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「組織開発」が先か「人材開発」が先か

組織開発の取り組みを進めていくと、心理的安全性が高まったけど「その先どうする?」という問題に加えて、心理的安全性という言葉を盾にして、自分の成長にあまりコミットしないメンバーがいる(要はチーム云々の前提としてまずは「個々の成長でしょ」)という意見をもらうことがあります。

鶏タマゴ的な側面はないことはないと思うのですが、ここはまさに、組織開発と人材開発は両輪なんです、という結論(というか信念)で私は組織開発を進めています。もちろん、時にはその順番も含めて、どちらかに寄ることはあると思いますし、あってもいいとも思うのですが、じゃあどっちが大事とか、どっちかだけみたいな単純な話ではないことは、組織開発に携わるものとしては、何とか伝えようと心がけています。

私自身のnote記事でも何度か書いてきたのですが、「心理的安全性」の捉え方がどうしても「仲良しチームを作る」と誤解されてしまいがちなのは、もう「あるある」を通り越した域に来ている必ず通る「通り道」みたいなものになってきました。(ここでは詳細省きます)

私の大好きなサッカーにおいても、日本サッカーの特徴として「日本は組織としては優れているが、「個のチカラ」が足りない」という意見もよく聞きます。後半部分はまさにその通りだと私も思うのですが、サッカー先進国の話をこれまで色々見聞きしてきた印象としては、組織として機能する、ということの捉え方にも、サッカー先進国とはかなりギャップがあるなあとも思います。
単に与えられた役割を全うする(逆に言うとそれ以外のことにはあまり関わらない)というスタンスなのか、時に相手が誰であろうと、チームの目的達成のためには、自分の役割を超えてでも言いたいことは言う、そして実行する、というスタンスなのか、これには「自律」というキーワードとも密接に関係している仕事への向き合い方です。(おまけに日本人は議論下手、喧嘩下手だとも言われています)

あくまでも個を活かすための組織であって、決して他人に気を遣って個を我慢することではないことは、皆さん十分理解しているものの、実際のリアルな場ではなかなか難しい振る舞いになるのだと思います。確かに関係性が良くなればなるほど、その関係を壊すことには誰だって消極的になりますし、そのためにはそれまで以上に気を遣った発言や、本音を言いづらい雰囲気になる、ということは私自身もよくあります。
これに関して、ちょうどタイムリーな記事を読みました。

心理的安全性の捉え方の違い

人材開発の国際的な組織であるATD(The Associaton for Talent Development)が発行している「Sustain_High_Performance_With_Psychological_Safety」という記事の中で、個々人が感じる心理的安全性の要素が国(文化)によって違う、ということが紹介されていました。
その要素というのが、「C」から始まる以下4つです。

1.Capability(ケーパビリティ≒能力)・・・同僚の能力、知識、スキル
2.Consistency(一貫性)・・・コミットメントする際の同僚の信頼性
3.Caring(思いやり)・・・暖かさ/感情的な支援がベースにある同僚との関係
4.Candor(率直さ)・・・正直で安心できるコミュニケーション

アメリカ、イギリス、ドイツ、オランダ等は、1と2を、日本、中国、インド、ブラジル、タイ等は3.4が、その要素とのことで、一部意外?な国もなくはないですが、個がベースなのか、所属組織/コミュニティがベースなのか、という違いがここでも明確に分かれていて、非常に興味深い記事でした。
これは国別の傾向ですが、日本の中、組織の中にも、まさにこうした感覚が違う、ということは理解しておいた方がよさそうだなと、この記事を読んで再認識をしました。

まさに、one for all, all for one

そもそも、成果に対して日本よりもシビアと言われているアメリカ企業が、心理的安全性という、面倒くさい概念をなぜわざわざ持ち出しているのか、ということを考えると、その本質も見えてくるのではないかと思います。
彼らは成果を出すために必要だからやっているだけで、目的と手段をしっかり認識している、ということなんですね。それは裏を返せば、「心理的安全性」を実現するということは、結構タフな取り組みだということも推進する側としては正しく理解しておくべき重要なポイントです。

まあ概念的には理解できるものの、様々な文化や価値観が交じり合う実際の職場、半径数メートル以内でこうしたことを実践できるか、ということにこのテーマの難しさ、本質があるのだと思います。
まだまだ組織開発のチャレンジは続きます。

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