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Drive!! #43 ボート X 小説

川田は頭の中で、残り時間で実行可能な一番有効なメニューを素早く計画した。
***
まずはさっきと同じインターバル。でもレートはコンスタントだけじゃなくて、中レートも入れてランダムで指定する。俺の狙いが上手くいけば、そこで橋本の普段目立たない真価があらわになるだろう。

そして最後は500mの全力のタイムトライアルをやらせよう。
途中で絶対レートが落ちてくる。そこで気づきがあるはずだ。
”どういう時に、後ろからの援護がほしいか”
橋本と辰巳には、今まで以上に自発的な漕ぎができる4番、3番のコンビに成長して欲しい。

決められたインターバルの練習メニューは終わった。でも追加であれこれ試すことにみんな意義を申し立てない。本当にありがたい。
自分が下級生だった頃は先輩に怒鳴られたこともあったな。勝つためにやってるんじゃねえのかよって、イライラしてたな毎日。まあ、俺の信頼度が低いせいもあるんだけど。

でも今は違う。みんな貪欲だし、練習を楽しんでいる。
勝てるクルーの雰囲気になってきている気がする。
今年こそ今までできなかった日本一に届くかもしれない。

「よし、じゃあまずインターバルからやるけど、レートはバラバラだからね。」
「まじですか。大丈夫かな、俺がストロークで」
橋本が弱音を吐いている。でも不安なのも今だけだ。いつも通り漕いでくれ。そしてお前の凄さをみんなにもお披露目しよう。
「レート28でいこう、さあいこう」
さっきまで36〜38のハイレートで漕いでいたので、後ろの漕手は動きが必要以上にせかせかしていて、突っ込みがちになっている。

橋本の真価が現れはじめた。

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