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buku連載エッセイ「出張いまいまさこカフェ」

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2006年9月から4年にわたって池袋シネマ振興会の季刊フリーペーパー「buku」に連載していたエッセイまとめ。clubhouseでの朗読はお好きなときにどうぞ。
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#エッセイ

脚本家は人恋しがり屋(出張いまいまさこカフェ15杯目)

脚本家は人恋しがり屋(出張いまいまさこカフェ15杯目)

2006年9月から5年にわたって季刊フリーペーパー「buku」に連載していたエッセイ「出張いまいまさこカフェ」の15杯目。

「脚本家は人恋しがり屋」今井雅子ほんの数か月前まで、「脚本家ってどこで会えるの?」がわたしの疑問だった。デビューして10年経つというのに、いっこうに脚本家の知り合いが増えない。両手の指で数えられる仲間の大半は、審査を務めた脚本コンクールの受賞者だった。

所属しているシナリ

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原作者のキモチ(出張いまいまさこカフェ14杯目)

原作者のキモチ(出張いまいまさこカフェ14杯目)

2006年9月から5年にわたって季刊フリーペーパー「buku」に連載していたエッセイ「出張いまいまさこカフェ」の14杯目。

「原作者のキモチ」今井雅子わたしの今年のクリスマスは、夏の終わりから始まった。クリスマスに結び直される家族の絆を描いた短編小説をという依頼を受け、秋の半分をかけて書き上げる間、頭の中でジングルベルが鳴り続けていた。

本業は脚本家だから、小説の仕事はめったに来ない。脚本を手

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母と子と映画(出張いまいまさこカフェ13杯目)

母と子と映画(出張いまいまさこカフェ13杯目)

2006年9月から5年にわたって季刊フリーペーパー「buku」に連載していたエッセイ「出張いまいまさこカフェ」の13杯目。

「母と子と映画」今井雅子3年ぶり6本目の劇場映画『ぼくとママの黄色い自転車』の公開中にこの原稿を書いている。出産と育児に企画立ち消えが重なり、3年のブランクが空いてしまった。「お子さんが産まれて最初の映画が母と子の話でしたね」と人に言われて、産後第一作だったと意識した。

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映画鑑賞で相性診断(出張いまいまさこカフェ12杯目)

映画鑑賞で相性診断(出張いまいまさこカフェ12杯目)

2006年9月から5年にわたって季刊フリーペーパー「buku」に連載していたエッセイ「出張いまいまさこカフェ」の12杯目。

「映画鑑賞で相性診断」今井雅子前回に続いて、毎日映画コンクールのスタッフ部門2次選考会の模様をご報告。会議が開かれたのは、この原稿を書いている5月中旬から4か月さかのぼる1月初旬。今年はいつもの年の3倍ほど仕事をしているので、わたしの体内時計では1年が経過しているのだが、メ

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脚本はもう一人のわたし(出張いまいまさこカフェ10杯目)

脚本はもう一人のわたし(出張いまいまさこカフェ10杯目)

2006年9月から5年にわたって池袋シネマ振興会の季刊フリーペーパー「buku」に連載していたエッセイ「出張いまいまさこカフェ」の10杯目。特集インタビューは成宮寛貴さん(『ララピポ』)、光石富士朗監督(『大阪ハムレット』)。

今回は当時のプロフィールも掲載。

「脚本はもう一人のわたし」今井雅子著作者人格権という言葉をご存知だろうか。恥ずかしながら、わたしが知ったのは、自分が交わす脚本契約書に

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企画という恋がおわるとき(出張いまいまさこカフェ8杯目)

企画という恋がおわるとき(出張いまいまさこカフェ8杯目)

2006年9月から5年にわたって季刊フリーペーパー「buku」に連載していたエッセイ「出張いまいまさこカフェ」の8杯目。表紙は阿部力さん。「テレビで中国語」に出演されていたときに観ていたので、阿部力の3文字をアーブーリーと読んでしまう。

《鴻上尚史さんの書かれた舞台『恋愛戯曲』に「恋のはじまりには、理由はない。だけど、恋の終わりには理由がある」という名台詞があるが、企画という恋も情熱にまかせて走

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脚本で食べていく(出張いまいまさこカフェ6杯目)

脚本で食べていく(出張いまいまさこカフェ6杯目)

2006年9月から5年にわたって池袋シネマ振興会の季刊フリーペーパー「buku」に連載していたエッセイ「出張いまいまさこカフェ」の6杯目。特集は神木隆之介さん(表紙も)と吉野紗香さん。

「脚本で食べていく」今井雅子「脚本で食っていけますか」。脚本家をめざしているという見知らぬ相手からの不躾なメールに面食らったことがある。当時まだ会社勤めと二足の草鞋を履いていたわたしの脚本家としての収入は給料の5

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口説いたり口説かれたり(出張いまいまさこカフェ5杯目)

口説いたり口説かれたり(出張いまいまさこカフェ5杯目)

2006年9月から5年にわたって季刊フリーペーパー「buku」に連載していたエッセイ「出張いまいまさこカフェ」の5杯目。表紙は小栗旬さん。

「口説いたり口説かれたり」今井雅子脚本を書くようになって、口説かれることが増えた。花形職業でモテモテ……なのではなく、「これを書けるのは今井雅子しかいない!」と口八丁のプロデューサーに声をかけられるのである。わたししかいない割には「二週間で初稿を上げてくれ」

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運命のロケ地はピンク色(出張いまいまさこカフェ4杯目)

運命のロケ地はピンク色(出張いまいまさこカフェ4杯目)

2006年9月から5年にわたって季刊フリーペーパー「buku」に連載していたエッセイ「出張いまいまさこカフェ」の4杯目。表紙は阿部サダヲさん。

「運命のロケ地はピンク色」今井雅子前号に続いてロケハン(ロケーションハンティング)の話。

そのピンクのハイカラな洋風建築に出会ったのは、友人の結婚式ついでに函館の街をうろついていたときのこと。「この辺にタイショウユがあるはずなんだけど」と元気のいいおば

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脚本家は「つなげる」のが仕事(出張いまいまさこカフェ1杯目)

脚本家は「つなげる」のが仕事(出張いまいまさこカフェ1杯目)

2006年9月から5年にわたって「buku」という季刊フリーペーパーにエッセイを連載していた。

タイトルは「出張いまいまさこカフェ」。

bukuは池袋にある8つの映画館(当時)で作る「池袋シネマ振興会」が発行していた。毎月29日はbukuを持って行くと映画を1000円で観られる「buku割」があった。

「読みました」と声をかけられることが多く、発行部数に対して愛読者がとても多かったのではと思

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