マガジンのカバー画像

リリとロロ

20
リリ・シャロンという自由について。
運営しているクリエイター

2023年10月の記事一覧

リリとロロ 「匂いのゆくえ」について

リリとロロ 「匂いのゆくえ」について

この作品は「羽化」と同時進行で書き始めたが、再考に再考を重ね、難航したためこのタイミングでの投稿になった。

結果、かなりコンパクトになった。

長々と苦悶について綴るための作品でもなければ、誰かの参考書になるための道筋を遠回りして辿る作品でもないと思っていた。

ましてや形而的な作品なんて、リリとロロのテーマにそぐわない。

短絡的に言うと少年誌のように「オレたちの闘いはまだ始まったばかりだ!」

もっとみる
リリとロロ 「匂いのゆくえ」 ⑤

リリとロロ 「匂いのゆくえ」 ⑤

完結

以前までは
「おひさまの香り?太陽に匂いはないでしょ」
と思っていた。

違う。

匂いは感情だ。

彼女は色々な知識を分け与えてくれた。

私の悩みの解決の糸口を見つけ出してくれたのは彼女だった。

音楽も本も文化的側面を持つ芸術が、音や文字を介して共感覚のように伝わるのも、そこに感情があるからだ。

調香は世間的に見れば、文学でも芸術でもないかもしれない。

冷たく言えば化学の括りなの

もっとみる
リリとロロ 「匂いのゆくえ」 ④

リリとロロ 「匂いのゆくえ」 ④

きれいな話。

彼女と出会ったのは高校の頃だった。

共通の話題は特にないがどこか居心地が良く、昼食を共にすることが多かった。

彼女の好きな音楽の話。

私の好きな本の話。

互いの好きについて気兼ねなく話し合える仲だった。

ちょうど読み終えた「音楽の海岸」。

きっと彼女は気に入ってくれるだろう。

そう思い家に招いたとき、彼女は目的のそれよりも本棚の上のアロマオイルに興味を表していた。

もっとみる
リリとロロ 「匂いのゆくえ」 ③

リリとロロ 「匂いのゆくえ」 ③

くすぶる

私自身だけが自分の匂いをこうも嫌うのか。

皆は自分の放つ臭気について如何に思い、日々を過ごすのだろうか。

また、私の匂いをどう感じているのだろうか。

その目尻に皺の寄った顔の裏側には、

授業中私の背後にあるはずの真剣な眼差しの裏側には、

体育で仲間と笑い合いながら眉に乗った汗を拭うその裏側には、

一体どれくらいの悩みが隠れているのだろうか。

そしてどれくらい私の匂いを気に

もっとみる
リリとロロ 「匂いのゆくえ」②

リリとロロ 「匂いのゆくえ」②

みんなコンプレックスってあるよね。

時が経つにつれ、自分にも匂いがあり、その匂いを嫌うようになった。

生きていくうちに知っていった。

好きな人は私の好きな香りを持っていること。

友人の家で初めて友人の「生活の匂い」を感じること。

匂いはその人の新たな一面となり得る。

フェロモンというものは無臭らしいが、固有の匂いというのは掻き消せない奥底に留まったまま、皮脂や汗を介して排出される。

もっとみる
リリとロロ 「匂いのゆくえ」 ①

リリとロロ 「匂いのゆくえ」 ①

調香のロロ

マドレーヌを紅茶に浸したことがあるだろうか。

「プルースト効果」というものらしい。

本を好んで読まない私がこの言葉を知ったのは、とある本の虫から教わった20代の頃だった。

今でも不思議と鮮明に覚えている。

グラタンの美味しい地元の喫茶店。

螺旋階段を上った二階の角の席で、彼女はソニック・エティックや村上龍の話をしてくれた。

「どこかへ消えてしまいたい気持ちと同時に、どこで

もっとみる
リリとロロ なかがき

リリとロロ なかがき

「まえがき」と「あとがき」があるんだから、「なかがき」もあるでしょうよ、そりゃあ。

別にここがちょうど中間地点になるというわけではなく、「羽化」「サブリナロマンス」「アザンの森」と書き終えて、キリが良いから書いてみた。

先にあぐら女(Low-key dub infection)でのセルフカバーをして知られていたせいもあってか、何故か人気の「アッシュ」というリリ・シャロンの曲。
前回のスタジオデ

もっとみる