蒼乃真澄

26歳。三郷の執筆屋。小説、詩、エッセイ、随筆、ブログ、散歩録、語り、駄弁り、寸劇など…

蒼乃真澄

26歳。三郷の執筆屋。小説、詩、エッセイ、随筆、ブログ、散歩録、語り、駄弁り、寸劇などなど。  だいたい月〜金曜日の20時に更新します。

マガジン

  • アオマスの独り言

    蒼日向真澄の個人的な想いを連ねていきます。読んでいただけると幸いです。

  • アオマスの小説

    どんな一面にも些細な物語が存在する。それを上手に掬って、鮮明に描いていく。文士を目指す蒼日向真澄によって紡がれる短編集です。

  • ミスチルが聴こえる(短編小説)

    Mr.Childrenの曲を聴いて浮かんだ小説を創作します。 ※歌詞の世界観をそのまま小説にするわけではありません。

  • アオマスのエッセイ

    日常の出来事を言葉にするには、簡単なようでややこしい。だが、美しい。

  • アオマスの詩集

    フワフワと頭に浮かんでいる言葉たちを一本の糸にするように紡いでいき、詩にしてみました。様々な感情に揺さぶられながら、それでも言葉にしてみたい愛や希望などを詩にできたらと考えています。  読んでいただけると幸いです。

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パンケーキに塩を振る(小説)

「山ちゃんは甘党だね」  大学の食堂でショコラパンを食べていた俺に、同じ文学部の宮田エミがニヤケながら言った。 「まあ、甘いのは必須だな。なんというか、アイデン…

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沈黙の赤ワイン(小説)

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 私には、日向は眩しい。  元々小説家を目指したとき、私は『蒼乃真澄』をペンネームにして書き始めました。それからしばらくして、より運気が高いという『蒼日向真澄』…

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池袋にて、一人語り。

 皆さんこんばんは、蒼日向真澄です。  最近は忙しく、いや、ただ怠惰なだけかもしれませんが、noteの更新が滞っています。  実は今、それほど書きたいという気持ちが…

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 みなさまこんばんは、蒼日向真澄です。久々の投稿です。  今回の舞台は池袋。最近、訪れる機会が増えつつある街です。  前回はジュンク堂書店を訪れましたが、今回は…

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1か月前
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墓、桜、月、それから猫 『春の歌』

 四月十日は祖母の命日。だから毎年、その近くになると墓参りへ行く。  墓というのは鳥の囀りが響き渡るほど静かで、蝶が気になるほど気配がない。  だからこそ、訪れに…

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1か月前
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アマテラス、日向ぼっこ 『春の歌』

日向ぼっこする休憩中 宙ぶらりんな思考回路だが 桃色の風が吹くなら どうでもいい、どうでもいいんだ ひとりぼっち鬱辛いです 新入生の哀れな言葉には 明け方の陽が効く…

蒼乃真澄
1か月前
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同級生 『春の歌』

ガラガラとスライド式のドアを開ける。 綺麗に区画整理された机たち。 ピカピカにされた黒板。 窓は、開いている。 僕は指定された席に座る。 わずかばかり居る生徒たち。…

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食べ記録(3月)

三月も色々食べました。 ・サンマルク サンマルクはお手頃価格な上に雰囲気も好きで、よく利用しています。この日はお昼ご飯も兼ねていたため、チョコクロとウインナーパ…

蒼乃真澄
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『犬みたいな名前の食べ物』(ショートショート)

 ガラパコス携帯に、一通のメールが来た。 『今日バイトサボったから。これからそっち行く!』    彼は中華屋で調理のバイトをしていて、いつも脂ぎった床を踏みしめて…

蒼乃真澄
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つくばにて。

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蒼乃真澄
2か月前
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パンケーキに塩を振る(小説)

パンケーキに塩を振る(小説)

「山ちゃんは甘党だね」

 大学の食堂でショコラパンを食べていた俺に、同じ文学部の宮田エミがニヤケながら言った。

「まあ、甘いのは必須だな。なんというか、アイデンティティなんだろうな 」
「甘いものが?」
「そう。男にしては珍しいだろうけど」
 
 俺の陣地にはショコラパンだけではなく、加糖の缶コーヒーも置かれている。『甘い』を掛け算しているようで、客観的には病気にならないか心配されるレベルだが

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黒たまご見ながら独り語り。

黒たまご見ながら独り語り。

 偽りの殻を破り、素直に面白いと思えるものを書く。紛い物な善を描くよりも、正面から悪を書いた方が身に合っている。自分は優しい人間でも、正義感がある人間でもない。誰かを癒したり、慰めたりできるものを書くことは難しい。ただ、誰かの心に小さなかけらを残すことはできる。それが心地よいものなのか、それとも喉に突っかかった小骨になるのか、それは人次第。それでもいい。どんな形であれ、記憶に残ってくれればそれでい

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沈黙の赤ワイン(小説)

沈黙の赤ワイン(小説)

「結婚してほしい」

 僕がこの言葉を放つのは、これで三回目だった。一度目は横浜の海が一望できるフレンチレストラン、二度目は東京タワーが見えるイタリアンレストラン、そして三度目の今回は、浅草にある老舗の洋食レストランだった。二度目までが非現実的な場所だったから、今回はあえて手ごろな場所にした。

 しかし、彼女は場所など関係なく、「ごめんね」と言って赤ワインを飲んだ。

「どうしてダメなの?」

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君がいる夏 (ミスチルが聴こえる)

君がいる夏 (ミスチルが聴こえる)

 

 僕の好きな夏が終わってしまった。同時に、学校が始まってしまった。夕暮れも悲しくなる季節が来る。海を見ても虚しくなる季節が来る。冷たい風が吹き、寒くなるこれからが、僕は嫌いだ。

「何聴いてるの?」

 放課後。君はイヤホンをした僕の肩を叩いて、訊く。

「言っても知らないよ、君は」

 それでも君は僕を離さない。

「いいじゃん、教えてよ」

 小さな子供みたいにせがむ君。仕方なく、僕は教

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『4年前の輝き』

『4年前の輝き』

 かつての俺は、普通という栄光を掴むべく大学に入り、安定という幸福を手に入れるために新卒で就職した。

 しかしこの世は、誰もが普通と安定を獲得できるわけではない。

 かつての俺は、真面目で何の個性もない男だった。つまらない、平凡な、だけど普通と安定を欲しがった男。

 だからこそ、俺は道を踏み外すべきではなかった。とはいえ、たとえば俺は最中くらい脆いやつだから、崖から落ちてあっという間に粉と化

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原点回帰

原点回帰

 私には、日向は眩しい。

 元々小説家を目指したとき、私は『蒼乃真澄』をペンネームにして書き始めました。それからしばらくして、より運気が高いという『蒼日向真澄』に変えました。それがちょうど二年半前のことです。

 しかし、二年半も使っていたとはいえ、どうもしっくりこない。それに、私には『日向』という文字が妙に眩しく感じるのです。2021年11月8日時点では、より明るく生きようと思い改名しましたが

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何処へ行く?(ショートショート)

何処へ行く?(ショートショート)

 この車、何処へ行く?
 行き先は、不明。
 しかしどうして行き先が不明なのかさえ、不明。
 外観が見えれば良かったけれど、窓の外は何故だかブラックアウトしている。だからここが都会なのか、田舎なのか、それすらもわからない。
 もっと言えば、僕は助手席に座っているのだが、運転手がいない。しかしアクセルは踏まれていて、ハンドルは動いている。これはあれか、幽霊の仕業だろうか。

 この車、何処へ行く?

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それだけで、青春でした。

それだけで、青春でした。

 

 喉が渇いた。君は百十円で苺ミルクを買う。
 新聞部がスクープ探して駆け抜けていく。
 吹奏楽部の情熱音色をBGMに帰宅するあいつ。
 僕はもう、スーツを着てしまった大人。

 陸上部が走る。なぜか演劇部も走る。
 サッカー部が蹴る。バレー部は空を仰ぐ。
 科学部がネモフィラを探して散歩する。
 君はまだ、制服を着た子供。

 入道雲を目指して自転車を漕いだり、
 帰りにガリガリ君を買って食

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池袋にて、一人語り。

池袋にて、一人語り。

 皆さんこんばんは、蒼日向真澄です。

 最近は忙しく、いや、ただ怠惰なだけかもしれませんが、noteの更新が滞っています。

 実は今、それほど書きたいという気持ちがないというのが本音です。現実が充実していて、気持ちが鬱屈しているわけでもないから、文章にして吐き出す必要がないといいますか。それは精神的に安定していることを意味するわけですからハッピーかもしれませんが、文章を書くことで生きがいを得て

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池袋にて、ホルモー。

池袋にて、ホルモー。

 みなさまこんばんは、蒼日向真澄です。久々の投稿です。

 今回の舞台は池袋。最近、訪れる機会が増えつつある街です。

 前回はジュンク堂書店を訪れましたが、今回は池袋駅にある三省堂書店へ。本屋大賞発表後ともあって、店先にはノミネート作品が並んでいました。いつか、私の作品が置かれていたらいいですね。

 今回は気になっていた恩田陸さんの『灰の劇場』を購入しました。読むのが楽しみです。

 

 ち

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墓、桜、月、それから猫 『春の歌』

墓、桜、月、それから猫 『春の歌』

 四月十日は祖母の命日。だから毎年、その近くになると墓参りへ行く。
 墓というのは鳥の囀りが響き渡るほど静かで、蝶が気になるほど気配がない。
 だからこそ、訪れに気づく。
 わずかな耳鳴り。それからすぐに、一匹の猫が僕の足に寄る。
 そうか、今年は猫の姿で来てくれたのか。
 僕は祖母が眠る墓に手を合わせ、線香の煙を纏って消える。

 今年は桜が長い気がする。開花が遅いだけだろうか。
 桜の木をじっ

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アマテラス、日向ぼっこ 『春の歌』

アマテラス、日向ぼっこ 『春の歌』

日向ぼっこする休憩中
宙ぶらりんな思考回路だが
桃色の風が吹くなら
どうでもいい、どうでもいいんだ

ひとりぼっち鬱辛いです
新入生の哀れな言葉には
明け方の陽が効くから
大丈夫、大丈夫だから

長続きする必要はないよ
人生とはいえ気軽に進もう
桜を憂う気持ちもわかるよ
それでもね、気楽に生きよう

日向ぼっこするアマテラス
ルンルンルンなプラス思考で
金色の稲穂を待つから
なんとかなる、なんとか

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同級生 『春の歌』

同級生 『春の歌』

ガラガラとスライド式のドアを開ける。
綺麗に区画整理された机たち。
ピカピカにされた黒板。
窓は、開いている。

僕は指定された席に座る。
わずかばかり居る生徒たち。
それから続々と来る生徒たち。
彼らとは、これから同級生になる。

話しかけようか、しばし迷う。
しかし吃る癖があるから避けたい。
読書でもして壁を作ろうか。
そんなとき、隣の人が声をかけてきた。

「おはよう」
僕も返す。
「おはよ

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食べ記録(3月)

食べ記録(3月)

三月も色々食べました。

・サンマルク サンマルクはお手頃価格な上に雰囲気も好きで、よく利用しています。この日はお昼ご飯も兼ねていたため、チョコクロとウインナーパンを購入。チョコクロ、好きなんですよね。コーヒーも変な癖が無くて美味しいです。

・ちゃんぽん あんまり脂っこいラーメンだとお腹を壊すので、ちゃんぽんを食べます。この日は北海道のアンテナショップで買ったガラナサワーを一緒に。なんというか、

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『犬みたいな名前の食べ物』(ショートショート)

『犬みたいな名前の食べ物』(ショートショート)

 ガラパコス携帯に、一通のメールが来た。

『今日バイトサボったから。これからそっち行く!』
 
 彼は中華屋で調理のバイトをしていて、いつも脂ぎった床を踏みしめて、ほっぺがぼうっと火照るほどの熱さの中でフライパンを振っている。
 
 そんな彼が、バイトをサボる。きっと「熱が出た」なんて嘘でもついて。
 
 二〇分後、彼が私の元へやってきた。

「悪いな、待たせた」
「待たせたって、ここ私の家だけ

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つくばにて。

つくばにて。

 随分と遠回りしたが、元の場所に戻ってきた。そんな気がする。

 思い返せば、俺はほんとに不器用で、どうしようもない人生を送ってしまった。それでも、死ぬことはしなかった。それだけは褒めてほしい。

 これからは、惑わされることもなければ、期待することもないだろう。それでいい。これからはとことん内側にいる自分と向き合うだけだ。

 それにしても、ここは空気が美味い。東京よりも、ずっと美味い。そんな気

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