見出し画像

ちくちく、チクタク。

一昨日。
数日前に購入したワイドパンツの丈を
母に習いながら、数センチ上げた。

糸の通った針を生地に
ちくちく、ちくちく。

時計の針は
チクタク、チクタク。

指先だけに集中し、無心になれるのはとても久しぶりの感覚で、なかなかいい時間だった。


ちくちく。チクタク。


細かくて、繊細な作業。
ここに引っ掛けて、ここに通して…

ちくちく、ちくちく。
チクタク、チクタク。

同じ幅を保って、引っ張りすぎないように…

ちくちく、ちくちく。
チクタク、チクタク。



…ふう。終わった。

「わたし今、集中していた。完全に無心だった」

その時の、集中力と、満足感。
これが病みつきになった。


童心へ。


小学生の頃。
夏休みなどの長い休みに入ると、「一研究・一作品」という課題が出された。

何か一つ。
研究したものをまとめるか
作品を作るか。

私はいつも手芸屋さんへ行き、自分が「いいな、作りたいな」と思ったキットや雑誌を見つけては、手芸で作品を作っていた。

プラスチックで作る可愛らしいデザインのバッグ
布ぞうり
フェルト小物
ミニチュアハウス
万華鏡
ビーズで作る風鈴

…など。

中でもビーズとフェルト小物は、夏休みが終わってもしばらく自分の中で流行ったものであり、
ビーズでブレスレットなどの簡単なアクセサリーを作ったり、
余った生地を見つけては、お守りなどを作ったりしていた。

どれも非常に安っぽくて、不格好で。
決して誰かにプレゼントできるような代物ではなかったけれど
自分のオリジナルの作品はどれも、自分が身につける分には好きだった。
そして
完成したものと同じくらい
「完成した」という満足感がたまらなく嬉しくて、何度でも味わいたくて、作っていたように思う。


細かい作業と
指先以外のことを全て忘れられる時間と
完成後の喜び。

その時の気持ちが久しぶりに、蘇ってきた。


刺繍キットに学ぶ午後


そして昨日。

久々に手芸に取り憑かれた私は
手芸屋さんへ行き、手軽にできそうなキットを購入した。

ずっと前からやりたかった、刺繍
そして、最近読んだ青山美智子さんの小説『お探し物は図書室まで』に登場し、
再び興味を持った羊毛フェルト


今日は休日だったので、刺繍のキットに取り組んだ。

色々な植物のモチーフがあって
少しずつステッチの方法が異なっていて

シンプルだけれど、いい練習になる。そんな初心者用のキットだ。

まだ完成には程遠いけれど
今日はとりあえず一つの“花”が完成し、色々なステッチの方法を学んだ。

そして何よりも。

…やはり楽しい。

集中していると、気持ちも安定してくるような気がするし
地味で、本当に少しずつではあるけれど、着実に完成に近づく。

近くで拡大してちくちくと縫ってきたものを、少し離れて見たときに、
「こんなにできてたのか」と自分で感動する。


この刺繍に慣れてきたら
今度は無地の洋服を買って、自分の好きな刺繍をデザインしてみようかな…などと夢が膨らんだ今日である。

元々刺繍の入ったワンピースやブラウスが好きだけれど
「この位置にあったらいいのにな」とか
「このデザインはちょっと違うな」と思うことがあったため

ズボンの丈上げと同様、
自分で刺繍を施すことができたら

それは自分にとっては割と大きな、喜ばしい能力だと思う。


正直、手芸に取り組みたい気持ちはずっとあったけれど
「これを作ってどうするのだろう」
という思いがどこかにあった。

編み物にしても
「手袋やマフラーは今もう持っているし。」だとか

フェルト小物にしても
「これ作ってどこに飾ろう。欲しい人もいないだろうし。」

などと考え、なかなか大人になってから取り組む機会がなかったけれど

…そうではなかった。

今の私は、取り組むことに意味があるのだった。

完成したものをどうするのかではなく

充実した時間を過ごすため
達成感を味わうため
集中して、無心で過ごす、穏やかな時間のため…

“実用性”よりも、“満足感”のため。



チクタク、チクタクと、時計が時を刻む中。

ちくちく、ちくちく、地道な作業に勤しんだ。


…今度は羊毛フェルトに挑戦だ。



2024.1.22

この記事が参加している募集

おうち時間を工夫で楽しく

今日やったこと

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?