Drive!! #39 ボート X 小説
ここからインカレまでは主力の3人以外の5人の伸びが鍵を握っている。
その中のひとりである井上は、先ほどからオールが少し潜りすぎている感じだった。オールをきちんと水に入れてから漕ぐ意識は大切だが、少しエントリーに力が入っているように見える。
「井上、ちょっといいか?」
井上は普段から無口で、艇の上でもあまり言葉を発しない男だった。今も大きな声で返事はせず、前髪が目にかかる頭を縦に振っている。
「エントリーの姿勢とってごらん。そうそう、一番前のポジション」
無愛想だが、感情表現