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BEAT: 80'sクリムゾンを溺愛する Steve Vai と TOOL が蘇らせる3部作

"スーパー・グループ" という言葉はしばしば乱用されますが、BEAT の場合、その呼び名は自信を持って使うことができるでしょう。

Adrian Belew, Tony Levin, Steve Vai, そして TOOL の Danny Carey をフィーチャーしたこの新たな名実ともに "スーパー" なバンドは、KING CRIMSON 80年代のアルバム3部作を演奏するために、かの Rober Fripp の許可を得て結成されました。80年代 KING CRIMSON の "象徴" である Belew は、"Discipline"(1981年), "Beat"(1982年), "Three of a Perfect Pair"(1984年)の3作品がただ眠りにつくのを、座して見ていられなかったのです。

「80年代3部作をやるためにバンドを組むというアイデアを練っていたんだ。2019年にそれについて Robert と話したよ。彼は、"KING CRIMSON を讃えたいのなら、そしてそれを推進したいのなら、やってみろ。祝福するよ" と言ってくれた」

Fripp と Belew の間にわだかまりはなかったのでしょうか?

「私たちは生涯の友だから。"KING CRIMSON: 50年の歩み" の中でそう描かれていたのは残念だけどね。Robert は映画の中で、"Adrian のせいじゃない、問題は他にあるんだ" みたいなことを言っていたよ。あれから話をしたけど、何も問題なかった。昔、私抜きで KING CRIMSON として7年間ツアーをしていたときは、彼とはあまり話さなかったけどね。つまり、何を話せばいいんだ? そんなことは関係なく、私は KING CRIMSON にいるのが大好きだった。だって、他にはない音楽を作ることができるバンドだからね。そんな感じかな。だから僕は基本的に犠牲になったんだ (笑)。本当に素晴らしいのは、そのすべてを乗り越えたことだ。私たちは今、まったく新しい冒険を始めている」

そうして、Belew は Fripp の代役にふさわしい人物はいないかと頭を悩ませることになります。唯一無二の後を継ぐのは誰だろう?思いつくのは Vai だけでした。

「Steve Vai がインタビューで、Robert Fripp のプレイ、特に80年代の KING CRIMSON に愛情を持っていると言っているのを聞いたんだ。だから、"もしかしたらチャンスがあるかもしれない" と思ったんだ。驚いたことに、彼はこの話を聞いてとても興奮していたよ」

Steve Vai は、Robert Fripp のギタリストとしての "持久力" をリスペクトしています。

「特殊なピッキング・テクニックによって、少しチャレンジングになる曲もある。"Frame by Frame" とかね。肩の手術をする前だったら、全然問題なかったんだけどね。Robert がやっていることは、持久力があるからこそ難しいんだ。彼の個性的で完成されたピッキング・テクニックは、持久力に支えられている。絶え間なく、激しくやっている。素晴らしいことだよ。
あとは、ちょっと難しくて、奇妙な "Elephant Talk" のようなものがいくつかあるんだ。独特な感じだから、それは変えるかもしれない。カバー・バンドではないからね」

さらに Vai は、Fripp の凄みは複雑さのための複雑さではないところにあると主張します。

「複雑さのための複雑さは決して面白くない。興味を失ってしまう。でも Robert の音楽は、不思議なことに複雑だけど美しく、ギターに見事にフィットするんだ。Frank Zappa と一緒にいたとき、僕はギターにはふさわしくない音をすべて選びぶようなピッキング・スタイルを採用していた。でも、Robert のものはギターに見事にフィットする。
ギターのオーケストレーションだよ。彼独特のものだ。そしてギターにフィットするから、練習していくうちにできるようになるんだ。でも容赦はないけどね。やさしくなることはない。彼は普通とは違うんだ。まるで科学者だよ!彼のタイミング感覚、彼のセンス...本当のポリリズムはないけど、すべてポリメトリックなんだ。
僕はそれが醸し出す雰囲気が大好きなんだよ。その上に美しいメロディーが乗ってくると、リビングルームにいるような気分になる。つまり、とても美しくて親しみやすいんだ。
ソングブックがあるのは幸運だよ。Adrian と Robert の音色はとても似ているし、変化するからすべてを聴き取ることはできない。Robert は13分音符で何か演奏するかと思えば、12分音符で1小節演奏したりする。これから気合を入れてやっていくつもりだよ。幸運なことに、本を持っているしね。それに、僕にもそういうポリメトリックなセンスはかなりあると思うから」

80年代の KING CRIMSON 3部作を Vai は "モノリス級" と絶賛しています。

「大好きだったよ。複雑さにおける僕の趣向とマッチしていたんだ。他では得られないものがあった。それでいて親しみやすい。Tony と Adrian のおかげで、複雑さと親しみやすさの美しいバランスがあった」

Vai はすべてを Fripp のようなサウンドにすることは完全には不可能で、彼自身のスタイルがミックスされることは間違いないだろうとも語っています。

「僕らはいくつかのものを再解釈しているんだ。自分のスタイルやサウンドは、自分から出てくるものだから、流れ込んでくると思う。もちろん、Robert が書いたすべての音符を尊重するために全力を尽くしている。ただ、演奏の仕方は少し違うかもしれないね。
たとえば、"Larks' Tongues in Aspic Pt.3" のようなもの。ライブ・ヴァージョンは... Adrian が "Absent Lovers" (84年のライブ・アルバム) を送ってくれたんだ。そして、それはもしかしたら僕たちが行うライブ演奏のためのアレンジになるかもしれない。一方で、"Frame By Frame" のライブ・バージョンはスタジオより短くなっている。でも、僕はロング・ヴァージョンでも満足できるような演奏方法を開発したんだ。だから長くやるかもしれない。とにかく、本腰を入れて練習しなきゃね」

Vai が Fripp と異なる解釈でプレイすることは、当の Fripp も認めていて、むしろそれを喜ばしく思っています。

「私のように椅子に座っていろんなギターのパターンを弾き続けるなんてことはないだろうね。だけど、私のパートを演奏できるギタリストは Steve Vai しかいない。実際、Steve と話したところ、彼の解釈を持ち込むことがが彼の狙いだと理解した。私は全面的にサポートするよ。これは、演奏され、つながり、再構築され、新たに耳を捉え、咀嚼され、消化され、ロックするための音楽なんだ!私自身、BEAT をとても楽しみにしているんだ」

Vai も Fripp へのリスペクトを滲ませます。

「僕は Robert を心から尊敬し、敬服している。1969年以来、彼の卓越した音楽的頭脳は2度にわたって音楽ジャンルを再発明した。彼の激しく鍛錬されたユニークなギター・テクニックは、彼以外には触れることのできないものであり、まさに驚異だ。
僕たちは BEAT について素敵な話をした。彼がそれを祝福し、名前まで提案してくれたことを知って、僕は安心し、感激したんだ。僕がバンドに参加すると聞いたとき、彼はどう思ったかと尋ねると、"私のギター・パートを弾けるのは君だけだ" と言ってくれた。僕ほど Robert のギター・パートを弾ける人はいないと知っていたからだ」

Vai の参加が決まった後 (残念ながらパンデミックはプロジェクトを3年遅らせたが)、Belew は同じ KING CRIMSON のOBである Tony Levin と TOOL の Dany Carey に声をかけてラインナップを完成させました。ただし、もともとドラムのストゥールには、名手 Vinnie Colaiuta が座る予定でした。

「Steve に "ドラマーは誰がいいと思う?十分な知名度があり、十分な聴衆を集められる人が必要なんだ" とたずねたら、彼は " Vinnie Colaiuta とは親友なんだ、電話してみよう" と言った。その後、Vinnie がイエスと言ってくれたことを知った。
ただ、Steve を起用する前に、Bill Burford の重要性についても話していたんだ。Bill と言えば、Danny Carey だ。彼は、私が参加していたさまざまなバンドで、ステージに上がって KING CRIMSON の曲を一緒に演奏してくれたこともあるし、私のレコード2枚に参加してくれた。私の知る限り、Bill Burford から多くを学んだ人はいない。ビートルズが私にとってそうであったように、KING CRIMSON のあの3枚のレコードは、Danny にとってまさに目を見開かせるようなものだった。でも彼は TOOL のメンバーで、とてもビッグなバンドだ。だから、しばらくは Vinnie に決まっていた。しかしその後、Vinnie が個人的な理由で突然脱退することになり、意外な扉が開いたんだ。彼はとても興奮していたし、本当にやりたがっていたから残念だけどね。
それで Danny Carey のところに話が戻った。私が住んでいるナッシュビルの TOOL のショーで彼に会ったんだ。彼はこの話に狂喜乱舞していたよ。TOOL はいつも本当に優しくて親切にしてくれるんだ。なぜなら、彼らは KING CRIMSON が本当に好きで、彼らのファンに "ここから僕らの作品が生まれたんだ" とわかるようにと、彼らのオープニングに招待してくれたりするからね」

しかし、そこには音楽をつなぎ合わせるという厄介な作業が待っていました。Vai と Belew のコンビは、Fripp と Belew のダブル・アクトに匹敵するギター・プレイの関係を築くことができるのでしょうか?
そのために、2人の "Beat" 仲間は Vai のLAのスタジオにこもって、KING CRIMSON のカタログを調べ始めたのです。

「Steve と私はLAで集まり、400本ものギターが並ぶ彼のスタジオに行った。ゴージャスだったよ。そこで私たちは腰を据えて、一日中その課題に取り組んで行った。つまり、3枚のアルバムを全部聴いて、部分的なセットリストを作っていったんだ。
1曲ずつ聴いて、"OK, 君にはそう聞こえるんだね、Robert はあそこでこうしている、私はここでこうしている" と話し合っていった。私のソロを除いて、私のパートと Robert のパートをギター用に書き起こした本まで持っていたよ」

では、ファンは Vai と Belew のパートナーシップに何を期待するのでしょう? Belew は彼が Fripp と共有した関係とは異なると認めながらも、Vai ともある種の類似性があると断言します。

「Robert と私はそれぞれの世界に分かれてしまったんだ。でも私はいつも、完璧な例えは同じコインの裏表のようなものだと言っていた。Robert には Robert のやり方があり、私には私のやり方がある。
Steve と私は、Robertと私と同じようになるんじゃないかな。Steve は、我々のやることがオリジナルに敬意を払った、しかし何か別のものであることを確認したんだ。そう、私たちは全く同じように演奏する必要はないし、カバー・バンドになるわけでもない」

KING CRIMSON ではないという的外れな批判も。

「Robert がいないと KING CRIMSON じゃない?それはそう。私たちは KING CRIMSON とは名乗っていないよ。みんな本当に前向きで、この音楽のおかげだとしか思えない。この3枚のレコードのほとんどの曲を演奏するつもりだよ。とても長い間演奏されていなかった曲ばかりだ。最後に KING CRIMSON と一緒に演奏したのは2008年だったと思う。10回ほど公演して、それきりだった。そのうちのいくつかは同じ会場で何晩もやったから、あまり遠出はしなかった。それだけだった。長い時間だったね」

来日の話もあるようです。

「アメリカでの日程はすべて決まった。でも、それ以上にアジアのいくつかの地域に行く予定なんだ。確か日本は知っている。韓国、中国、シンガポール、香港など、まだ行ったことのないところにも行きたいね。来年にはまた行けるという話もある。スタジオに入ることに関しては、まだ少し早い。これが実際のバンドなのか、ツアーだけで終わるのかはなのかはわからないからね (笑)」

参考文献: 


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