸にするように紡いでいき、詩にしてみました。様々な感情に揺さぶられながら、それでも言葉にしてみたい愛や希望などを詩にできたらと考えています。  読んでいただけると幸いです。

  • ミスチルが聴こえる(短編小説)

    Mr.Childrenの曲を聴いて浮かんだ小説を創作します。 ※歌詞の世界観をそのまま小説にするわけではありません。

最近の記事

  • 固定された記事

没個性ピラミッド

 小学生たちが、運動会で組体操をする。先生は意のままにピラミッドを作らせようとしたけど、みんな「キツイ」と言って嫌がる。このままではピラミッドになる人材がいない。みんな多様性を利用して、自由にのびのびと成長しているせいで、わがままだ。  それじゃあいけないと、先生はどうでもいい子を3人選んで、ハサミで彼らの個性を切り取った。彼らはロボットのように無機質になって、すんなり土台になった。  さて次、真ん中は社会に揉まれても丈夫で傷つかず、無機質な人材が欲しい。先生はちょうどいい2

    • 牧野エミの配信〜その後 『ふうふう』

       翌日の夕方に家に帰って来ると、母さんが台所でお雑煮を作っていました。 「お雑煮ってなんとなく正月だけ食べるイメージがあるけど、別に正月じゃなくても食べていいのよ。もっとその事実に気づくべきだよ、日本人は。ああ、そういえば今日の十九時からエミちゃんがインスタライブやるって」 「それ、蓮にも言われたよ」 「ああ、そうなの。みんな関心があるんだね。私、エミちゃんが何を言うのか気になるから、配信を見ようと思うの。夕飯はその後でいい?」 「構わないよ。じゃあ、僕は部屋にいるから」

      • 彼氏との会話 『ふうふう』

         僕はゲイです。自覚したのはかなり前(小学生だったはず)で、母さんに明かしたのも中学生の頃でした。 「母さん、僕ね、多分男が好きなんだよね」  母さんは一瞬眉をひそめましたが、「そうなんだあ」くらいの返事で、特に変な扱いをしたりしませんでした。少しの間、僕に気を遣っているような様子はありましたが、一緒に男性アイドルを推すなど、だんだんと話が通じ合う仲になっていき、今では何の壁もなくオープンに話せる間柄になりました。  父さんは早くに家を出たきり戻ってこないので話していま

        • 母との会話 『ふうふう』

          「って話だよ。あんた、本当に覚えていないの?」  僕が買ってきたジムビームハイボールを飲みながら、母さんはびっくりした顔で僕を見てきました。 「覚えているわけないだろう、そんな昔の話。五歳ってことは、もう二十年も前じゃないか。記憶なんかありゃしない」 「まあ、それもそうね。でも、インパクトのある話だから覚えていると思ったんだけどなあ」 「たしかにインパクトはあるけど、残念ながら全くだね。それで、なんで母さんがそれを知っているんだ?」  母さんは「それは、一部始終を先生か

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        没個性ピラミッド

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          あるハプニング 『ふうふう』

           これは僕が五歳の頃に経験した、ある『ハプニング』です。しかし、記憶が曖昧な部分は一部補正しています。あらかじめご了承ください。 「ゆうきくん、けっこんしよ!」  たくさんの園児が外で遊んでいる中で、僕は校舎内の部屋の中で三角形の積木をかじっていました。昔は何かをかじっていないといられなかった僕は、あらゆるものをかじっていました。  そんな僕を、他の園児たちは避けていた(妖怪にでも見えていたのかもしれませんね)のですが、一人だけ、僕の側にいてくれる女の子がいました。エミ

          あるハプニング 『ふうふう』

          みかん酒飲みながら独り語り。

           こんばんは、蒼乃真澄です。  六月。とはいえ、私の街はそれほど雨が降っていないですね。むしろ晴天に恵まれているといいますか、太陽が暴力をふるっているといいますか。もう少しすれば梅雨に突入するっぽいので、また違う景色を見ることができますね。前にも書いたような気がしますが、雨が降る音って好きなんですよね。まあ、雨の中出歩くのは嫌ですが。  最近、短編を二つ書き上げて、公募に投稿しました。仕事が忙しい中よくやったなと、我ながら思います。両者とも大体12000字程度ですが、だか

          みかん酒飲みながら独り語り。

          『ふくざつだなあ』 3 (小説)

          『夜分遅くに申し訳ございません。一ヶ月ほど前に一度お話しさせていただいた武田です。この度はミレイさんにお礼をしたいと思い、連絡しました。今度はさくらと二人でミレイさんとお会いしたいです。もしよろしければ、都合の良い日にちを教えていただけますか?』  私のところには相変わらず『会いたいです』とか、『胸のサイズいくつですか』とか、そんな猥褻臭いメッセージばかり届いていたけど、武田くんからのメッセージからは、まるでシトラスのような爽やかな香りがした。私はその匂いから彼の端正で穢れ

          『ふくざつだなあ』 3 (小説)

          『ふくざつだなあ』 2 (小説)

           土曜日午前十時、天候は晴れ。そんな渋谷は混み合っていて、ハチ公前も外国人観光客でいっぱいだった。ただ、武田と名乗った十七歳の彼は一目でわかるくらい清潔感があって、私がイメージしていた『白いシャツを着て、髪を短く切り揃えた青年』とぴったり合う姿だった。 「あの、武田くん?」  私が声をかけると、武田くんは緊張した面持ちのまま、 「あ、ミレイさんですか。こんにちは」  と言った。声も清純で、全く汚されていなかった。あまりにも想像通りだったから、私は思わず心の中で拍手をし

          『ふくざつだなあ』 2 (小説)

          『ふくざつだなあ』 1 (小説)

           『会いたいです』  最近、こんなのばっかり。どうせ私が女だからって、同じ趣味を通して繋がりたい、簡単に繋がれるんじゃね、とか思っちゃってるわけでしょう? 一言言わせてもらうけど、そんなわけないだろう馬鹿野郎。  私はアイドルグループである『龍神ガールズ』が好きなだけであって、龍神ガールズのファンは嫌い。シンプルにうるさいし、『龍神ガールズ』のことをまるで自分たちの私物みたいに扱うし。そんなだからドルオタが馬鹿にされるって、わかっていないところも嫌い。後、龍神ガールズを利

          『ふくざつだなあ』 1 (小説)

          『愚れノ群れ』感想

           こんばんは、蒼乃真澄です。  さて今回は、先日観劇した舞台『愚れノ群れ』について感想を書いていこうと思います。ネタバレなしでいきますので、よろしくお願いいたします。  今回は『シアター・サンモール』という劇場です。都営丸ノ内線新宿御苑前から徒歩三分くらいの場所にありました。  観劇する前に腹ごしらえということで、風情ある喫茶店に入りました。レトロですねえ。  ビーフカレー。コクがあって美味しかったです。ちょっと軽めでしたけど、観劇前ならちょうどいい量ですね。  そ

          『愚れノ群れ』感想

          『シーサイド・スーサイド』感想

           こんばんは、蒼乃真澄です。  さて今回は、先日観た舞台『シーサイド・スーサイド』の感想を書いていこうと思います。ネタバレなしなので伝わりづらいかもしれませんが、最後までお読みいただけると嬉しいです。  その前に、まず新宿にある紀伊國屋書店さんに向かいました。なかなか新宿に来る機会もなく、時間があれば行きたいと思っていた書店さんでした。結果的に二十分ほどしか滞在できませんでしたが、本の紹介ポップや本の配置などを見ると、圧倒的な熱量で本を売っていることが伝わってくる素晴らし

          『シーサイド・スーサイド』感想

          『曖昧、色々、雲散霧消』(創作詩集)

          曖昧、色々、雲散霧消    曖昧、色々、雲散霧消  ハイハイ、イロイロ、ハローハロー  最近の問題は多様性の暴走  色々な人々が 色々な価値観を口にする  それ自体はとても良いことかもしれない  だけど あまりにも線引きが曖昧過ぎる  誰かにとっての正義は  誰かにとっての悲劇  たとえ自分が正しいと信じても  それがすべてではないってこと  多様性を主張するってことは  それぞれの価値観を認め合うこと  しかし現状はぶつかりあって  互いに傷つけ合っている感じ

          『曖昧、色々、雲散霧消』(創作詩集)

          黒たまご見ながら独り語り。

           偽りの殻を破り、素直に面白いと思えるものを書く。紛い物な善を描くよりも、正面から悪を書いた方が身に合っている。自分は優しい人間でも、正義感がある人間でもない。誰かを癒したり、慰めたりできるものを書くことは難しい。ただ、誰かの心に小さなかけらを残すことはできる。それが心地よいものなのか、それとも喉に突っかかった小骨になるのか、それは人次第。それでもいい。どんな形であれ、記憶に残ってくれればそれでいい。「ああ、よかった」もいい。ただそれ以上に「なんだろう、これ。忘れられないなあ

          黒たまご見ながら独り語り。

          パンケーキに塩を振る(小説)

          「山ちゃんは甘党だね」  大学の食堂でショコラパンを食べていた俺に、同じ文学部の宮田エミがニヤケながら言った。 「まあ、甘いのは必須だな。なんというか、アイデンティティなんだろうな 」 「甘いものが?」 「そう。男にしては珍しいだろうけど」    俺の陣地にはショコラパンだけではなく、加糖の缶コーヒーも置かれている。『甘い』を掛け算しているようで、客観的には病気にならないか心配されるレベルだが、山ちゃんは甘党だから仕方がない。 「でも、私のラーメン好きも珍しいよ」 「た

          パンケーキに塩を振る(小説)

          沈黙の赤ワイン(小説)

          「結婚してほしい」  僕がこの言葉を放つのは、これで三回目だった。一度目は横浜の海が一望できるフレンチレストラン、二度目は東京タワーが見えるイタリアンレストラン、そして三度目の今回は、浅草にある老舗の洋食レストランだった。二度目までが非現実的な場所だったから、今回はあえて手ごろな場所にした。  しかし、彼女は場所など関係なく、「ごめんね」と言って赤ワインを飲んだ。 「どうしてダメなの?」  僕はどうしても諦めきれなかった。彼女と付き合って三年が経つが、これまで彼女とは

          沈黙の赤ワイン(小説)

          君がいる夏 (ミスチルが聴こえる)

             僕の好きな夏が終わってしまった。同時に、学校が始まってしまった。夕暮れも悲しくなる季節が来る。海を見ても虚しくなる季節が来る。冷たい風が吹き、寒くなるこれからが、僕は嫌いだ。 「何聴いてるの?」  放課後。君はイヤホンをした僕の肩を叩いて、訊く。 「言っても知らないよ、君は」  それでも君は僕を離さない。 「いいじゃん、教えてよ」  小さな子供みたいにせがむ君。仕方なく、僕は教える。 「『君がいた夏』」 「『君がいた夏』? 誰の曲?」 「Mr.Child

          君がいる夏 (ミスチルが聴こえる)