『Drive!!』(ボート x 小説)
もういいって。放棄する気持ちとは矛盾して鐘の音が鳴る。
嫌味なくらい機械的な音がひとつだけ。なんか工場で商品が出荷されるときみたいじゃないか。高校生のランナーが5000mのラスト一周に向かおうとしているって言うのに。もうすこし人間味のある音は出せないものか。先頭集団が通過したときには、抽選で一等が出たみたいに派手に何度も音を鳴らしてたくせに。それにしても呼吸がきつい。顎を上げると、灰色の雲が無愛想な観客のように陸上競技場を見下ろしていた。太陽の位置がわかるくらいに薄いこの雲が