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「ポリリズムだといわれるが僕らは単純に4/4だった」 MESHUGGAH初期のメンバーが明かすメタル革命の真実

「僕らはメタルを必要最低限まで削ぎ落とし、抽象的に再構築した」

1995年に MESHUGGAH のアルバム "Destroy Erase Improve" に収録された "Future Breed Machine"。そのBPM172の悪夢の迷宮ようなポリメトリック・リフは、非常にマニアックで複雑なため、最も洗練されたリスナーでもそこにある真実を知ることは簡単ではありません。
シンコペーションは常駐し、トラックが制御不能なカオスを引き起こしているように聴こえるものの、結果は不気味なほど完璧。 

その混沌と秩序の驚くべき可能性は、1988年にスウェーデンのウメアで始まりました。MESHUGGAH のオリジナル・ベーシスト、ピーター・ノルディン(1995年まで在籍)は、シンガーのイェンス・キッドマン、ギタリストのフレドリック・トーデンダル、ドラマーのトマス・ハーケとつながり、"Future Breed Machine" をレコーディングしました。彼らは地元の先進的な "ポップ・ミュージック・スクール" で出会い、実験を始めたのです。

「4/4で彷徨い、元の場所に戻るリフにあのころ僕らは魅了されたんだ。かなりシンプルなものから始めて、そういう考え方に慣れていったんだよ。
リハーサルは週に3晩、それに週末もやった。4分の4拍子のリズムがさまようリフを作ったとき、誰かがそれを理解するのに苦労すると、テンポを遅くして、全員が正しい感覚をつかむまでリハーサルをした。僕たちは完全にそこにコミットしていた」

EP "None" から正式加入したギタリスト、マルテン・ハグストロームも違いを生んだひとりでしょう。

「MESHUGGAH に誘われたとき、彼らは僕に作曲もしてほしいと強調していたから、すぐにバンドのサウンドに違いが出るだろうと思った。彼らがファースト・アルバムでやっていたことを、僕が入って再現するつもりはなかった。自然なことをやりたかったし、彼らも僕にそれを望んでいたのだと思う。かなり早い段階で、ファースト・アルバムで使われていた純粋なスラッシュの要素から脱却しているように感じた。他のバンドにインスパイアされるよりも、自分たちのサウンドで何ができるかということにインスパイアされた感じだった。どんなサウンドにするかという基準はなく、ただクールに主張したかったんだ」

ノルディンは、アラン・ホールズワース、スティーヴ・ヴァイ、ジョン・スコフィールド、スタンリー・クラークに影響を受け、それを初期の METALLICA とミックスすることで MESHUGGAH 独特のサウンドが生まれたと明かしています。

「"Future Breed Machine" の最初のパターンを完成させるには、17個の16分音符が必要だ。そして半音下げチューニングの5弦ベース・ギターもね。これは3回繰り返され、4回目の繰り返しの終わり近くで4/4拍子に整列する」

ドリルの悲鳴のようなイントロのあとの、この悪魔のようにトリッキーなリフは、5/16、5/16、7/16の連続した小節と考えることもできますが、MESHUGGAH はそうは考えていませんでした。

「僕らの音楽にはポリリズムがあると言う人もいるけど、決してそんなことはない。単純に4分の4拍子なんだ。もし"ストレート" に演奏したかったら、最後の16分音符をカットしてアクセントのある4分の4拍子を作っただろうけどね」

しかし、MESHUGGAH は意図的にそうせず、小節線上を繰り返し流れるようなリズミックなフローを作り出したのです。ギタリストのフレドリックもかつて、こんな言葉を残しています。

「実際、僕らが変拍子でリフを弾くことはほとんどない。僕たちの曲で変拍子が聴かれるとみんなが言うのは、僕たちが音符をさまざまな方法でグループ分けしているからだと理解している。でも、ほとんどの曲が4分の4拍子なんだ」

ヴァースのグルーヴも印象的。小節線を横切る4分の5拍子のリフが3回繰り返され、最後に短く切り返される。注意して聞けば4/4の中に5/4、5/4、6/4があることに気づくはずですが、MESHUGGAH はこのミクロの譜割を、常にマクロな4/4で感じていることを忘れてはいけません。
つまり、ここにポリリズムを知覚するリスナーはメトリックの枠組みに当てはめた複合パターンを抽出するか、1つのリズムの流れに焦点を当て、他のリズムを "ノイズ" として扱うかのどちらかになるのでしょう。

容赦ないプレ・コーラスは3拍目から始まり、5つの16分音符のシンコペーションが残り2小節に渡って続きます。BPM172の猛攻は、時間を曲げたワームホールに入ったようなサウンドを響かせます。

「トマスのプレイが大好きなんだ。彼は本当に流れを殺しているし、初めて聴く人を混乱させるんだろうね」

そうして、コーラスではついに4/4を離れ、変拍子のリフが12, 13と展開します。
驚くべきことに、ノルディンは既存のリズム・ギターとドラムのトラックにオーバーダビングして、比較的簡単にこの迷宮を録音しました。

「かなりリラックスしていたし、すべてうまくいった。今日何かをレコーディングするときは、もっと恐る恐るリハーサルをするけどね!それは若者の不滅の感覚と関係があるのだろう」

アルバムと一緒に演奏することに挑戦してくれる人たちには、BPM172では不可能に聞こえることも、半分のスピードにすればより意味があると知るべきです。

「これはかなり速い曲だけど、技術的にはそれほど難しくない。一番大事なのはリズムをしっかり取ること。サビ以外は全部4分の4拍子だ。ドラムを聴いてみて。1・2・3・4と数えて、数字がどう動くか聴いてみてほしいね!」


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