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写真を使っていただいたnote

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みんなのフォトギャラリーのヘッダ等、写真を使っていただいたnoteをまとめたマガジンです。※記事ヘッダ用の写真はトリミングして利用したものはマガジンに含めていない場合もあります。
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#小説

童話「子守歌」㉑

 「そんなの、わたしもいやだわ、もし自分が乱暴なことされたらいやだもの。」  女子のひとりがそう言った。  「それはもちろんそうなんだけど…ちょっと待って。人への乱暴と、乱暴なあそび方についての話がごっちゃになってない?ぼくたちのクラスは、しつこく誰かをいじめたりはしてないんじゃない?湖のそばであそんでいる方が楽しいからかなぁ?」  男子のひとりがそう言って、  「じゃあこのへんで、いままでに出た意見をまとめてみます。」と学級委員が言った。

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いのち

あれ・・・。なんだ、この感覚。 体を起こし、自分の手を見る。 半透明になっていた。 自分でも訳が分からなかった。 なぜ、半透明になっているのか。 周囲を見渡す。 そこには、降りたままの遮断機、何かに当たって変形した自転車があった。 一体、何が起こったのか。 頭が追いつけなかった。 本来の自分の体を見る。 あまり直視出来ないほどの怪我だった。 僕は何かに当たって怪我をして、それで死んだの・・・? 頭の中が真っ白になる。 そう思いながら、しばらく僕は目覚めた場所に立っていた。 そ

#140字小説「恋愛相談」

『はぁ』 「どうしたのですか?」 『恋したいなぁ』 「…」 『寂しい』 「私がいます」 『人工知能に言われたくないよ』 「ごめんなさい」 『謝らないで。余計みじめになる』 「…」 『そりゃ私もアンドロイドだけどさ。恋ってのを知りたいんだよ』 「…」 『…』 「…」 #140字SS #140字小説 #ショートショート #超短編小説 #超短編 #掌編小説 #オリジナル #創作 #小説 #140文字 #書き下ろし #SF #SF小説

AI信号機(417)

「やっぱり、おかしいなぁ。」 なぜか信号の前までくると信号は赤になり、これまで全ての信号に引っかかってしまう。 今では信号機もAI搭載が標準になっているし、交通状況の記録・録画等も自動的に行われている。更にいえば、信号機は広域のネットワークを形成しており、各信号機は協調して自動的に青・黄・赤の色を出しているのである。これにより、スムーズで渋滞の無い交通の整理を行っている、はずである。 AI搭載とはいえ、信号機も機械であるから、多少の故障や不具合はあるのだろうか? 「どう

じゃあね

誰もいない病棟、静かな廊下を裸足で歩く。 ひんやりとした感触が足裏に心地いい。 カルテは捨てた。もう私を縛るものは何もない。 白い服は白い部屋に置いてきた。白い手足に紫外線が刺さる。 走って行こう、行くあてはないけど。 顔も知らない君のこと、探したいと思う。 誰もいない街、ひっそりとした道を裸足で進む。 焼けたアスファルトが突き刺さる。 踊るように、逃げるように、躱すように。 走って、走って、ひたすら走る。 どこに行けばいいかなんてわからないけど。 前に

才能開花と共感覚(潜在能力の解放)

はじめに 才能開花と共感覚について書こうと思います。 才能については、潜在能力が解放されないといけないと思います。その潜在能力の一部が共感覚(シナスタジア)と言われるものです。これはトレーニングすれば身に付くと思うので、やってみていただければと思います。が、今回は原理的なことのみを述べます。 潜在能力とは?潜在能力とは文字通り、自分では気づかない「潜在する能力」です。心理レベルでは無意識の領域であり、脳レベルでは大脳辺縁系以下の領域です。逆に、意識できる顕在能力は大脳新皮質

そこにいて「いいな」と思える人はたくさんいるけど、いなくなって寂しい人は1人だけ

あの人のコトを「ほんとに大切な人」だと意識したのは、実は何かあった時じゃなかったんです。何もなかった時だったんです。 それは、もう年の瀬が迫るある夜のコトでした。 その夜、ボランティアの忘年会があって、いろんな地域のボランティア団体の人たちが集まって一緒にお酒を飲んだりご飯を食べたりしました。その帰り道、女の子同士でプリクラを撮りに行くことになりました。もちろん、その中に例のあの人もいました。 青年はその様子を遠くからボ~ッと見ていました。実はこの日、実家に帰るつもりだ

【不良品、注意】頭の中の中の中の、中【純文学的な小説】

 ※無配慮な表現が多々ありますが、書かれた当時の印象を残すために修正しません。ご了承ください。   一      クリップボードには、『交際経験のない若者の推移』とある。飛ぶ鳥を落とす勢いで下がっているそのグラフの深刻さをまったく加味する気はないらしい、七夕の織姫を意識したような行き過ぎた衣装の、アナウンサーが言った。 「時代の移り変わりと言うのでしょうか、御覧のように、年々大学生の交際経験は減ってきています。この傾向は今後もさらに強くなると想定され、一部の専門家は、さらな

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100

自首するか、あるいは。

俺は上を見上げた。 そこにはさも世界終焉のような、毒々しい緋色の空が広がっている。 夕焼けだ。 朝焼けとは、どうしてこうも人を悲しい気分にさせるのだろうと思う。 俺の手はべっとりとした赤い液体で汚れている。 凶器のナイフはもう、赤色の太陽光を反射している海に捨てた。 これから、どうしようか。 なんの考えもなく人を殺めてしまった。 遺体の処理も、凶器の放棄も、何一つ考えずに殺人を犯した。 ちょっと探せば、犯罪現場から俺の証拠を見つけるのは容易だろう。 なんてったって

平和

今日もこの国は平和だ。争いも起きなければ、格差も存在しない。なのにどうしてここで生きるのは苦しいのか、それはもう死んでしまいたいくらいに。それでも生に縋りたい、いや縋らなければならない。なぜなら約束の期限はまだ過ぎていないから。少なくともあと100日は生きなければ。。。 今でもあの瞬間は現代映画のようなグラフィックを保ちながら、僕の脳裏から消えることはない。ここにも技術革新が存在するのだろうか。ひと昔前ならこんな映像褪せて、烏賊墨色に変色してしまうものだが。 もうこんな時

<full of knuckles>を「一発」に減らすのは、もしかして非暴力主義?

『湖中の女を訳す』第五章(2)【訳文】  私は立ち上がり、ポケットからキングズリーの紹介状を取り出して男に手渡した。男は眉根を寄せてそれを見たが、それから足音高く小屋に戻り眼鏡を鼻にのせて戻ってきた。そして注意深くそれに目を通し、もう一度読んだ。シャツのポケットに入れ、フラップのボタンをかけてから手を差し出した。 「ようこそ、ミスタ・マーロウ」  我々は握手を交わした。やすりのような手だった。 「キングズリーの小屋が見たいんだね? 喜んで案内するよ。まさか売るつもりじゃないだ

『遠慮していますわたくし喜んでやりますわたくし』

飲み会なんていかないし ましてや休日の 釣りや ゴルフ 遠慮していますわたくし はい ふだんは ふだんはね でもなんだか バーベキューには呼んでほしかったな うまくいえないけど 呼んでほしかったな Nちゃんがいたから? 違うよ Nちゃんゴルフも得意だし 宴会部長だし しょっちゅうみんな Nちゃん含めて遊んでるでしょ? そうじゃなくて バーベキューには呼んでほしかったんだよ 空気読んでよ同期のK なあ 頼むわ なんなら会費も多目に払

アパートの一室にて【ショートショート(約1000字)】

 暖房のついていないひんやりとしたアパートの一室で、青年の顔をつたって、汗がとめどなく流れる。  何度も拭った茶色のパーカーにはまだその名残りがあった。  外の景色をさえぎるカーテンは閉じ切っておらず、すこしだけ開いたカーテンに目を向けた青年は軽く眉間にしわを寄せながら、足を早めてその淡黄色の布を掴んだ。その時、視界に入った雲はねずみ色だったが、雨はすでに止んでいた。  青年はカーテンを閉め、部屋の電気を消し、年季の入ったキャビネットの前に立った。キャビネットの上には写

蝶のオアシス

 日の出から日没の間がはっきりと長く感じられる様になり、衣替えがすっかり終わった頃、洋三は雨上がりの路地を商店街に向けて歩き出した。  未だ雨水を吸ったままのアスファルトは、やたらに照りだした太陽光を反射して眩しく、肺に滑り込む空気は地表の温度を奪って生温かい。  締め切りの迫ったエッセイのネタ探しに文房具屋にでも行って来ると妻の真帆に告げ、久しぶりの外出を試みたのだったが、実は引き出しには封も切っていない新品のペンが眠っており、またもや創造力への供物を増やすに過ぎない事に嫌