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A.I. でランディ・ローズは蘇るのか?

「ランディ・ローズを取り込んだA.I.の音楽?そうだな…俺は良質なものなら何でも受け入れるよ。A.I. には、"新しいアルバムを作ってくれ" って言えるし、実際に作ってくれるようになる。それが未来なんだ。音楽シーンは今とはまったく違うものになるだろう。俺はその未来を不安には思わない」

これは、メタル世界の首領であり、プリンス・オブ・ダークネスことオジー・オズボーンが最近 "The Osbournes" の中で語った言葉だ。みなさんはどう思うだろうか?

オジーはギタリストの発掘家だ。メタル・ギターの父トニー・アイオミと袂を分かった後、彼はブラッド・ギルス、ジェイク・E・リー、ザック・ワイルド、ジョー・ホームズ、ガス・G、アンドリュー・ワットなど、そうそうたる天才を大舞台に引き上げてきた。中でも、最も伝説化しているのがランディ・ローズだろう。

悪魔のようなオジーが、天使のようなランディを担ぎ上げる姿を覚えている人も多いだろう。実際、彼が紡ぎ出すギターには、天国と地獄の両極端が共存していて、それが復活を遂げたオジーのトレードマークにもなったんだ。だけど残念ながら、1982年、25歳の若さで亡くなってしまった。飛行機の事故だった。

ランディがオジーと残したフル・アルバムはたったの2枚。ライブ盤を入れても3枚。だけど僕たちは、もう永遠に、楽聖ランディ・ローズの音楽は聴けなくなってしまった。いや、聴けなくなったはずだった。

ところが、だ。ランディの死後40年が経って、芸術の世界も大きく変わろうとしている。今や、A.I. が絵を描き、文を書き、音楽を書く時代に入ろうとしているんだ。そしてそれは、"誰々のような" なアートを実現可能にしつつある。

きっと、今の技術革新が進めば近い未来には、"ランディ・ローズがオジーと作ったであろう3枚目のアルバム" とか、"もしダイムバッグ・ダレルが PANTERA を再結成していたらこんなアルバムができていた" みたいなことも、入力するだけで秒で生成されてしまうだろう。

そしてそれは、もしかすると僕らの琴線に触れまくる素晴らしい音楽かもしれない。

もちろん、僕だって、ランディの "その先" を聴いてみたい。ダイムの悲劇をなかったことにしたい。だけどね、それってもしかしたら "墓荒らし" にはならないだろうか?だってね、もしかしたら本人が嫌がっているかもしれないでしょ?少なくとも、A.I. にかんする遺言を残していない人に、僕たちはもう確かめる術がないのだから。死者は決して蘇らないからね。

ただまあ、オジーとランディくらいの関係性で、相当な財力と技術と労力と思考を費やしてやるのなら、まあアリなのかなぁとも思う。シャロンが、どうせ今の人が作ったアルバムだって、半分以上はコンピューターのものだって言ってるのも分かるし、オジーが技術はもう流出したんだから止められないと言うのもわかる。

だけどね、それでも僕はその "ランディの新作" を心からは受け止められないだろう。だってそこには、本物か偽物か以前に、ロックやメタルに不可欠な "ストーリー" が存在しないんだから。

僕はロックやメタルの音楽には、ストーリーが必然だと思っている。DOKKEN の憎憎劇、インギーの NTR、GN'Rの離散、TOOL の出る出る詐欺にブラックメタルの狂気まで、ミュージシャンの背景にある濃密なストーリーがその音楽を際立たせていると信じているんだ。それは彼らが、その技術やサウンドと同様に、何年もかけて培ってきたもの。人生そのもの。

そこがゴッソリと抜け落ちて、秒で生成されるアートに、果たして "味" はあるのだろうか?グミだと思ったら、非常によくできたゴムだった、みたいな。チンポだと思ったら非常によくできたゴムだった、みたいな。

それでも、きっと時代の流れは止められないんだろう。きっといつか、そんなに遠くない未来には、A.I. が抽出したアートがスタンダードの一つになっていくんだろう。結局、僕たちは音楽ストリーミングの一つも止められなかったのだから。

でもね、だからこそ、僕はインタビューを続けていくよ。アーティストの人生を伝えていくよ。人間の痛みや喜びや怒りや優しさ、そして何より情熱を礼賛していくよ。だってやっぱり、メタル世界の中心で叫ぶのは、A.I. じゃなくて愛であってほしいから。


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